November 29, 2007

長期M&Aプロジェクト終了

  
  途中、1週間の御殿場出張を挟みながら、1ヵ月半の長きに渡って振り回されてきたM&Aプロジェクトがようやく終了しました。

  先月、当月と残業時間は150時間をゆうに超え、気力、体力共に、極限まで追い詰められました。プロ投資家の皆さんとのタフな交渉は、何度やっても骨が折れますし、限られたプレゼン時間でいかに気の利いた知見が出せるか、毎回毎回のミーティングが、神経を研ぎ澄まして臨まないとやり込められるので、終わるたびにどっと疲れました。

  買収ターゲット企業への厳しいアクセス制限、限定開示された資料、厳しい時間の制約、こういった条件の中から、いかにして、プロ投資家の皆さんに満足されるアウトプットを出せるか、まさに「実務家としての総合力」が試されることを実感する毎日でした。

  
  これだけ、厳しい条件下で仕事をしたのは、久しぶりでした。スタッフに惜しみなくノウハウを伝え、彼らを鍛えながらプロジェクトを進めるのは、本当にしんどいですが、この若手スタッフが「勉強になりました。また使ってください」と言ってくれたことと、プロ投資家さんから大きなクレームもなく終わったことで、少しほっとしています。

  それにしても、最近は、プロ投資家さんの買収ターゲット企業の質の悪化と値段の高騰が進んでいることを肌で実感します。M&Aブームもいよいよフィナーレを迎える時期がやってきたのかもしれないと思う今日この頃です。

さあ、この週末は、家族サービスに邁進しなければ・・・でも、睡眠はとらないと。

  ここ2週間程度、ほとんど相場を見ていませんでしたが、Indexはだいぶ下がったようですね。このような時期だからこそ、少し時間ができたら、新規割安銘柄の発掘調査も行っていきたいと思っています。

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November 24, 2007

テイクアンドギブ・ニーズの赤字転落に思う

  
  破竹の勢いで成長してきた邸宅風ウェディングのテイクアンドギブ・ニーズ(T&G社:4331)が2008年3月期業績予想の下方修正を発表しました。上場以来、初の赤字転落となるということです。

 これまで、体育会系名物社長の下で、「気合と根性」、「感動挙式」で成長してきたT&G社ですが、ついに壁にぶち当たったようです。

 業績大幅下方修正の理由として、T&G社は、以下のような理由を挙げています。
? 集客力の減少による低下による受注数の減少
(ア) 規模拡大を最優先したことによる個店の体制作りの遅延に伴う集客力の低下
(イ) 地元密着のメディア対策が不十分であったことによる訴求力不足に伴う集客力の減少
? 成約率の低下による受注数の減少
(ア) 営業推進がマニュアル化したことによるプロデュース力の低下に伴う成約率低下
(イ) プロデュース力を重視する営業方針の転換が円滑に進まなかったことによる現場の混乱に伴う成約率の低下

  結婚式場のビジネスは、いわゆるハコの稼働率を最大限に押し上げることで稼ぐ典型的な稼働率ビジネスです。言い換えれば、ホテルや航空機と同じく固定費が重く変動費の軽いビジネスですから、施設が適正価格でフル回転(高稼働)することで、売上が固定費を回収する水準(損益分岐点)を上回ると大きく利益が出ますが、思ったような稼働率を確保できず、売上が損益分岐点を下回るようになってくると、とたんに大きな損失が出るというハイリスク・ハイリターン型の収益構造を持つビジネスの典型であると言えます。

  その意味で、利益のトリガーは、低コストオペレーションではなく、適正価格で、目標とする施設稼働率を達成し、目標売上を確保できるかどうかにかかっています。ここで、結婚式場の売上高をもう少し要因別に分解すると、以下のような式が成立するはずです。

結婚式場一店舗あたり売上高=客単価×受注客数=客単価×下見客数×成約率

  今回のT&G社の発表を見ると、売上が著しく減少した理由は、下見客数の減少と成約率の低下が同時進行的に発生したことにより、受注客数が大幅に減少したことにあるようです。

  下見客数の増減に影響するトリガーとは何でしょうか。これはおそらく、広告宣伝費の金額とその使い方となるでしょう。結婚式場というビジネスの最大の特徴は、顧客のリピートが全く見込めないということにあります。このため、広告宣伝費という「撒き餌」をいかに効率よく使って、潜在顧客である下見客を確保するかが、極めて重要となります。今回のT&G社の発表を見る限り、広告宣伝費用の費用対効果が落ちていることは明らかだと思います。(彼らはそれを地元密着型のメディア対策の不十分性と表現しています。)

  成約率の高低に影響するトリガーとは何でしょうか。これはおそらく、各店舗の営業マンの人員数とスキルとなるでしょう。急速な店舗展開で人材育成が追いつかず、下見客を着実に成約に持ち込むという営業マンのスキルレベルが低下しているのだと思います。(彼らはそれをマニュアル化によるプロデュース力の低下と表現しています。)

  こうして見ていくと、下見客数の回復には、個別の店舗の商圏ごとにきめ細かい広告宣伝戦略を立案していく必要がありますし、成約率の回復には、地道に営業スキルレベルの向上を図るような人材育成を行う必要がありますから、いずれも一朝一夕には片付かず、それなりの時間とコストがかかるように思われます。その意味で、T&G社は一時的な業績の減速が起こっているという単純なものではなく、その収益構造をゆるがすような「正念場」を迎えているのかもしれません。

  このように売上を要因別に分解してみると、その会社のビジネスの損益構造の本質が見えてくることがよくあります。

  広告宣伝費をジャブジャブ使って集客し、高度な営業スキルを使って毎回毎回、多額の客単価を負担してくれる新規顧客を獲得し続けることで、売上を作っていかなくてはならないビジネスって、えらく不安定で非効率だと思いませんか。しかも、邸宅風挙式なんて、簡単にパクられそうで、差別化は本当に難しいと思います。

  上記のようなことから、結婚式場などの「差別化のしにくいリピートなし稼働率ビジネス」は、個人的に「最も投資するのを避けたいビジネス」の一つとなっています。

  T&G社の経営戦略などを見ると、なんとか挙式をしてくれた顧客との関係を維持して、別のサービスや商品を売り込もうとしているようですが、やはりうまくいっていないようですね。

  同社が今後、どのように体制を立て直すのか、もしくは落ちていくのか、興味を持ってウォッチしていきたいと思っています。


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November 18, 2007

ミラーサイト設置

 
「最近ブログにアクセスがしにくい」という多くの皆様の苦情に対応し、ミラーサイトを下記に設置することとなりました。


名付けて、

cpainvestor.com

です。


 読者の皆様へ

 一応、しばらくはこちらを本家として、できる限り同日に記事をアップする予定ですが、年明け頃をメドにこちらの更新はやめて、あちらを本家として更新していきたいと思っていますので、お気に入り登録をご変更頂ければ幸いです。コメント等もできるだけcpainvestor.comの方にお願いできればと思います。




 
 リンクをしてくださっている方へ

 将来的にはcpainvestor.comへコラム等を集約する予定ですので、お手数ですが、リンク先、リンク名を変更して頂ければ幸いです。


 私自身もこれで変なフラストレーションからは開放されそうです。

 今後も、できる限り読者の皆さんのお役に立てる内容を書き続けていきたいと思っています。cpainvestor.comをどうぞよろしくお願い致します。


17:44:51 | cpainvestor | | TrackBacks

November 16, 2007

御殿場にて



  今週は、ある有名メーカーさんの企業研修のお仕事で、このお客様の御殿場にある研修センターに4日間ほど滞在しました。

  久しぶりに東京を離れ、透き通った空気と紅葉、美しく雄大な富士山を見て、気分的にリフレッシュできました。毎年、1年前から日程を決めて下さって、私にこういう機会を与えて下さる主催者と受講者の皆さんに感謝しなくてはならないと改めて思いました。

  それにしても4日間は長く、真剣勝負でしゃべりにしゃべり通して非常に疲れましたが、最後に受講者の皆さんの感謝の言葉を頂くと、「どんなにしんどくてもやめるにやめれない仕事だなあ」とつくづく思いました。入社数年の若者エンジニアから、受ける刺激も大きく、私もまだまだ修行が足りないと思うことが多々あります。
 
  いつか、私の研修を受講して頂いた皆さんの中から、この会社の社長さんが誕生することになったら、楽しいだろうなあと思う今日この頃です。


23:37:20 | cpainvestor | | TrackBacks

November 07, 2007

「エキナカビジネス」に見る鉄道会社のポテンシャル

  
以下、11月6日付、日経新聞朝刊より抜粋です。

  セブンイレブン、売上高で首位明け渡す・1店舗日販   コンビニエンスストア最大手のセブン―イレブン・ジャパンが1店舗・1日当たり売上高(日販)で首位の座を明け渡した。2007年度中間期決算で比較すると、JR東日本が駅構内に展開するコンビニ「ニューデイズ」の日販は66万2000円で、セブンイレブンを5万6000円上回った。商品力を武器に高収益を上げてきたセブンイレブンだが、立地で勝るJR系に逆転された。


  商品力や店舗のオペレーションノウハウで圧倒的な強みを持ち、コンビニ業界の日販でダントツの首位だったセブンイレブンが、よりにもよってJR系「NEWDAYS」に負けるとは・・・、日経新聞では小さな囲み記事の取り扱いでしたが、私にとってはかなり衝撃的なニュースでした。

  セブンイレブンに行くと、特に、弁当惣菜コーナーなどには、いつも新しい製品が並んでいて、その商品の回転の速さに驚くと同時に、単品管理による徹底した商品の絞込みと、新商品の開発に日々たゆまぬ努力を重ねていることがよくわかります。セブンイレブンは、いつも新しい発見があるので、行ってみて楽しくなることも多いですよね。(昔、わらべや日洋の株式を持っていた頃を思い出します。)

  このセブンイレブンと比較すると、JR東日本管内のエキナカに位置するNEWDAYSは定番商品は置いてあるものの、その品揃えにまったく驚きはありません。まさに「抜群の立地の良さ」と「店に入るのが不快にならない程度の品揃えと接客」という感じです。(関係者の方、いらっしゃったらすみません。)人件費は、セブンイレブンとほぼ同水準であると仮定して、NEWDAYSの家賃や光熱費などのコスト負担割合がどの程度あるかにもよりますが、あの品揃えとオペレーションで「コンビニ日販日本一」とは、やはり、「エキナカ」は恐るべき立地です。

  ここ数年、JR東日本は、エキナカビジネスを徹底して強化しています。エキナカ部隊は、ルミネなどで小売業を手がける部隊と同様、いわゆるポッポヤさんとは別採用となってますし、彼らがJR東日本の組織風土に飲み込まれることなく、本気で外部からノウハウを吸収したら、「もともと立地はこの上なく最高」なわけですから、すごい収益があがるような気がします。なんと言っても、JR東日本管内で、一日5万人以上の乗降客がある駅が88もあるわけですから、潜在的に魅力的な立地はまだまだ沢山ありそうです。先日東京駅に新しくできたGRANSTAをチラッと偵察しましたが、「ほとんどデパチカ」でした。これは、大丸や八重洲地下街の店舗の皆さんはたまったものではないなと思いました。

  同じくエキナカの潜在的価値に着目するとすれば、JR東日本に比べ、まだ、このマーケットがほどんと未開拓な企業が存在します。東京メトロです。こちらも5万人以上の乗降客がいる駅は68もあるようですから、その潜在力はかなりのものがあると思われます。


  東京への一極集中が益々進む中で、折しも、東京メトロは、民営化・上場などが予定されているようです。株式市況が低迷する中での「東京メトロIPO」となれば、これは買いかもしれません。安間さんの言うように、国富を守るためにも、中国やアラブあたりの国営ファンドなどに、上場と同時に大量購入されないことを祈ります。


00:40:58 | cpainvestor | | TrackBacks