June 26, 2006

退場したら終わりです

尊敬する個人投資家の角山さんが6月23日のコラムで「投資を継続することの重要性」を改めて記載しています。「株価が、ここが底なのか、まだ下がり続けるのかは、誰にもわからないものです。ただ1つ、確かなことは、預貯金では資産を形成できないということです。」この一言は重いです。

  現在のような軟調な株式相場が続くとき、私も、いかにして投資家として「致命傷」を負わないかを真剣に考えています。恥ずかしながら、2000年のITバブルの崩壊の過程で、「長期投資=保有株の塩漬け」と思い込み、運用資産の40%程度を失う打撃を受けました。今よりずっと金額の小さい運用資産でしたが、それでも当時の私は、本当に株式投資をやめたくなったものでした。
それから、価値のあるものを割安で買うことに徹する「バリュー投資」に出会うまで、暗中模索の日々が続いたものです。日々の仕事の中で、企業の決算書は裏も表も絶えず見ていますので、「状態がよい会社か悪い会社か」の見分けはかなりつくほうだと思っています。ただ、その会社が「価値と比べ価格が割安かどうか」の見分けは、過去情報である決算書を読む知識をいくら高めたところで身につかないことを痛感しました。「決算書を読む能力」と「企業の価値を見抜く能力」は似て非なるものです。

  最近では、「判断ミスをするのは当然だ」と悟り、個別銘柄の運用資産の含み損が10%を超えた時点でいったん問答無用で全株「損きり」することを徹底しています。その上で、どうしても手放したくない割安株は、いくらか買い戻す株式も多いですが、損失は確定させてしまい、節税に使います。苦しいですが、このポリシーが、中長期的に株式投資を継続することができることにつながると確信しています。
  また、新たに購入を検討する銘柄についても、最近の購入予定リストには、相場環境もあって、PER、PBRが平均より低いのは当然のこと、EV/EBITDA倍率が低い傾向にあるキャッシュリッチ企業への投資をメインに添えています。これは、投資における「安全域」を重視しているためです。STEP以外の最近購入した銘柄についても、今後報告したいと思います。

  退場したら負けです。大やけどをしないようにして、細く長く投資を続けたいと思っています。


00:34:10 | cpainvestor | | TrackBacks

June 18, 2006

個人投資家の成熟の必要性

  東京証券取引所を初めとする全国5証券取引所の平成17年度株式分布調査によれば、個人株主数(延べ人数)は3,807万人となり、10年連続で過去最高を更新したそうです。


  ここ数年の株高で「にわか投資家」が増加していることは、私の周りでも実感します。仕事柄、企業研修のセミナー講師などを担当することも多いのですが、会社分析に必要な財務・会計知識の習得をめざすセミナーなどを実施すると、私が雑談で株式投資の話しをすることも多いからでしょうか、必ず「自分の株式投資にも役立ちそうです。」「講師オススメの銘柄は何ですか?」といったコメントを頂くことがあります。(笑)


  私が担当するセミナーのほとんどは、あくまで「職務に関連する知識の習得」が主催者側の目的ですので、いくら受講者満足度が高くても、あまりこのようなコメントが出るのは望ましくはないのですが、株式投資をきっかけに、「ビジネスの世界の言語」である財務・会計知識を本格的に勉強してみたいと思う方が増加することは、とても良いことだと思っています。一人一人の個人投資家が少しでも損を最小限に抑えるために勉強し、洗練されていくことこそが、日本の資本市場を良くすることにつながると思うからです。


  このブログも当初は、私自身が「賢明なる投資家」に少しでも近づきたいと思い、投資備忘録として始めたものでした。ただ、最近では、毎日かなり多くの皆さんが訪れて下さるようになっています。これからは、頻繁に訪れて頂いている皆さんのことも意識して、文体も少し丁寧なものに変更しようと思います。


  個人投資家として、実務家として、皆さんの役に立ちそうな財務・会計に関する知識も少しずつ提供していけたらと考えています。投資と同様、こうしたコラム執筆も継続が大切だと思っています。細く長くおつきあい頂ければと思います。


  P.S.たけ先生のブログを相互リンクサイトとしました。ブログのコラム同様、HPの行動ファイナンスに関する知識は、とても勉強になります。


11:26:12 | cpainvestor | | TrackBacks

June 11, 2006

投資家として確実に購入を避けたほうがいい1年以内IPO銘柄

実務家として、投資家としての経験上、購入は避けたほうがいいIPO銘柄チェックリストを作成してみました。目論見書を見る際のご参考にどうぞ。ここでは、あえて割高、割安については触れていません。だって、初値はほとんどの銘柄でValuation的に割高ですから。

? 主幹事が3大証券以外
? 上場市場が関東圏以外
? 直前期売上が10億以下
? ビジネスの柱がワンアイデア
? ビジネスモデルがBtoBで売上が作りやすい
? 大株主がファンド
? 大株主、役員、関係会社など関連当事者取引が多数開示されている
? 手取り金の使途として積極的なM&Aをあげている
? リスク情報開示多数
? 取締役の経歴に上場会社勤務の経歴がまったく見られない

半分以上該当したら、間違いなく、買わない方がいいと思います。発行体も、主幹事証券会社も、監査法人も、証券取引所も、大株主も、中長期での会社存続を想定していない場合があります。


01:51:53 | cpainvestor | | TrackBacks

June 06, 2006

村上さん、きっと疲れたんだろうな。

以下、日経新聞より抜粋
  投資ファンド「村上ファンド」によるニッポン放送株の不正取引疑惑で、東京地検特捜部は5日午後、ライブドアが同放送株を大量取得する方針を決定したと2004年11月に知ったうえで、公表前に同株約193万株を購入したとして、同ファンド代表、村上世彰容疑者(46)を証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で逮捕した。

形成が逆転すると、マスコミはすぐにたたくので、今日は、私なりの見解を記述したい。

  村上氏ほどではないが、私も職業柄、インサイダー情報に触れてしまうことがある。(村上氏曰く、「聞いてしまった」というやつだ。)ただ、それを聞いても欲望をを抑制し、それ以上深く突っ込むことなく、黙って何もしないでいれば、決して捕まることはない。村上氏もクレバーな人なので、インサイダー取引には、細心の注意を払っていたと推測される。そういった村上さんがなぜ、倫理観を保てずに一線を超えてしまったのか・・・?、それはおそらく尋常ではない規模に成長したファンド運用のプレッシャーではないだろうか。
 大学入学時には既に株で億の資産を築いていたという村上氏の投資センスからすれば、おそらく、数百億円規模のファンドを運用していた頃は、市場の歪みを見つけて年利で20%程度の利回りをあげることは難しくなかったのかもしれない。
  ファンド資金も1,000億円を超えてくると、運用はそう簡単にはいかなくなってくる。自分が買えば株価は上昇するし、何かニュース(触媒となるもの)がないと当該銘柄の出来高が増えないため、市場で売るに売れなくなる。そのため利益を確定するためには、他の投資家に市場外で、ブロックで売らざるを得なくなる。そこで、自分の持株をどこかにはめこみたいという欲望は必ず出てくることとなる。
  ファンドの規模が膨れていくにしたがって、ファンド出資者のために20%超の利回りを確保するためのプレッシャーは日増しに大きくなっていく。そうした強烈な利回り達成プレッシャーのもとで、美味しいインサイダー情報を聞いてしまえば、つい自然と手が動いてしまうこともあるのではないだろうか。
  最後にあんなにすっきり白状したのも、このプレッシャーから早く開放されて、楽になりたかったのだと思う。手元(シンガポールのオフショア?)に人生をエンジョイして過ごすことができるだけのキャッシュは残っているだろうから、ここから裁判やって長期間人生を浪費するより、潔く認めて執行猶予を勝ち取ったほうが、残りの人生を楽しく生きることができるだろうと思ったのかもしれない。
  その意味で今回の事件は、ファンドに多額の資金を出資する投資家が起こしたのだといえなくもない。
  とにもかくにも、村上さんには「企業に株主価値向上を意識させる」という大義名分の普及に一定の功績はあったわけだから、しばらくゆっくり休んで下さいと言いたいところである。

  それにしても、司直はこの連鎖をどこまで繋げるつもりなのだろう。きっと戦々恐々としている方達はいっぱいいるんだろう。


00:40:24 | cpainvestor | | TrackBacks

June 02, 2006

下げ相場と忍耐力

5月の相場下落は、毎年の傾向であるとはいえ今年は特に大きいように思う。特に新興市場の下げがきついようだ。
JASDAQ指数とTOPIX 5月

 私のポートフォリオも月次で−4.4%となっている。JASDAQINDEXやTOPIXよりいくぶんましなのは、ITバブル時を教訓に、昨年後半から、ひたすらキャッシュリッチ、低PBR、低EV/EBITDA倍率のバリュー株にシフトした上で、キャッシュポジションを20%程度確保していたおかげだろうか。
まだ、年初来では+5.6%とかろうじてプラスを保っている。これは、第一四半期の中国株の上昇の影響が大きい。国際分散投資の有効性を実感する今日この頃である。
  6月に入ってからも、下げ相場は続いている。残っているキャッシュで、ある保有銘柄を買い増しすべく、かなり下のほうで指しておいたら、2日の前場に約定してしまった。若干キャッシュポジションが下がってしまったが、保有銘柄の業績見通しに、現時点では不安はないと感じているし、自分にとっては十分割安であると見込んだ価格なので、HOLDを継続したいと思う。気がつけば、3ヶ月ぶりの取引であった。
  それにしても、私の保有する銘柄を見ても、信用の買残が多く残っていることが多い、この整理がつかない限り、もうしばらく下げ相場が続くかもしれないし、あるいは、このまま本格的な下げ相場になるのかもしれない。
将来のことは誰にもわからない。大事なことは原則を曲げない忍耐力である。自分が企業価値から見て割安と思う限り、保有は継続したいと思う。
  米国株への分散投資をそろそろと始めようと思っている。S&P500の大型株銘柄から始めようと思っているが、とりあえず、低PER、低PBR、低EV/EBIDAでスクリーニングをかけて、でてきた銘柄をガイド本(以下の英語本と悪戦苦闘中である。)で分析しようと思っている。



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