August 22, 2006

時を経ても内容が陳腐化しないであろう今年最高評価の投資本

  客観的なEvidenceに基づく機械的な銘柄選択を基本とする投資手法(Evidence-Based Investment:EBI) を推奨するKAPPAさんの著作「東大卒医師が教える科学的株投資術」を読了しました。多くの個人投資家のサイトで絶賛されていることが頷ける内容で、今のところ、私にとって今年の最優秀投資本だと思います。

  海外も含めた多くの先行研究を多彩な図表を用いながら紹介し、低PER、低PBR、低PCFR、低EV/EBITDAなどを基準とした割安株投資の有効性を丁寧に解説しています。
  ファイナンスの専門家にとっては既知の内容も多いのかもしれませんが、これだけの内容を初心者にもわかりやすい形で、しかも医師という職業の個人投資家が纏め上げられたことに衝撃を受けました。おそらく、本業が極めて多忙な中での執筆作業だったのだと思いますが、書籍を通じて間違いなく多くの日本の個人投資家に有益な情報を提供したと思います。「Evidenceは個人的な経験に勝る」という著者の信念が十二分に伝わってくる内容でした。

  多くの投資本と異なり、「個別銘柄」の投資に関する記載が一切なく、あくまで実証研究のデータの積上げとロジックによるわかりやすい解説で構成されている点も好感が持てます。はっきりいうと、ここに記載されている内容は、十年経っても陳腐化しない知識でしょうから、一家に一冊常備して、ゆくゆくは息子にも読ませたい書籍だと思いました。日本の投資環境の成熟化を促進するためにも、沢山売れて欲しいと思います。

  惜しむらくは本の装丁です。内容は極めて高品質なものなのですから、EBIという著者の造語を全面に押し出して、マッキンゼー社の「VALUATION」(ダイヤモンド社)のような品の良い装丁に仕上げてもらいたかったと思います。10年間保有することを想定した場合、平積みされることだけを意識した現在の安易な装丁はあまりに残念です。

  個人投資家必読のバイブル的書籍だと思います。著者のあとがきにある「ファンダメンタル分析をするなんて百年早い」という記述には、耳が痛いです。私も銘柄発掘の初期段階で、これまで以上にスクリーニングを積極的に活用しようと改めて思いました。





01:56:08 | cpainvestor | | TrackBacks