October 15, 2006

創通エージェンシー(3711)の決算発表

   
   私のポートフォリオの一角で地味に生き続けるキャッシュリッチガンダム銘柄、創通エージェンシー(3711)の決算発表がありましたので、備忘記録がてら総括しておきます。

   売上高12,857百万円(前期比7.1%増)、経常利益1,640百万円(前期比2.4%増)、当期純利益889百万円(前期比3.2%増)、営業CF471百万円(前期比72.5%減)となっており、営業CFの減少要因には注意すべきであるとはいえ、会社予想に着地するまずまずの決算内容といえるでしょう。
   なお、対前年に対する営業CFの主な減少要因は、前渡金の増加(対前年△484百万円)と仕入債務の減少(対前年△1,050百万円)にあります。前渡金は、協力制作業者へのアニメショーン制作資金の前渡分であると推定されますし、仕入債務の減少は期末直前の検収案件がタイミング的に、前期に比べ少なかったことによるものと推定されるため、それほど問題視するものではないと私は判断しています。過年度の営業CFの推移を見ると、毎期200〜600百万円程度で推移しており、むしろ前期(1,712百万円)が異常値であったと見るべきかもしれません。


   今期決算を見ていて私が感じた事項は以下の通りです。

○ 相変わらずのガンダム頼み
   セグメント別の営業利益を見ると、稼ぎ頭はライツ事業である構図は変わりませんが、今期は特にガンダム関連で稼いだ好調な版権利益で、メディア事業の利益率低下を補っている状況です。メディア事業における作品出資・アニメーションプロデュース業務は、次世代のコンテンツ開発のためにも必要不可欠な事業であるといえますが、やはりガンダムと比較してしまうと、小粒の作品案件が多いようです。「それゆけ!アンパンマン」は、うちの息子の反応を見ていても、なかなかのキラーコンテンツだと思うのですが、キャラクターの著作権・版権の大部分は、商売熱心な原作者のやなせたかし氏に抑えられているのだと思いますので、実入りはそれほど良くないのかもしれません。

○ 来期以降のタネまき投資がどう出るか
   コンテンツ銘柄は、出資してから回収するまでのサイクルが長く、単年度決算とはなじまないことが多く、その会計処理基準も曖昧であるため、決算内容に関してPLだけを見ていては判断を誤ることがあることは、以前にも解説しました。このため、CFやBS項目、短信に記載のある定性情報も重要となります。
   今期は、アニメーションプロデュースを11作品から16作品に大幅に増加させています。この中に来期以降につながる作品があるかどうかが一つのポイントとなりそうです。棚卸資産がそれほど増加していないところを見ると、制作出資はアニメ番組の放映のタイミングで償却済となっているでしょうから、今期の版権収入につながれば、ほとんどが利益になりますし、続編のプロデュースも期待できるでしょう。
   また、前渡金残高が対前年416百万円も増加しています。これは、来期以降のプロデュース作品に関する制作出資金でしょうから、これがどの程度、来期以降の収益、とりわけ利益に結びつくかもポイントになるといえそうです。
   更に、無形固定資産が46百万円の純増となっています。創通エージェンシーの単体決算書上の無形固定資産はほとんど増加していませんから、おそらく、就職関連子会社におけるシステム投資などでしょうか。就職情報事業のWebコンテンツ化も進めているようですから、これが軌道に乗り、特に利益面で貢献してくれれば言うことはないのですが。

○ オーナー様、そろそろ持株比率を見直されては
   ここの株主は、創業家の那須一族で相変わらず株式の過半を保有しています。そのため、創業家の持株比率が下がらない限り、買収の脅威はありません。しかしながら、もし浮動株の比率が高ければ、無借金でキャッシュと時価のある投資有価証券だけで7,839百万円、これにガンダムというキラーコンテンツを保有していることを考えると、今の時価総額12,760百万円(2006年10月13日終値)なら、間違いなく買収対象でしょう。株式上場をしている以上、ある程度、買収リスクという緊張感も持っていただきながら経営してもらった方が、経営者も企業価値向上を真剣に考えると思います。少数株主としましては、上場しているにもかかわらず、同族による持株比率が高いことにより追加的に付加される留保金課税を毎年会社財産から払わされる(今期は65百万円程度でしょうか)のは、本当にかないません。(支払金額は、2006年8月期決算、税効果会計注記から推測)配当を増やせば回避できる税負担ですから、せめて配当を増やしてください。

○ 終わりに
   何かの雑誌にこの会社が「割安株」として取り上げられていたように思いますが、割安なのにも、理由があるわけです。買収リスクという緊張感がない中、増収は続けているとはいえ、売上高に対する税引後営業利益率は年々下がっています。また、キャッシュはたまる一方ですから、総資産に対する税引後営業利益率も低下していく一方です。「資本コストを意識した経営」をしてもらいたいと思うのは、私だけではないはずです。


創通エージェンシー:NOPAT/SALES(BLUE), NOPAT/ASSTS(RED)の推移 2002-2006



23:27:22 | cpainvestor | | TrackBacks