December 12, 2006

PLよりBS、BSよりCF、CFよりビジネスモデル

   
   ファンドマネージャーの藤野さんが書いた書籍に、「スリッパの法則」というものがあります。「会社に入るときに、スリッパに履きかえる会社に投資すると不思議に儲からない」など、企業の定性的な要因をその後の業績パフォーマンスとからめて面白おかしく書いた本です。

   以下のような点を含め、私も読んでみて、同意できる点が何箇所かありました。

「社長の自伝を本人からプレゼントされたら、その会社への投資は控える」(社長にプレゼントされたわけではありませんが、アパホテルに泊まると、いつも引き出しに聖書ではなく「アパ躍進の秘密」みたいな本が入っているのは気になります。)
「業績不振の原因を景気や政府のせいにする社長の会社は景気が回復しても業績は回復しない」(親会社のせいにする上場子会社社長も多いです。上場した意味を考えているのでしょうか・・・)

   この本の中で、表題のタイトルの文言が最も印象に残りました。PLよりBSの分析に時間をかけ、BSの分析よりCFの分析に時間をかけ、CFの分析よりもビジネスモデル(儲けの仕組み)そのものの分析に時間をかけろという意味です。当然、財務三表は、3次元グラフのように見る必要があるわけですが、(X軸:BS:Y軸:PL、Z軸:CF)言い得て妙だと思います。

   いくら急成長中の会社であっても営業CFがずっとマイナスなのは、やはり頂けません。そうした中で、分譲デベロッパーが、賃貸事業へ進出などということを聞くと、どうしても、バブル崩壊の頃に、多くのマンションデベロッパーが、期末の棚卸資産在庫を小さく見せるために、分譲物件を賃貸物件に用途変更しまくったことを思い出してしまいます。
   
   決算前に用途変更できれば、あら不思議!物件調達コストは、あっという間に投資CFとなり、在庫増加として営業CFを圧迫する要因ではなくなります。こういった用途変更が、バブル崩壊時に横行したので、会計士協会はかつて、「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」という文書を出し、保有不動産の用途変更を厳しくチェックするように会計監査人に異例の通達を出しています。

   棚卸資産在庫の増加を、将来の値上がりを見越した将来の土地の前倒し取得と見るか、想定以上に売れ残りがあるので、やむなく開発を延期している物件の滞留と見るかは、微妙な問題です。

   個人投資家に人気の急成長株F社については、詳しく分析したことがないので、これ以上のことは言えません。しかし、バブル崩壊時の「二の舞」でないことを祈ります。社長はリクルートコスモス出身のようですから、そこは大丈夫ですかね。一度経験されているでしょうし。

   F社の強みは、やはり郊外に広い平米のマンションを提供していることなんかではなく、どこのデベロッパーも嫌がるような駅から遠い「売りにくい物件」を見事捌ききるそのマーケティング力と泥臭い営業力にあると思っています。戦線が拡大し過ぎて、この「売りにくい物件を売る!」営業力が衰えていないことを祈ります。


22:08:38 | cpainvestor | | TrackBacks