May 06, 2006

投資教育の重要性とマーケティングの重要性

 山崎元氏の最新著作「投資バカにつける薬」を読んだ。この人が多くの著作で一貫して主張している内容、「一般投資家に正しい情報を行き渡らせて、金融機関の提供するサービスの値段がいかに高いかを理解させ、自ら学び、情報を分析し、判断できる"騙されない"投資家を増やす」の集大成となるものであった。外部のライターを使うことで、いつもシニカルな山崎節が若干緩和されたような気もするが、投資信託から始めた投資初心者にはぜひ読んでもらいたい内容である。私自身、改めて気づかされた内容も多いが、ここまで金融機関を敵に回してしまう内容を記載して、山崎氏は大丈夫だろうか・・・。
金融商品を購入するプロセスにおいて、儲ける構造を複雑にしたり、顧客の目をくらませたりすることで、様々な形の手数料が抜かれていることは、この本に記載の通りである。

 特に保険が暴利を貪っているという見解には、激しく同感である。テレビのゴールデンタイムにやたら保険商品のCMが多いこと、外資系生保に勤める営業マンが破格の高給であること、平均給与の高い会社ランキングに必ず生保や損保がランクインしているのを見るにつけ、保険サービスの諸経費は一体どれくらいかかっているのか・・・考えるだけで加入したくなくなる。なんだか、銀座の一等地にある宝石店で妻の婚約指輪を購入しようか迷って結局買わなかった時の感覚に似ている。「この場所の賃料とこれだけの店員の人件費、いったいこの指輪には、どれだけの経費がのっけられて価格設定されているのだろうか・・・ぼったくりではないのか・・・」
 やむなく私は、掛け捨ての共済に多めに入り、指輪はブランドを度外視して海外で割安と思えるものを購入する決断をしたわけだが・・・。
 ただ、一方で、山崎氏の言う「いかにして顧客に不利な商品をたくさん買わせるかという技法」である「マーケティング」の価値の重要性も職業柄認識してしまう。

 日本人は情報やアドバイスに対して、対価を支払う感覚に乏しいため、サービス業はどうしても「働いた労働時間コスト+一定のマークアップ」という見積もりの仕方をしてしまうことが多い。この見積もりの仕方で仕事をしている限り、ひたすら自分の時間の切り売りをしなくてはならず、一生楽して過ごすことはできないビジネスモデルとなる。

 本来、サービスの「価値」は受け手の置かれた立場によって異なるはずで、同じサービスを提供した場合でも、より高い価値を感じてくれた買い手からは、より多くの対価がもらえるはずである。この原則をよく考えてみると、山崎氏にとってバカバカしいほど損な詐欺的金融サービスでも、別の受け手にとっては、価値あるサービスとなる場合もあるのであろう。サービス業を本業とする私にとっても、単なる潜在顧客ではなく、自分のサービスに本当に価値を感じてくれる顧客をいかに見つけてくるかは、重要な課題である。こういった価値の受け手を捜すためのコストがマーケティング費用なのであろうが、保険会社がやっている、認知を上げるためだけの不特定多数へのTVCMは、いかにもコストパフォーマンスが悪い気がしてならない。
 
 いずれにしても目に見えないサービスを売るのが本業である限り、サービス単価を上げるためには、ブランドやマーケティングの重要性もまた、極めて高いわけで、本来学ぶべき対象者は、詐欺一歩手前の商品、サービスを扱う高級ブティックの店員や高級クラブのホステスなのかもしれないと思った今日この頃である。




00:27:56 | cpainvestor | | TrackBacks