May 08, 2006

決算短信の訂正急増の記事について

以下、5月8日の日経記事より抜粋。
 有価証券報告書の“速報版”ともいえる決算短信を、発表後に訂正する上場企業が急増している。2002年度に500件だった訂正件数が、3年後の05年度には2.9倍の1438件に達した。特に新興株市場で5倍弱となったのが目を引く。会計制度変更などで開示内容が増え、上場企業の負担が重くなったためだが、管理体制の不備も指摘される。
 私が過去にコメントしていた事項(4月12日付コメント参照)が、数字となって現れているようである。決算短信の訂正は確かに多くなったように思う。ただ、原因として、?会計制度の複雑化、?特に新興企業の管理体制の脆弱性が挙げられているが、現場にいる人間からすると、それらは表層的な原因であって、より根本的な原因は別のところにあるように思う。外部環境の大きな変化である。
 第一に、適時開示の要請がこれまで以上に強まっていることである。「45日以内のできるだけ早い時期に決算を開示せよ。」という取引所、及び投資家からの要請は年々強まっている。決算開示を1日でも2日でも早めることで、どれだけ現場(上場企業の経理担当者及び会計監査人である公認会計士)に負担を強いていることか。本来決算早期化は全社を挙げたプロセス改善、IT導入などとセットで取り組むべき内容であるにも関わらず、多くの会社が、線表を引き直すだけで、現場の経理マンと会計士の徹夜作業を増やすよう圧力をかけることによってスケジュール短縮を行っている。会社によっては、決算が何日で締まったかを経理部門の重要な評価基準にしている。徹夜作業による時間短縮は、ナンセンス以外のなにものでもない。それは、開示ミスも頻発するはずである。
 第二に上場基準がもうこれ以上できないくらいに緩和されたこと、というか、ゆるゆるの新興市場が存在していることである。「A市場でダメダシされても、B市場で上場できる。」こんなことが許されるからこそ、ろくな管理体制が備わっていない会社が、「成長しそう」な雰囲気だけで上場してしまう。あるいは、上場前は最低限度のレベルを保っていた管理体制も、上場と同時に管理部門の幹部が次々と退職してしまうために崩壊してしまう。こういった事例が後を絶たない。こうしたゆるゆるの新興市場に多数の上場企業が発生しているからこそ、管理部門のできる経理マネージャーも若手の公認会計士も慢性的に不足気味となっている。このつけは全て一般投資家が払わされることになる。
 投資家としては、頻繁に幹部役員の退任や短信の訂正を行うような新興市場銘柄を避けることが最善の自己防衛策であるといえる。それで値上がり銘柄を見逃したとしても、損するわけではないのだから。


01:06:09 | cpainvestor | | TrackBacks