July 27, 2006

フォーサイド・ドット・コムの業績予想修正

  以下、フォーサイド・ドット・コムの業績予想修正(06年6月29日から転載

事業整理に伴う特別損失の発生
  国内外のモバイル環境が第3世代携帯電話(3G)へ急激に移行したことに伴い、3G向けコンテンツ事業に経営資源を集中していくために、当社グループ全体で第2世代携帯電話(2G)向けコンテンツ事業を2006 年12 月末までに整理し撤退する予定であります。この2G向けコンテンツ事業の撤退に伴い、今後利用見込みのない2G向けコンテンツ事業に係るコンテンツ資産等を事業整理損として特別損失に計上する予定であります。なお、事業整理損の内訳は以下の通りであります。
(1)営業権 18,987百万円
(2)無形固定資産減損損失    612百万円
(3)コンテンツ資産除却損    207百万円
(4)ソフトウェア除却損    237百万円
(5)リストラクチャリング損失  773百万円(注)
           合 計 20,817百万円
(注)海外での2G事業整理に伴うリストラクチャリング費用であります。

(私見)
  買収に次ぐ買収で大きくなっている会社であるとはいえ、前期の売上実績は41,469百万円、経常利益1,608百万円の会社です。特別損失の金額が尋常ではないことだけは、理解していただけるのではないでしょうか。

  最後のリストラクチャリング費用は、事業撤退に伴うコストが洗いざらい計上されているのだと思います。(とはいえ、このような抽象的な勘定科目は要注意です。来期以降のV字回復を印象付けるため、いろんな過去の膿をここに紛れ込ませて処理されている可能性は十分にあります。)ただ、それ以外は、営業権、コンテンツ、ソフトウェアなど全て無形固定資産に属するものです。


  無形固定資産に関する会計処理は、何かと議論があるところです。

  今日はまず、営業権について考えてみましょう。
  会計上の営業権とは、被取得企業または取得した事業の取得原価が、取得した資産及び引き受けた負債に配分された純額を超過する金額をいい、「のれん」ともいわれます。
  営業権は、現行の会社法上は、「企業結合会計基準」に従い、20年以内の一定の年数で毎期均等額以上の償却が求められています。営業権が発生した会社は、買収等により取得した企業、事業の超過収益力が見込まれる期間(投資回収期間である場合も多いです)を合理的に見積もり、償却期間を決定する必要があります。ただ、実務上は、経営体力のある会社ほど、早期の償却を実施していることが多いですし、巨額の営業権が発生するような買収案件では、最長の20年を使っている会社もよく見かけます。この償却期間をどう決めるかによって営業損益は大きくぶれるため、大きな買収をやって営業権がたくさん計上されているような会社では、損益だけで会社の業績を測ろうとすると大きく間違う原因となります。

  さて、フォーサイドの営業権の償却については、有価証券報告書に面白い注記が記載されています。「営業権については、米国会計基準に基き償却を実施せず、年一回及び減損の可能性を示す事象が発生した時点で減損の判定をしております。」

  日本では、「規則的に償却すべき」と言っている営業権ですが、米国会計基準では「規則的な償却はするな」と言っています。そのかわり、米国会計基準では、年に1回、営業権の資産性(資産として計上しておく価値があるかどうか)についての減損テストが義務付けられています。(米国会計基準FAS142)
  日米の会計基準は大分調和化が進んでいますが、この「営業権」の会計処理については、決定的な相違が残っています。
  しかも悪いことに、日本の会計基準は、実務上の便宜を考え、米国会計基準で作成した子会社財務諸表をそのまま日本会計基準で作った親会社の連結財務諸表に取り込むことを容認しています。このため、フォーサイドの子会社等に関する営業権は、「減損の兆候」が発生し、減損損失を認識しなければならない状況に追い込まれるまで、一切償却されずに放置されるわけです。
  そのため、今回のように、やれ事業整理を計画するとなると、当然に減損損失として一気に損失計上されることとなります。改めて18,987百万円という金額、半端ではありません。

  無形固定資産を多く計上している会社は、損益計算書だけを見て業績を判断すると間違えます。必ず数年間のCF計算書の営業CFの水準を並べてみることをオススメします。


次回はソフトウェアについて書いてみたいと思います。


00:16:02 | cpainvestor | | TrackBacks