September 09, 2006

上場の意義に疑問を感じるM&Aアドバイザリー関連2社(その1)

   
  新規株式公開案件の目論見書は、新しいビジネスに触れる貴重な機会であるので、仕事柄、こまめにチェックしています。

   先日、東証Mothersへの上場承認がなされたGCA日本M&Aセンターのビジネスについて、自分のしている仕事柄、少し興味を持ったので書いてみることにします。

   GCA、日本M&Aセンターという会社は、いずれの金融機関の系列にも属さない独立系のM&Aアドバイザリー業者として定義できそうです。ここで、M&Aのアドバイザリー業務とは、会社の売り手(セルサイド)もしくは買い手(バイサイド)に立った形でのM&A案件の紹介、仲介、買収、資本提携等のスキーム構築、企業資産査定評価業務、企業価値評価業務、M&A後の統合計画作成の支援、資金支援を含めた実行支援など、M&Aにかかる一連の業務を指します。これまで、この分野は、銀行、証券など金融機関の独壇場でしたが、いよいよ独立系のアドバイザリーファームで上場できる規模を有するところが出てきたようです。ただ、ターゲットとするマーケットは、GCAが、大手金融機関と直接に競合する海外M&A案件を含めた大規模案件であるのに対し、日本M&Aセンターは、中堅中小企業案件に特化しています。

   GCAは、国内のプライベートエクイティファンドでは老舗であるユニゾンキャピタル代表だった佐山氏(よくM&Aアドバイザーの第一人者としてTVに出演していますね。)とKPMGコーポレートファイナンス代表だった渡辺氏が作ったブティック型(専門特化型)M&Aアドバイザリーファームの草分けです。これまで、投資銀行の独壇場だった業界に食い込み、第一・三共の合併案件や、阪急・阪神の経営統合案件のアドバイザリー業務などを獲得し、2004年4月創業で、創業2期目の2006年2月の決算では、4,407百万円、経常利益2,896百万円という驚異的な業績を達成し、この期を直前期として2006年9月上場承認にこぎつけています。さすがに社長が会計士だけあって、創業当初から監査法人による会計監査を導入し、戦略的に上場を志向していたと考えられます。創業から3年での上場は驚異的なスピードです。従業員はGCA単体で31人、平均年収は14百万円ですから、本当に少数精鋭のブティック型投資銀行といった感じでしょう。直近には、メザニンという子会社も設立し、ミドルリスクミドルリターンのメザニン投資ファンドの展開も想定しているようで、いよいよフィービジネスのみならず、アセットビジネスにも進出を果たしています。本当に金融機関と変わらなくなってきました。前期4,407百万円の売上高のうち、3,379百万円(76%)が成功報酬、しかも案件別売上では、上位3案件の売上高だけで2,972百万円(67%)と、案件の獲得と成功が全てという典型的な狩猟民族ビジネスの会社です。

   日本M&Aセンターは、全国の会計士・税理士が中心となって顧問先である中小企業の事業承継対策のためにM&Aの仲介ビジネスをする組織を作ったことがその発祥となっています。創業の2名は、あまりM&Aには関連しているとは思えない日本オリベッティというイタリア系企業の日本法人の出身です。この会社の強みは、全国の会計事務所、地方銀行、商工会議所などのネットワーク化をいち早く行い、主に相続、事業承継等の際に発生する中小企業のM&Aのニーズを吸い上げる仕組みを構築していることにあるでしょう。最近では、この仲介業務のみならず、投融資業務なども手がけているようです。この会社は約15年の歴史があり、地道に売上(おそらく仲介案件の件数も)を拡大してきています。上場直前期の売上は2,099百万円、経常利益は733百万円とこちらも好業績です。従業員数も42名、平均年収は10百万円とGCA同様少数主義をとっています。

(つづく)


13:09:34 | cpainvestor | | TrackBacks