June 29, 2007

ほっと一息



  某証券会社のアナリストの卵向けの会計・財務研修が無事終了しました。このお客様は、過去に担当した経験豊富な先輩講師がこけたお客さんでもあり、私も戦々恐々でした。生半可な準備ではダメだと思い、シェアーズさんでのセミナー以来、久しぶりに週末ビジネスホテルにカンヅメになって資料を作りこみました。結局、資料の完成は、セミナー前日の午前という、まさにギリギリのタイミングでしたが、アレンジしてくれた担当者を初め、関係者の皆様の多大なご協力もあって、無事終了することができました。何名かの受講者の方々が、積極的に相槌を打ちながら聞いてくれた上、終了後に質問に来てくれたので、今回は多分、大丈夫でしょう。関係者の皆さんと、私が不在の間、現場の仕事をまわしてくれたスタッフに改めて感謝したいと思います。

  セミナーなどを実施する場合、講師によっては、事前に様々なコネタを用意し、台本も用意するようですが、私の場合、最近はいつも、資料を作りこんだら、後は完全なアドリブです。
私も最初の「掴みネタ」の準備をしたり、全体のストーリー感についてイメージトレーニングをすることはありますが、最近は、それ以上のことはしません。あまり計画を立てすぎると、「掴みネタ」でこけた場合、パニックになって軌道修正ができなくなる恐れがあるからです。(案の定、今回も「掴みネタ」では、あまり受けませんでした。)

  時々、アレンジしてくれる人から、「よくあれだけ毎回、いろんな実例、ネタがしゃべれますね」と言われますが、そういったネタがしゃべれるのは、やはり、日々の実務があるからこそ、その場で思いつくのだと思います。そういった意味で、「講師専業」に近い形でこの手の仕事を続けられている方々は、「どうして話すネタが枯渇しないのか?」私には疑問です。

  私は、やはり、今後も実務家として日々の仕事に真剣に取り組むことを第一に考えていきたいと思っています。その仕事の過程で得られた様々な「気づき」を、時々、受講者の皆さんにフィードバックしていければと思っています。

 
  今回、残念だったのは、推薦した書籍のいくつかが受講者から「退屈でつまらない」とコメントを頂いたことでした。学者のものでは、無意味に理屈が多すぎますし、一般のビジネス書レベルでは、物足りないわけで、やはり、なかなか私の研修内容とレベル感がうまくフィットする良い書籍がないのが現状です。近い将来、財務・会計の学習者(中級者以上)、及びファンダメンタル個人投資家の双方から喜ばれそうな、実践的な内容の「企業開示資料の読み方」的な書籍を書ければなあと思う今日この頃です。実際に書こうとすると、これまた難関なのでしょうが。

  ほっと一息、無事、一仕事を終えたので、今週末は予定どおり、家族のために時間を使いたいと思います。


P.S.
 中小型日本株が少し上げてきましたね。次回は、久しぶりに個別銘柄について、書いてみたいと思います。


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June 21, 2007

携帯Before After

  
  先日、ある後輩女性スタッフ(20代半ば)から、次のような悩み相談を受けました。

  「職場の先輩(20代後半:男性)から、仕事の指示を出すメールをもらうのは良いが、その指示のメールに報告の返信を求むと書いておいて、追伸部分に、「頼むから日曜日に時間をくれ」とか、「一度でいいので一緒に食事をしてくれないか」とか依頼して来られる方がいるので、返信の際に困っている」という内容でした。

  休日出勤も強いられる忙しい毎日、私生活にはまるで女っ気なしとくれば、同じ男性として、職場の女性に抱いてしまう恋心に理解できる部分はありつつも、こういうやり方は、やはりコミュニケーションのルール違反、立派なセクハラなのだと思います。

  いつの時代も、コミュニケーションが極端に不得手な方はいると思うのですが、最近思うのは、現在の30歳頃を境に、それより前の世代で、コミュニケーション下手な人が特に増えているような気がするのは、私だけでしょうか。まあ、おそらく、私の働く職場のような業界は、学生時代にサークル活動もせず、勉強ばっかりしていた人間も多いので、世間一般よりも「変人比率」は高いのだと思いますが、目と鼻の先にいるのに、要件をメールで伝えられたりすると、さすがに私も「???」となります。

  現在の30歳前後というのは、おそらく学生時代に携帯や電子メールが爆発的に普及し始めた世代だと思います。私のような、Before携帯世代(現在31歳以上と定義します。)の方々は、学生時代、ガールフレンドに電話をするのも一苦労だったと思います。相手が一人暮らしでない限り、必ず「親チェック」が入るため、両親特に父親が出た場合、どのように接したらスムーズに娘さんに繋いでもらえるか、電話をかける前に必ず言葉遣いのシミュレーションをしたものです。全然聞かれてもいないのに、「○○大学のAと申します。娘さんとはいつも○○サークルでご一緒させて頂いております。」などと相手方のご両親に事細かに自己紹介してしまった経験は、皆さんもあるのではないでしょうか。
  After携帯世代(現在30歳以下と定義します)となると、学生時代から既に携帯で連絡をとりあうようになっていますので、「親チェック」も入らず、事前のシミュレーションは不要となります。また、携帯メールを使えば、お手軽かつ一方的に自分の気持ちを相手に伝えることができます。夜中に「ああでもない、こうでもない」と便箋に向かって推敲を重ねながらラブレターを書くのとは、わけが違います。
 
  携帯やメールの登場で、コミュニケーションが非常に手軽になったことで、逆にAfter携帯世代は、TPOをわきまえた組織内でのコミュニケーション能力が不足している人間がBefore携帯世代に比べて相対的に多くなっているのではないかという私の「仮説」、どなたか、検証して頂けないでしょうか。ご意見をお待ちしております。

  この仮説がもし正しいとするならば、早くから、携帯を子供に渡すのは危険であるような気がします。(論理の飛躍でしょうか・・・)自分の息子達には、直接異性に気持ちを伝えて当たって砕けて欲しいですし、目の前にいる人にメールを送るようなことはして欲しくありません。(まだ、息子は幼児なのに考え過ぎの父親ではあります。)


  ちなみに、冒頭の女性スタッフに私は聞きました。
「それって、もし、そういう誘いをかけてくれる人が自分のタイプだったとしても、やっぱりよろしくないってことだよね?」

  女性スタッフは言いました。
「そんなわけないじゃないですか。喜んで行きますよ。」


  セクハラと社内恋愛は、紙一重のようです。皆さん気をつけましょう。



P.S.
  携帯電話で思い出しましたが、ついに今週、長年、私の中国株主力銘柄であったChina Mobileを最低売買単位分だけ残して全て売却しました。4年で4倍、ご馳走様でした。ここ2週間で、中国株は、残高の2/3以上を売却しました。


00:55:53 | cpainvestor | | TrackBacks

June 18, 2007

「大企業のメリット」が生かしきれるか否か

  
  来週、アナリストの卵向けに、財務・会計まわりの研修を行うことになっており、今は別の本業をまわしながらも、夜な夜なその研修資料の作成に取り掛かっています。
  今回の研修は、4日かけて、私ともう一人の講師で財務諸表の専門的な読み方から始まって、ファイナンスの基礎知識まで教え、ケーススタディ(将来アナリストになる方々なので、定性・定量、両面からの企業を分析したレポートを作成してもらいます)までやってもらおうという企画です。
  手前味噌で恐縮ですが、事前の課題図書を何冊も指定した上で、受講者参加型でかなり実践的な内容を予定しているため、もしかすると、個人投資家の皆様にとっても、魅力的な企画なのかもしれません。これをわずか20名弱の某大手証券会社のアナリスト志望の若手社員のためだけにやるわけです。私から見ても、就業時間中にこの研修を無料(もちろん会社が安くないコストを負担してくれているわけですが)で受講できる方々は、オトクだと思います。

  「今、人気のある大企業に入ることが、将来を約束するわけではないので、若くして自分のやりたい仕事ができる成長企業を選べ」というのは、よく著名なキャリアコンサルタントや、人材が欲しいベンチャー企業の社長が言う台詞です。それは、ある意味、真理だと思いますし、「若いうちから大きな裁量権がある」という意味で、日々実践のベンチャー企業は人を急速に成長させる可能性がある魅力的な存在です。ただ、大企業、とりわけ、各界で活躍するようなOB、OGがいる「人材輩出企業」と言われる企業には、目先の給料だけでは推し量れない様々な魅力があるのもまた事実だと思います。

  私は残念ながら自分の目指すべきベクトルが違ったので、新卒の時にそういった企業の入社を志望することは考えもしませんでしたが、今、世の中で「人材輩出企業」と言われている大企業の方とお仕事をさせてもらうと、(優秀な方も多く、非常にオーダーもきついので)勉強になることも多いのと同時に、そこにいる従業員の皆さんには、「なんて恵まれた環境なのだろう」と羨ましく思うことも多々あります。

  週休2日制は当たり前、素敵な独身寮や福利厚生施設があって、会社が企画する様々な研修プログラムから、自分が興味を持った内容を選択でき、それを立派な研修施設で就業時間中に聴くことができます。そして何より、都心の一等地の綺麗なオフィスビルに机をもらい(私は入社して7年間、自分の机もありませんでしたが・・・)、立派な「会社の看板」を使って、個人では会えない人に会えたり、海外出張ができたり、住宅ローンも借りたりできます。やはり、金銭報酬以外のフリンジベネフィットは、特に手に職もなく、自分で食う術のない若者にとってはとても魅力的なものだと思います。
  ただ、「与えられた仕事」をこなすだけでなく、これらのフリンジベネフィットを貪欲に使い倒して、一所懸命に仕事に取り組んで7〜8年も経てば、かなりの知識・経験・人脈が蓄積できるのだと思います。その意味で、新卒でこういう会社に入ったならば、「最低7〜8年はいる価値がある」大企業も多いように思います。

 「人材輩出大企業」と「普通の大企業」の違いは、「こういったことに早くから気づいて、貪欲に自分のスキルを高めていこうとする人間の割合がどの程度いるか」にあるのだと思います。

  例えば、ある「人材輩出大企業」では、研修の終了後、何人もの人からメールや電話を頂き、それが人脈となり、別の仕事につながるようなケースもある一方で、別の「単なる大企業」では、同じように一生懸命講義しても「全く無反応」どころか「残業代が出ない時間帯なのに研修を延長することはやめて欲しい」と言われたケースもあります。また、同じ会社の中でも、若手と中堅以上では、圧倒的に若手の方が、感度が良かったりします。
  これまでの研修で、モチベーションを保つのに一番つらかったのは、ある有名大企業のグループ会社への転籍が決まっている中高年従業員向けの消化試合的な再教育プログラムでした。何を話しても、まったく無反応だったのには、ほとほと参ったことがあります。(こういう仕事に限ってフィーは良かったりします。)


  結局、「環境そのものが人を創る」というのは正確ではなく、「本人の意識(更には、多くの意識の高い人間が集まっている環境)が人を創る」のだと思います。「タダで机がもらえて、看板入りの名刺がもらえて、会社への貢献度に関わらず、交通費と有給休暇がもらえる」という環境に激しく感謝して、「このプラットフォームを使い倒してやる」という意識を持った人間が何人いるかどうかが、「人財力」の差であるような気がします。

  こういった人間がたくさんいる会社は、それなりに人件費が高い会社も多く、投資対象としては、不向きな場合もあるかもしれませんが、若い時分に籍を置くには、非常に良いインフラ機能を提供してもらえるというような見方もできるかと思います。もちろん、環境を生かすも殺すもその人次第なのだとは思いますが。


22:41:03 | cpainvestor | | TrackBacks

June 12, 2007

人事評価の功罪



  今日は、職場でスタッフの人事評価シートを作成しました。いつもながら、この人事評価のシートは「どうもなあ」と思います。専門知識だったり、顧客とのコミュニケーション力だったり、若手への指導能力だったり、自己啓発の意識だったり、そういったものをバランス良く評価しようという趣旨はわかるのですが、どうも職場に「金太郎飴」を沢山量産したがっているような気がして自分のポリシーに合わないのです。

  特に難しいのは、誰が見ても、ずば抜けてできる人と、ずば抜けてだめな人は、どう評価しても点数が高くなったり、低くなったりすると思うのですが、真ん中の6割ぐらいは、このシートでは、えらく評価が難しいわけです。それでも、この「査定」の結果が次のボーナスに跳ね返るのかと思うと、適当にやるわけにはいかないので、それなりの点数付け、コメント付けをするわけですが、まったくもって難しいです。

  そんなとき、私は、お勉強系の専門知識以外であれば何でもいいので「とんがったもの」をもっているという人を高く評価する傾向があります。例えば、「プレゼンさせたらピカ一だ」とか、「合コンのセッティング能力は抜群らしい」とか、「とにかく文句を言わずに辛抱してよく働く」とかそういったことです。「専門がらみの制度に詳しい」というのは、私見ではありますが、えてして学者チックな方が多く、キャッシュ・インフローから遠いことが多いので、私はあまり評価しません。
 
  ただ、そういった私の評価に違和感を持つ組織人も多いらしく、「なぜ私が彼をそんなに高く評価しているのかわからない」的なことを上司から言われたことも何度かあります。

  私自身は、ここ数年「上司との面談」などというものをきちんと受けたことがありませんが(というか飲み会で適当に済ましていますが)、人によっては、この「上司との面談」で日々の不満をぶつけることと、組織内の他人の評価を聞くのが楽しみという方々も多いようです。そういったときのフィードバックのために人事評価シートが役立つということになるのでしょうが、なんだかあの評価シートが「人間の器をかえって小さくしてしまうのではないか」と私なぞは、思ってしまいます。
 
  企業の競争優位性の基本は、価格差別化を含めた、「差別化戦略の有効性」にあるわけですが、人間も全く同じではないかと思っています。私達のような専門職の世界でも、英語も会計も税務もわかるマルチな才能を持ったコミュニケーション能力の高い優秀な方はいらっしゃるわけです。そういった組織の中で、私のような凡人は、まともに彼らとはりあったら生き残れないわけで、どこか一点突破の「局地戦」にもちこんで、ニッチ分野で勝ち残るという「ランチェスター弱者の戦略」のような発想が欠かせないわけです。

  そういったことに早く気づいてもらうためにも「平均点の若者」には差別化を促すべく「とんがったところ」をできるだけ評価してあげて、自ら磨いてもらいたいのですが、わかってもらえているかどうか・・・。

  株式投資も共通するものがあるように思います。ビジネスモデルも抜群で、割安で、しかも将来性も有望なんて、そんな三拍子そろった銘柄はなかなかないわけで、どこかで折り合いをつけて、「良いところ」をより前向きに評価しなくてはいけないのだと思います。将来性は微妙かもしれませんが、ダイニチ工業(5951)なんか、石油ファンヒーターで突き抜けていて、しかも結構割安です(笑)。


 今日の格言 「麦わら帽子は冬に買え」

01:12:08 | cpainvestor | | TrackBacks

June 06, 2007

介護保険制度とモラルハザード



  以下、産経新聞のWebサイトより一部抜粋です。

  グッドウィルグループ(4723) の100%子会社、訪問介護最大手の「コムスン」(東京都港区、樋口公一社長)が虚偽の申請で事業所指定を不正に取得していたとして、厚生労働省は6日、介護保険法に基づき、全国にある同社の介護事業所の8割に当たる約1600カ所について来年4月から平成23年度までの間に順次、指定を打ち切り、新たな事業所の指定もしないよう、都道府県に通知した。

 
  (以下私見です)

  上記のニュースによれば、今後、コムスンは新規の事業所を全く開設できないばかりか、既存の事業所についても認可の更新ができなくなるため、グッドウィルグループは、実質的に介護事業からの撤退を余儀なくされることになりそうです。
 厚生労働省の行政処分は、ルールに基づき行っただけかもしれませんが、その社会的影響はかなり大きいのではないでしょうか。現在6万人程度の介護サービス利用者がいるとのことですが、まずは、これだけの利用者を引き受ける能力が他の会社の事業所にあるかどうかです。また、グッドウィルグループは、介護サービス付きマンションの分譲事業なども手がけているはずです。グループの介護事業全体に見直しがかかる状況となっては、こういった関連事業の存続可能性も危ぶまれます。こうしたマンションを「終の棲家」と考え、生涯の財産をはたいて購入した高齢者のことなどを考えると心配になります。

  今回の行政処分の発端は、コムスンが、勤務実態のない職員を虚偽登録して、介護事業所の新規開設を申請するなどの行為を行ったことにあったようです。ただ、程度の差こそあれ、介護大手3社(コムスン、ニチイ学館、ジャパンケアサービス)は、ともに勤務実態のない職員を勤務させたことにして介護報酬を不正に請求するなどの行為を行っていたようで、3社合計で4億円以上の返還に応じています。

  結局、介護保険事業においては、サービスの提供側(ここでは介護サービス事業会社)と対価を支払う側(ここでは地方公共団体)に情報量の格差があり、お互いの利益追求にコンフリクトが生じるような状況(これを経済学用語では、情報の非対称性が存在するといいます)がある以上、当然のことながら、不正請求というモラルハザードは生じるわけで、コムスンに「一罰百戒」を行ったからといって、問題が解決するわけではないと思います。

  ただ、今回の1件があったことで、「だから、介護サービスなど営利企業が手がけるべきではなかったのだ」といったマスコミや、福祉事業者の論調が再燃しないかが心配です。
  どんどん高齢化が進んでいる現場において、今や介護保険による介護サービスはなくてはならない存在になっています。これを従来のような社会福祉協議会などの団体が行う仕組みに戻すのは無理でしょう。もちろん、介護サービス事業が「上場企業としてのビジネスに適しているかどうか」については、私も懐疑的ではありますが、民営企業の「効率経営」のビジネス的な発想がなければ、介護サービスは立ち行かなくなるような気もします。(家族介護の際の家族の負担などを特集した記事などを見るにつけても、ビジネス的発想の介護サービスは必要なように思います。)


  不正請求というモラルハザードを防ぐために、行政当局が介護サービス事業者に対する厳格な監査を事後的に実施するだけというのは、対処療法に過ぎず、あまりに非効率です。
  こういう時こそ、経済学理論で言われている、以下のような「情報の非対称性を緩和する仕組み」を政策に取り入れて欲しいと思います。(私が知らないだけで、既に存在するのかもしれませんが・・・)

  シグナリング
  サービス提供側に自主的に「自分が不正請求などしない優良事業者である」と証明できるようなサービスの品質保証を、一定のコストを支払って実施してもらい、アナウンスしてもらう仕組みを導入することです。短期的には、若干コストアップにつながるかもしれませんが、介護サービス事業者専用の専門家による外部監査を受けて、毎期、監督当局に監査証明を提出するなどというのを義務付けるのも良いかもしれません。(こんなことを書いていると、こういうのを会計士が新しいサービスとして立ち上げても良いような気がしてきました。私は監査というサービスを提供することそのものには、既にあまり興味がわかなくなっているのですが、自分が手を下さない「ビジネス」としてとらえると面白いかもしれません。)

  自己選択
  損保会社が、運転者の属性、車の性能などに合わせて、保険料を増減させるリスク細分型の自動車保険などを設計し、消費者に選ばせる際などによく使われる手ですが、行政側が介護サービスの保険料率(還元率)に高低をつけて、優良事業者を選別する方法です。例えば、介護事業者自らに複数の保険料率プランの中から自らの申請のタイプを選択させる形にして、違反した場合の罰則が重く、コンプライアンスの徹底にそれなりのコストを負担しなくてはならない厳しいタイプを選択した事業者には、事業者の保険料率を大きくするといった措置を講じることにより、優良事業者を選別します。余談ですが、納税者に対する青色申告控除の特典なども、この「自己選択」事例の一つかもしれません。

  スクリーニング 
  行政当局が、一定の試験や認証を継続的かつ定期的に実施することによって、優良事業者を選別する方法です。今回の上場3社に対する一斉監査と認可取消しなどの行政処分を見ていると、行政当局による、ある程度のスクリーニングは既に制度として存在するようですが、やはり事後的で、かつサンプルテストというのでは、効果が薄いような気がします。いきなり罰則適用、認可取消しというネガティブな処分を課すのではなく、例えば、ミシュランの星印による格付けのように、介護サービス事業者を定期的に星印で格付けしたら良いのかもしれません。ここにも、ミシュランやスタンダードプアーズのような「格付けビジネス」に関するビジネスチャンスがあるかもしれません。

 行政当局は、かしこい方が沢山いらっしゃるでしょうから、上記のようなアイデアは既に十分に検討済みであると思われます。ただ、さまざまな制約条件から、実施できないこと、効果が上がらないことも多いのかもしれません。


 「出でよ、介護サービス業界のミシュラン」といった感じでしょうか。うまくいけば、多くの介護事業者から報酬がもらえるトールゲート型のビジネスが展開できるかもしれません。

  もちろん、介護保険制度に基づく介護サービス事業が現在の料率体系では、既にビジネスとしては全く採算が取れないという「構造的な破綻」をきたしていなければという前提がつく話ではありますが。


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