October 11, 2007

文系と理系

  
  早川さんが、面白いコラムを書いています。理系の投資家は、データから導き出せるFactから何かを読み取ろうとし、文系の投資家は、歴史に詳しく、その教訓から何かを読み取ろうとする傾向があるという指摘です。なんとなく、頷けるような気がしました。私、歴史モノ、大好きですし。(和歌山に出張に行った時など、すぐにここは、紀伊徳川家、五十五万石のお膝元だななどと考えてしまいますこういうHPで調べるの、結構好きです)


  会計士というと、とかく「数字に強い」というイメージが世間一般にはあるようですが、これは大変な誤解だと思います。我々の業界は圧倒的に文系の人間が多く、「数字に強いのではなく、単なる簿記オタク」に近い方がずっと多いです。

  この「簿記オタク」の方々は、会計や税法など、まずきっちりとしたルール(スタンダード)があって、それと現状がどれだけ乖離しているか、こういった比較分析は大得意です。ただ、あらかじめ正解がまったく見えない状態で、なんかバラバラの事実(特に定量データ)がたくさんあって、それを整理して、仮説を立てて、その検証を繰り返し、ロジックを構築して結論を導くといった作業は、からっきしダメという人間が圧倒的に多いのです。つまり本当の意味で数値データを活用するということが不得手なのです。この傾向は特に、私立文系、民法受験組の会計士に多いような気がします。(私が受験していた頃、会計士受験の選択科目は、経済学、民法、経営学の中から2科目を選ぶ必要があったのですが、数学アレルギーがひどい方は、民法・経営学を選択していました。)つまり、ルールがかっちり決まった会計監査や税務、どこかの会社のノウハウをパクッてそのまま横展開するコンサルティングサービスなどは得意なのですが、「今まで経験したことのない業態の事業構造を分析する」とか、「真の経営課題を見つけ出す」とかいった仕事になったとたんに、思考停止に陥る方が多いです。

  必ずしも文系・理系のせいだけではないのだと思うのですが、「来た玉を打つ」ことが必要なオーダーメードのコンサルティング業務を依頼された場合、こういうコチコチの監査部門出身の会計士を使うと、とても苦労します。きちんとデータを積み上げることなく、「他社がこうしているから、こうすべきだ」みたいなベンチマーク表をすぐに作ってくるのです。それを見るたびに、「ああやっちゃった」と思います(笑)。

  私自身も最初はそうだったように思うのですが、数年前から監査の仕事を最小限にして、異分野の先輩方と様々な仕事をさせてもらったおかげで、だいぶこの「コチコチ頭」はほぐれてきているようにも思います。数学や物理は、残念ながら高校で挫折し、文系に逃げたクチですが、「大学進学したかったら国公立しか行けない」という経済的事情があったため、苦手ながらも最後まで高校数学にくらいついていたのも、過度の数学アレルギーにならないためには、良かったのかもしれません。ただ、やはり限界は感じます。最近は統計ソフトなどの発達で、文系の人間でも、いろんなデータ解析ができたりするわけですが、時々「これをどう読めばいいのかわからない」という状況に直面します。そんな時は、近くに座っている、ちょっと無口な「バリバリ理系」のスタッフに援軍を求めたりします(笑)。

  
  論理的思考は応用範囲が広く、つぶしがきくという意味で、やはり理系の方がいろんな場面で有利なように思います。自分の息子達には、なんとか「理系」に進んでもらいたいと思うのですが、理系の皆様、良い育て方があったらどなたか教えてください。理想は「理系頭の文系キャラ」だと思うのですが、いかがでしょう。



00:59:59 | cpainvestor | | TrackBacks