October 28, 2007

ブランドと販路の重要性

  
  日経ビジネス10月29日号に、カバン製造のエースが「サムソナイト」ブランドのライセンス販売企業から、自社ブランド「プロテカ(製品のみならず、リンク先のCMムービーもオススメです)」を有する企業に脱皮するまでの様子が特集されています。

  この特集記事によれば、エース社は、1964年以来40年以上続いてきた米国サムソナイト社とのライセンス契約が、2002年初頭において、転換期を迎えることとなりました。サムソナイト社の戦略変更により「製品企画機能の全く持たない合弁企業のパートナー」か、「契約解消」かを迫られることになったのです。ここで、エース社が出した結論は、「契約解消」、「自社ブランド立ち上げ」という困難な道でした。

  ライセンス契約当初は、エース社はサムソナイト社から、スーツケースなどの製造技術供与を受けていたものの、ここ最近は、製造技術は独自に磨きをかけ、更に独自のサムソナイト製品の企画機能も持っていたようです。ただ、サムソナイト社との契約終了年度である2004年時点においては、ライセンスブランドの売上が全社売上の8割以上あり、特にサムソナイト社のライセンス商品は、全社売上の3割を占める状況であったようです。

  もともと日本で販売されるサムソナイト製品は全量、エース社の日本の工場で製造しており、製造技術、品質管理は抜群であったとはいえ、自社ブランド売上が2割に満たない状況で、「サムソナイト」という強力なブランドを失うことは、営業部門を中心に猛烈な反発があったようです。

  そういった逆境を乗り越え、エース社は、2002年の後半より、練りに練った「脱サムソナイト」戦略を進めます。

  2002年11月、トップの決断で自社ブランド開発に取り組み、イタリアの有名デザイナーと組むことで、斬新なデザインを特徴とするスーツケース「プロテカ」ブランドを立ち上げました。また、自社ブランド立ち上げと同時に、トップが率先垂範する計画的な営業攻勢で、全国の百貨店その他の有力販売チャネルを行脚し、自社製品へのスイッチを粘り強く説得しました。更に、小売店舗に派遣する販売スタッフへの教育を徹底して行い、「サムソナイトはありませんか」という顧客の質問に対して、ライセンス契約が終了したことを丁寧に伝え、スムーズに自社製品に誘導できるような練習を時間をかけて行ったようです。

  その結果、2005年の上半期こそ、売上が前年比で低下したものの、下半期から、売上は回復しはじめ、2006年以降は増収に転じ、自社ブランド比率は5割近くまで高まったようです。
また、2006年12月には、米国のアルミケース製造販売会社「ゼロハリバートン」を買収し、これまでサムソナイト社によって制限されていた海外進出を積極的に進める戦略も明確にしました。


  百貨店のカバン売り場を見るにつけ、このエース社の自社ブランド戦略は、今のところ非常にうまくいっているように見えますし、この成功は、品質や技術力に自信のある多くのOEMメーカーにとって、参考となる事例であるように思います。

  もちろん、エース社の事例は、「他社の追随を許さないような高いレベルの製品の企画・製造技術に裏付けられた顧客の評価」と、「サムソナイト社側からのライセンス契約の変更の申し出」という時機を見計らったからこそ、採用できた事業戦略ではあると思うのですが、改めて、「戦略的にブランドと販路を構築することの重要性」を感じました。


企業も個人も同じなのだと思います。

  いずれ、独立したプロフェッショナルとして仕事をしたいのならば、「職人としての腕・他のプロフェッショナルとのネットワーク力」を磨くことは当然のこととして、独自のブランドと販路を戦略的に構築することにも力を注がなくてはならないと改めて思いました。その点、私は、まだまだです。

  とりあえず、どんなに忙しくとも、名刺代わりになるような書籍でも書くことに挑戦しなければと思う、今日この頃です。


01:43:08 | cpainvestor | | TrackBacks