February 01, 2007

株を買うということは、持分比率に応じて会社を所有すること(2)

   
   前回、「会社の一部を購入する」という意識をもって、株式を購入しようとする場合、「その会社が過去及び現在において健康だったかどうか」を把握する決算書分析の知識と、「その企業の値段としては、理論的にいくらぐらいが妥当なのかどうか」を把握する企業価値評価の知識が必要不可欠である旨を記載しました。

   前者の知識をマスターするためには、最低限の会計の知識が必要となりますし、後者の知識をマスターするためには、ある程度の財務の知識が必要となります。これらの知識は、「会社の一部を購入する」という意識で株式を購入する以上、それなりの時間をかけて学ばなければならないものだと思います。これは投資家としては避けて通れない道です。

   前回、角山さんの新刊を紹介しましたが、特に、企業価値評価のエッセンスについてざっくりと学ぼうとする場合には、まずそのとっかかりとして、シェアーズの山口さんが書かれた「なぜか日本人が知らなかった新しい株の本」(以下新しい株の本とします)をお読みになると良いかもしれません。ファイナンスの専門家になればなるほど、価値評価ロジックをこれだけ「ざっくり」と記述されていることに、批判もあろうかとは思いますが、個人投資家が企業価値評価のエッセンスを最初に学ぶには、私はとても良い内容だと思います。株主価値=事業価値+非事業用資産価値-有利子負債残高という基本的な公式がすっと頭に入るような気がします。少なくともこれがわかった上で「分をわきまえた投資」をすれば、大損する確率は極めて低くなると思います。

   山口さんの勇ましいところは、この書籍を書かれた後、「個人投資家に「会社の一部を購入する本当の意味での投資」を実践して欲しい。」という思いで、起業されたことです。セミナーで、この方が用意した洗練されたハンドアウトをもとにロジカルな解説を聞いた時、「これまで本業としてきたM&Aコンサルタントとしても十分に食っていけただろうに。」とまず、思いました。それでも、大勢を巻き込んで起業したのは、やはり「熱い思い」があったからなのだろうと思います。私は、こういう商売っ気だけを全面に押し出さない「熱さ」が好きです。彼がその「思い」を伝える活動を続けている限り、微力ではありますが、私も応援したいと思っています。彼の「思い」はこのサイトに綴られています。


   シェアーズでは、Valuation Matrixという簡易企業価値評価ソフトをASPサービスで提供しています。私も使ってみましたが、これは投資の上級者になればなるほど、また忙しい人であればあるほど、その有用性が実感できるように思います。
   ある程度決算書が読める(私はこれを、BSをX軸、PLをY軸、CFをZ軸とした三次元方程式のグラフ化のようなイメージができることだと勝手に思っています。)ようになってくると、いくつかの経営指標の推移を見ただけで、過去、現在の企業の経営状況が見えてきます。その意味で、私にとっては、Valuation Matrixが提供しているROICツリーや、Cash flow Matrixは、きわめて短時間で企業の過去、現在の経営状況を把握するのにとても便利なツールです。四季報コメントのような、変な定性情報がないことで、逆に数字そのもののトレンドをニュートラルな立場で見ることができるような気がします。(米国株を分析できるのもまた、うれしいです。)
   現在、シェアーズのサイトでは、体験版がリリースされているようなので、皆さんもお試しになられてはいかがでしょうか。個人的には、四季報CD−ROM並みのお値段となれば、なお良いのですが・・・。

   なお、投資初心者が、この価値評価ソフトの計算結果だけを鵜呑みして投資をするのは、やはりよろしくないかとは思いますので、その場合、まずは、「新しい株の本」をお読みになるなり、シェアーズのセミナーを受けるなりするのが望ましいと思います。

   決算書分析と企業価値評価といういわゆる定量評価の基礎理論を抑えた後、いよいよ企業の将来の姿を予測(最終的には将来CFを予測)するための「定性評価」の勉強をされるのが良いと思います。「新しい株の本」のもう一つの良いところは、企業の「事業内容」の定性評価に関する基本的な考え方を「価値の源泉に着目する」というアプローチでわかりやすく解説していることです。定性評価に関する解説投資本という意味では、私の中では「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」以来のヒットでした。ここだけでも初心者には読む価値はあろうかと思います。

   
   投資は本当に奥が深いです。だから面白いのだと思います。


00:21:54 | cpainvestor | | TrackBacks