April 21, 2007

The Whole New Mind (前編)



  3年ほど前に、言えば誰でも知っている老舗の某外資系クライアント企業を担当していたときのことです。数年前から続く会社の業績不振で、日本法人でも大規模なリストラクチャリングが行われることとなりました。第一弾は、中高年を対象とした希望退職が行われましたが、それだけでは収まらず、続く第二弾は、間接部門のほとんど全ての業務をインドのバンガロール及びその他のいくつかのアジア地域に移転するというドラスティックなものでした。間接部門で働く従業員の方々には、年齢に関係なく以下の2つの選択肢が提示されました。

? かなり優遇された割増退職金を受け取ることによる退職
? 移転先のバンガロール(及びその他のアジア地域)への転勤(駐在員としての2年間の現行給与水準の保証、3年後からは現地給与水準にての雇用)

  当然ながら、対象となったほぼ全ての従業員が最終的には?を選びました。結局、この会社に残ったのは、社長、CFO、営業(営業企画)部門、高度な顧客サービス・メンテナンスを行うテクニカルサポート部門、予算設定などを行う企画部長1名、財務部長1名、人事部長1名、日本の税務を担当する担当者1名ということになりました。(もちろん、これらの間接業務を支える若干の派遣スタッフは、新たに雇用されています。)

  日本法人設立以来、何十年もリストラなどやったことがなかった会社であったためか、外資にしてはかなり忠誠心が熱く、人間的にも良い人たちが多くそろっていた間接部門だったと思います。当然、英語もそれなりにできて、勤続年数も比較的長い方が多かったため、業務の流れや社内の協力体制も非常にスムーズでした。

  当初、この案を聞いた時は、間接業務全体のアウトソースにより、業務フローが分断されて、会社のオペレーションが回らなくなるのではないか、数字が締められなくなるのではないかと、危惧を抱きましたが、1年ほど混乱した後は、コストは以前の1/3以下で、まがりなりにもオペレーションはまわるようになりました。(もちろん数字の細かな精度などは、以前に比べるとかなり低くはなりましたが・・・)

  私は、この1件を経験して以来、「英語ができる」、「財務/会計がわかる」という一般的に言われているようなキャリアアップを目指していっても「まったく安泰ではない」と思うようになりました。この手の職種は需要が沢山あって、どこかに就職はできるという意味で「汎用性は高い」かもしれませんが、最も国際競争にさらされやすくコモディティ化しやすい分野でもあり、「決して長期に渡って高賃金をもらえる業務ではない」と痛切に思うようになりました。


  「顧客からの距離が遠い部門で働いてはいけない。」「組織内では、アイデアやコンセプトを提案すること、考えること、コミュニケーションをとることが多く要求され、自分の個性そのものが武器になるようなポジション取りを目指さなくてはならない。」

 これが、このとき、私がこの事例から得た教訓でした。


(続く)


00:18:24 | cpainvestor | | TrackBacks