July 15, 2007

経営者&投資家のセンス

  
  残念ながら、3連休は仕事です。まあ、台風で大雨ですから、皆さんのレジャーの予定は狂っているでしょう。ふふふ。働かなければならない私としては、むしろこんな天気の方がありがたかったりします。

  今日、久しぶりに雨の中、丸の内界隈を歩きましたが、次々と建設されている高層ビルを見て、都心の好景気を実感すると共に、「やがて丸の内も新宿の高層ビル街のようになるのかなあ」と漠然と思いました。三菱東京UFJ銀行本店前の三菱商事本社跡地は、古いビルが取り壊され、広大な空き地となり、新しい高層ビルの基礎が築かれています。1年もすれば、巨大な高層ビルが、また一つできるのでしょう。こんなビルで働ける方々を、少しうらやましくも思います。


  この東京駅界隈に来ると、あるオーナー社長から聞いたとても興味深い話を思い出します。

  時は1999年、あるオーナー企業の社長さんが、飲食ビジネスを立ち上げて数年、年商1億円を超えるか超えないかの頃、東京八重洲口近くの雀荘ばかり入っているビルが、競売物件として売りに出ていたそうです。当時は不動産など誰も見向きをしない頃です。この社長さんは、当時30代前半で、この物件を借りられるだけのありったけの借金をして、なんとか手に入れました。(もちろん物件の取得当初は、抵当権でがんじがらめです。)取得価額は、年商の5〜6倍の値段だったそうです。当時は、周りの誰もが「気でも狂ったのではないか?」と思ったそうですが、社長には、確信がありました。「自分が目の黒いうちに、東京駅が移転することはありえない。この立地でこの値段は絶対に買いだ。

  この社長は次のようにも言っていました。「飲食ビジネスでは、絶対に真似できない差別化ポイントが一つだけある。それは立地だ。サービスも料理も内装も、徹底的に真似をすれば、ある程度の水準でコピーができる、ただ、立地だけは、どうやっても真似をすることができない。だからオレは立地に徹底してこだわる

  2007年の現在、このビルの敷地は、八重洲ツインタワー構想の計画地に隣接しており、地価は、取得原価の3倍を超えているようです。この不動産の含み益の増大が、その後の会社の事業展開における資金調達能力の向上にどれだけ寄与したかは、計り知れないものがあります。

  「東京駅は絶対に動くことはない。」

  世の中が不動産に対して総悲観の時に、冷静にこの「当たり前の事実」に着目し、最大限のレバレッジをかけてまで実行できた人間は、一体何人いたのでしょうか。(私は全然ダメでした。)彼の「投資家としての慧眼とその実行力」は素晴らしいものがあったのだと思います。ただ、それ以上に重要だったのは、類稀なる人心掌握術で、出店して数年経ってもその勢いを全く衰えさせることなく、キャッシュ・フローを生み出すことができる仕掛けを、当時既に彼が「経営者」として手に入れていたということなのだと思います。この継続的に生み出されるキャッシュ・フローの安心感があったからこそ、「最悪でも利息・元本の返済は、当面は可能だ」という確信が生まれ、一世一代の大勝負ができたのだと思います。

  人心を完全に掌握し安定したキャッシュ・フローを生み出す仕掛けを構築するという経営者としてのセンスと、時機を見てリスクをとれる投資家としてのセンス、この2つの彼のセンスが衰えない限り、彼の会社はまだ伸びると思っています。


00:38:35 | cpainvestor | | TrackBacks