September 18, 2007

無事終了

  
  本日は、日経ビジネススクールさんで、「開示資料を用いた企業分析セミナー」を実施させて頂きました。Weekdayであるにも関わらず、このブログの読者の方にも数名、ご参加頂き、この場を借りてお礼申し上げます。(特に遠方よりお越しくださった皆様、感謝です。)受講者の皆様のお役に立てる内容であったかどうかは、皆様自身にご判断頂くしかありませんが、若干の時間延長は申し訳ないと思いつつも、とりあえず、大きなクレームもなく終了し、ほっと胸をなでおろしています。

  また、本日のセミナーの終了後は、11月にある別の大きな企業研修の打ち合わせをさせてもらいました。スポットの仕事であるにも関わらず、こうして毎年仕事を振ってくれるお客様に(プレッシャーにやや苦しみつつも)改めて感謝したいと思います。

  本日のセミナーでは、分析対象企業としてカゴメキユーピーを採りあげました。いずれも、圧倒的No.1のシェアを持つ食品調味料(ケチャップとマヨネーズ)マーケットを持っており、そこを足がかりに関連製品(野菜飲料や惣菜など)の製造販売に業務内容を拡大しており、近年は上流の原料調達関連ビジネス(生鮮野菜製造ビジネス、卵、食酢製造ビジネス)等にも、その勢力を拡大している時点では、共通しています。

  ただ、あくまで「トマトと野菜」に徹底してこだわり、主力の野菜飲料市場で着実な成長を続けているカゴメと、製品展開は総花的なフルライン戦略を採用し、物流などの川下分野にも積極的に進出しているものの、近年売上の伸びが停滞しているキユーピーは、株式時価総額などを見ても対照的です。今回のセミナーでは、それぞれの会社のビジネスモデルの特徴を、いろいろな分析の切り口を使って開示資料から出来る限りあぶり出したつもりでしたが、どこまで受講者の皆さんに伝わったでしょうか・・・。

  食品業界の大手企業は、大きな市場シェアを持つ商品をいくつか所有し、安定した需要が見込めるという意味で、株式市場において、製薬会社と並んで「ディフェンシブ銘柄」であると言われることも多いですが、残念ながら、カゴメもキユーピーも「国内市場頼み」である状況に変わりはなく、Valuation的には割高な印象がぬぐえませんでした。両社は、ここ数年間の対岸の火事を見て、買収防衛策の導入に躍起になっているようですが、「値段ほどの魅力のある会社なのだろうか」というのが、私の率直な印象です。

  国際展開にも積極的な食品業界の優良企業としては、味の素ヤクルトヤクルトについては、過去に簡単に分析したことがあります)が挙げられますが、こちらも割高ですね。私の中で食品業界が投資対象となるのは、だいぶ先になりそうです。

P.S.
  多くの意欲的かつマニアック?な質問をして下さったブログ読者の皆様、ありがとうございます。ブログともども、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


23:32:41 | cpainvestor | | TrackBacks

August 30, 2007

感 謝

  
  お蔭様で、Sharesさんから発売された、私の「決算書深読み術」音声セミナーレポート
が、好調な売れ行きとなっているようです。ご購入頂いた皆様、何もお願いしていないのに、自主的にご自身のサイトでご紹介頂いている有名バリュー投資家の皆様に感謝申し上げます。

  思えば、セミナーをお引き受けした当初は、「顧客属性の絞りにくい公募型セミナーで、半日3万円」のプライシングに、正直大きなプレッシャーを感じました。「これでひどい内容のものを出したら、私は専門家として生きていけなくなるのではないか」と感じていました。

  というのも、私にはセミナー講師やコンサルティングの分野で師匠となる方がいるのですが、その師匠に昔言われたことをいつも肝に銘じているからです。

  「セミナーのお客様は、君が受け取る報酬ではなく、彼らが支払う受講費用との比較で、セミナーの内容を吟味し評価する。その評価に耐えうるものを出さなければ、プロとして失格である。一回一回が真剣勝負なのだから、絶対手を抜いてはいけない。」
  
  山口さんを初め、シェアーズの皆さんは、「この内容・コンセプトなら、それなりの対価を支払ってでも受講したいという個人投資家のニーズが絶対にある」と当初からおっしゃっていましたが、頭の中のアイデアとノウハウを単に口に出したに過ぎなかったものを、ほぼゼロベースから睡眠時間を削って実質10日ほどで資料として作り上げた私としては、講義当日まで、正直不安で不安で仕方がありませんでした。

  そのセミナーの内容が、このたびレポートという形で世に出て、より多くの皆さんに「負けない投資のための基本となる決算書の深読みの技術」として広がっていくことを、大変うれしく思っています。

  株価が不調なこのような時期にも関わらず、目先のトレンドに流されて投資をやめるのではなく、それなりのコストを負担してじっくり腰を据えて企業の開示資料を深く学ぼうとする個人投資家の皆さんが増えていることは、「着実に日本の資本市場が良くなっていく前兆」のような気がしています。

  私自身もこのブログを訪れて下さっている読者の皆さんに負けないよう、会計実務家としての本業のみならず、投資と企業分析のスキルも磨き続けたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

P.S.
  9月に日経ビジネススクールさんにて、「開示資料を活用した企業分析のセミナー」を実施することになっています。一般企業の企画・財務などの実務担当者向けですが、投資家の皆さんにもお役に立つ内容かもしれないと思い、紹介することとしました。ご興味のある方はこちらから、それらしいものを見つけて下さい。


18:24:39 | cpainvestor | | TrackBacks

August 16, 2007

「賢明なる投資家」を目指すために、今、すべきこと

 
  米国のサブプライムローン問題をきっかけに、世界の株式市場の下落が続いています。今日の日経平均も大分下げたようですね。こういう時こそ、相場から退場させられないように、集中投資や信用取引は避けるなどの注意を払いながら、だいぶ値ごろ感が出てきた「事業資質の良い会社」に淡々と投資する「胆力」があるかないかが試されているような気がします。海の向うのBuffett氏も、長期投資を推奨する独立系投信の澤上氏も淡々と買っているようですね。

  私も、少し早まったかもしれませんが(笑)、ここ1週間で、国内、海外共にほぼフルインベスト状態となりました。近日、追加投資資金ができる予定なので、こちらも投入しようとたくらんでおります。国内にするか、海外にするかはまだ、思案中です。

  買いのポイントは、「割安だから」と言って、資産バリュー株ばかりを買うのではなく、やはり、これまでずっと指をくわえて見ているしかなかった「事業資質の良い会社」を買うことにあるのだと思います。個人的には、ウォッチ銘柄の中から、特に、国内市場のみならず、海外市場も相手にしている収益バリュー株だと思われる銘柄を、もう少し買い増ししたいと思っています。


  「事業資質」の見極めには、個別企業の決算書読解のための知識のみならず、ビジネスモデルに関する定性分析の知識も欠かせません。


  手前味噌で恐縮ですが、私が2007年4月にSharesさんで実施したセミナーの方が、このたび、

決算書深読み術セミナーレポート

として、音声解説付で販売されることとなりました。

  セミナー開催当初は、DVD録画は実施しないという条件で、セミナー講師を引き受け、私も持てる全ての知識と経験をもって、「現役会計監査人・元上場審査官として投資家の皆さんに是非ともお伝えしておきたいと思うこと」を全力でお話しました。

  受講者の皆様からの評価のおかげで、セミナー終了後、その内容の一部はいくつかの雑誌等でも採り上げられ、当日受講できなかった皆様からのDVD化の希望も多数頂くなど、私の想定した以上の評価を頂くことができました。改めて、受講して頂いた皆様に感謝致します。

  今回のレポートはSharesの皆さんが、「これだけのコンテンツをこのまま埋没させてしまうのは惜しい」ということで、私の作成したレジュメと当日の講義内容の録音から、時間をかけて丹念に文書化してくれたものが原型となっています。この努力に感謝して、私自身も、レポート内容、及び講義音声の全面的な校正・監修を行い、「職人」として内容のクオリティ確保に努めました。

  相場が下落している今こそ、じっくり腰を据えて、企業の開示資料の研究をしてみるのも良いのではないでしょうか。タイトルは「粉飾決算に騙されるな!」などと、キャッチコピーがついていますが、内容は、「会計粉飾のパターン事例を題材に、企業の開示資料をより深く読むためのポイントを解説したレポート」となっています。わずか3時間半の講義でしたが、文書化すると70ページもの分量になりました。投資初心者の方には、やや難しい内容であることをあらかじめお断りしておきますが、ある程度の決算書読解の知識と個別株投資の経験のある方には、「投資で負けないための新しい知恵」を体得できる有意義な内容だと、私自身は思っています。


  ご興味のある方は、ぜひ、上記のリンク先から購入して頂ければと思います。


  なお、sharesさんでこのレポートとセット販売されている

財務分析セミナー

も、通常の財務分析の知識の習得のみならず、ビジネスモデルにもフォーカスしている非常に良い内容のものだと思います。(私自身もこのセミナーに参加しているのでクオリティは保証できます。)こちらもあわせてご検討頂ければと思います。

 最後は宣伝にみたいになってしまいすみません。ご容赦下さい。


23:33:48 | cpainvestor | | TrackBacks

June 01, 2007

堕ちる会社 大研究

  
  月刊「宝島」さんが、「堕ちる会社大研究」と題して、ここ1年の株価暴落銘柄リストを特集されています。日経ビジネスや週刊ダイヤモンドから始まったビジネス誌の不祥事企業特集もこの「150社リストアップ」で総括された感があります。

  この特集を読んでいて、1年で株価が80%以上も暴落する銘柄というのは、以下のような、ある程度共通したいくつかの特徴があるように思いました。

? 本業が上流産業の市況の影響を受けやすい受注産業、顧客からのリピートが見込めない単発商品・サービスの販売産業など、少し勉強している投資家ならば、「事業の内容」を読んだだけで、「かなり安定性に欠けるな」と理解できるような会社が多いこと。

? 本業の調子が悪くなるに従って、上場した時の資金や、無理な第三者割当増資、MSCBなどで調達した資金を使って、時には業態そのもの転換まで狙ったM&Aをやり始めていること。(こういうのを見ると、自己資本比率が高いことはまったくあてにならないことがよくわかります。)

? 上記のような無理な資金調達により、事実上、会社そのものが投資ファンドに乗っ取られたような形になっていて、完全な投資会社となってしまっているケースもあること。

? 会計方針の変更、監査人からの会計処理の指導などが入ったことが引き金で業績大幅下方修正となっている会社が多いこと。

? やはり、一発資産を減損すると決算への影響が大きい、ソフトウェア、コンテンツ系の業種はそれなりに多いこと。

 まあ、「上記のような性格を持った銘柄に投資をされる時には、十分にご留意下さい。」という「教訓」にはなるのではないかと思います。また、空売りを専門にやられる方には、全く逆に「投資有望度」をはかるファクターになるかもしれません。

  P.36 に「IPOを担当する現場会計士としての本音」を少し採り上げてもらいました。ご参考まで。



00:22:01 | cpainvestor | | TrackBacks

May 24, 2007

最強の決算書活用術

  

  日経マネー7月号において「最強の決算活用術」という特集を組まれています。その32頁に、私が4月にシェアーズさんで行ったセミナーのほんの一部分のエッセンスが記載されています。ご興味がある方は、ご覧頂ければと思います。

  正直言って、「マネー誌」というのは、ほとんど読まないので、今回の取材がきっかけで久しぶりに購入して読んでみました。全体的な印象として、「数年前にちらっと立ち読みした頃より、だいぶ内容が良くなっているのではないか」と思いました。(別に自分のセミナーの内容を取り上げて頂いたから、持ち上げているわけではありませんので、誤解のないようにお願い致します。)
 
  今月の日経マネーさんの特集も、前半部分は、「決算書活用」と「海外ETFへの投資」です。新興株が絶頂期の頃なら、こんな地味な企画は、絶対に通らなかったのではないかと思います。
  「決算書解説」は、業種業態ごとに決算書を読解するための留意事項や、コスト構造の固変分解による収益増加時の増益率の予測、そして私の担当する粉飾懸念銘柄に対する留意事項など、投資家向けの良心的なお勉強系の企画となっています。
  また、海外ETFへの投資も、その優位性の解説から、購入できる商品、それを取り扱う証券会社まで、親切に解説されており、決してスポンサー向けの提灯記事にはなっていません。
まあ、後半部分には、袋とじまでした「特選銘柄」がついているところは、昔と変わりませんが(笑)、ここは、ここは現状の読者に対するマーケティング戦略上、外せないのでしょう。


  ただ、これだけ、インターネットが発達してくると、新聞や雑誌の生き残りは、今後、ますます厳しくなっていくことになるのだと思います。

  投資の分野一つとっても、向上心のある個人投資家の皆様は、多くの書籍を読み、実際の投資経験を積む中で、独学でどんどんスキルを上げていくわけです。また、単なる売買報告ではなく、「なぜそういう銘柄を購入したのか」をビジネスモデルから解き明かすような、「質の高い知見」をWeb上で提供してくれるレベルの高い個人投資家さんも何人も現れています。

  このような時代だからこそ、有料の雑誌媒体が生き残るためには、(ネットにはない)深い知見と考察、希少性などがこれまで以上に求められるのだと思います。

  そういった意味では、今週の日経ビジネスさんの「スチールパートナーズ代表に対する独占インタビュー」などは、雑誌媒体ならではだと思いますし、こういう記事があると、一面的な内容ではあるにしても、「購入する価値のある情報だな」と思います。

  個人的には、投資・マネー系雑誌にも、単なる銘柄推奨ではなく、現場の取材を踏まえて、ビジネスモデルの分析により強くスポットを当てたものをどんどん増やしていってもらいたいと思っています。
(長期投資家が、暴落時に購入できるよう、事業資質の良い会社の「儲けのカラクリ」をどんどん紹介するというような発想です。)

  
  結果指標としての決算書分析だけではなく、要因指標となりうる「投資家的なビジネスモデルの分析手法」を習得し、加えて「一定程度の企業価値評価関連の知識」を学ぶことが、「負けにくい投資」をマスターするために、遠回りでいるようでいて、近道であるような気がする今日この頃です。

  
  雑誌媒体の更なる情報価値の向上に期待したいと思います。


P.S.

  個人投資家向けではありませんが、7月に日経ビジネススクールさんで、一般ビジネスマン向けに、「企業価値評価の基礎」のような研修の講師をすることを予定しています。「価値評価関連の書籍を読んでもピンと来ない」という方に、1日でDCF法の基礎的なエッセンスを体験型で学んで頂く内容です。理論株価も算出するわけで、投資家さんでも、お役に立つ内容ではあると思うので、この分野にご興味があってご都合がつく方はいらしてください。なお、本業関連であるため、直接のリンクは貼りませんので、日経ビジネススクールのサイトから「それらしきもの」を探してみてください(笑)。


01:03:29 | cpainvestor | | TrackBacks