December 04, 2007

芸人・タレントの生き残り術とビジネスモデル

  
  大型プロジェクト終了と共に気が抜けたのか、大風邪をひきました。木曜・金曜とほとんど起き上がれず、48時間中40時間ぐらいは眠っていたのではないかと思います。明らかにOverworkで、風邪をひくのは自業自得、家族からもせっかくの休日がつぶれ大ブーイングで戦力外通告を受けました。あの仕事で体を壊されたのかと思うと腹が立つというか情けないというか・・・。

  昨日あたりから、ようやく起き上がれるようになり、食事時や目覚めた深夜に何とはなしにテレビを見ていると、多いですね・・・お笑い番組。「第○次お笑いブーム」だか知りませんが、見たこともない若手芸人が沢山出演してネタを披露している番組が、そこいら中のテレビ局でやっていますね。何でも今年の一番人気は「でも、そんなの関係ねえ!」という芸人らしいですね。これもつい先日、妻から教えてもらいました。確かに、彼の海パン姿にはインパクトがあって面白いですね。そう言えば、去年は、同じく筋肉質の芸人がちょっと怪しい衣装で手を掲げて「フォー!」とか叫んでいたと思うのですが、彼はもういなくなったのでしょうか。芸人・タレントの業界も競争が激しく、あっという間に消えていく人が多いですね。

 メジャーデビューのきっかけはどうあれ、芸人・タレントで長く芸能界で生き残っている人を見ると、いくつかのパターンに類型化できるような気がしたので、以下に代表的なパターンをビジネスモデルになぞらえて整理してみます。

1. 王道系

(ア) プラットフォーム主催型
A) 芸人として売れっ子になり、その余勢を買って番組の司会業などに転身、売れっ子司会者となって、やがて、自分の名前=番組となるようなバラエティ番組そのものを主催するのに近い形となって、あるときは若手芸人・あるときは素人などを突っ込むなり、合いの手即興ギャグなどを連発するなどして番組を盛り上げ、視聴率を確保するタイプです。たけし、さんま、タモリ、紳助など、巨額報酬を得ている芸人のほとんどはこのタイプに分類されます。
B) これは、企業で言うところのプラットフォームビジネスに近く、証券市場の胴元である東京証券取引所、家庭用ゲーム市場の胴元である任天堂などのビジネスモデルに似ています。
C) このタイプは自ら主催するマーケット(番組)が長期に渡って盛り上がれば盛り上がるほど、長く大きく儲けることができるので、多くの芸人が目指す理想の形であるといえますが、マーケット(番組)が盛り下がってくると(視聴率がとれなくなると)、既に芸人としての「芸」(プロダクト)だけでは既に勝負できなくなっていたりするので、案外もろかったりします。また、芸人本人=番組だったりもするので、病気降板などがあると、代替性が高い業界だけに、その後の人気復活は微妙であったりもします。

(イ) 大手傘下のコバンザメ型
A) 単体として番組を主催するほどの人気はなくても、それなりの差別化された個性があったり、胴元芸人や番組プロデューサーにとりいってものすごく気に入られる能力があったりすることで、「人気番組の脇役」という自分のポジションと、生きていくには十分な収入を細く長く確保するタイプです。たけし軍団の芸人達、ウッチャンナンチャンの番組に出続ける出川などがこのタイプに分類されます。
B) これは企業でいうところの、子会社ビジネス、ケイレツビジネスに近く、総合商社の事業子会社、大手自動車系列の部品子会社などのビジネスモデルに似ています。
C) このタイプは、上得意の親分に従っていれば、本人の芸の能力はそれほど高くなくても、比較的長く生き残ることが可能ですが、親分への仕事の依存度が高いだけに、親分がこけた場合には、自らも大こけすることになります。また、自らの芸風を全面に押し出すことができない分、ストレスがたまることも多いと思われます。


2. 差別化系

(ア) ニッチな異分野開拓型
A) 他の芸人・タレントが開拓していない異分野に進出し、その分野の名物芸人となることで、特定分野の番組にずっと使ってもらう機会を得て、それなりの報酬を細く長く確保するタイプです。グルメタレント、「まいう〜」のホンジャマカの石塚や、ものまねタレントのコロッケなどがこのタイプに分類されます。
B) これは企業で言うところの、ニッチ特化型ビジネスに近く、棚卸代行サービスのエイジス、血液検査装置のテクノメディカなどのビジネスモデルに似ています。
C) このタイプは、自らニッチマーケットを開拓する苦労はあるものの、当該マーケットそのものが消滅するか、競合他社に奪われるなりしない限りは、比較的長く安定した報酬を得て、生き残ることは可能です。ただし、あまり目立ちすぎたり、マーケットの魅力が高まってきたりすると強力なライバルが出現して生き残りが難しくなることもあります。

(イ) ビッグイベントリマインダー型
A) オリンピックやワールドカップなど、定期的に開催されるビッグイベントの際に、それにちなむタレント・芸人として番組で使ってもらうようなポジションを確保して、定期的に報酬を得るタイプです。この報酬だけで生活できるかどうかは微妙なラインではありますが、定期的に仕事のオファーが読める分、先の予定が立てやすく兼業もしやすいタイプであると言えます。元オリンピック選手、元野球選手などのスポーツ系タレントなどがこのタイプに分類されます。
B) これは、企業でいうところの、特需型ビジネスに近く、紙幣鑑別機のグローリー、選挙機材のムサシなどのビジネスモデルに似ています。
C) このタイプは、自らのバックグラウンドに関連するビッグイベントが定期的にある限り、仕事のオファーが来る可能性がありますが、同じ分野で自分より優れた実績を残し、しゃべれる人間が現れたりすると、自分の存在価値がゆらぐこともあります。


3. その他

(ア) 業態転換型
A) タレント時代の知名度や人気を生かして、政治家や有名人の配偶者など、まったく違う分野に進出することで、自分のポジションを確保し、報酬や地位を得るタイプです。そのまんま東や、横山ノック、騎手の武豊の配偶者となったアイドル(すみません、名前が思い出せません。)などがこのタイプに分類されます。
B) これは、企業で言うところのブランド・技術ノウハウ活用型異業種成長ビジネスに近く、古くは「隼」戦闘機の中島飛行機から自動車メーカーに業態転換した富士重工業、新しくは、ソフト卸業から電気通信事業者に業態転換しつつあるソフトバンクなどのビジネスモデルに似ています。
C) このタイプは、「あの人、昔は芸人・タレントだったんだ」と言われるくらいまでの業態転換に成功すると、勝ちパターンであるといえるでしょう。案外、前職よりも社会的地位や報酬が良かったりもします。ただ、やはり異業種におけるその道の訓練が不足していることも多いため、その道のプロに任せるべきところを任せず、つい前職の風土や性癖などを持ち込んでしまうと、思わぬところで足元をすくわれる可能性があります。


4. まとめ

  芸能界の生き残り戦略もこのように整理してみると、競争力のある企業のビジネスモデルと非常に似通っていることに気づかされます。多くの芸人が、毎年フレッシュなネタを持ってチャレンジしてきますが、何人が上記のようなサバイバルイメージを持って、日々出演しているか、聞いてみたいところです。
  私自身は、将来的に、会計士業界で「ニッチな異分野開拓型」をめざして研鑽を積んでいるつもりですが、あわよくば「業態転換型」を狙いたいと思っています。どうなることやら・・・。

追伸
 最近、こちらのサイトは、休日、夜間は、私もほとんどアクセスできませんので、今後は、新サイトを中心に記事を先行アップしていきます。こちらの読者の皆さんが、ブログ閉鎖と思わずに、新サイトに来ていただけると良いのですが・・・。あつかましくて恐縮ですが、いつもご訪問してくださるヘビー読者の皆さんの、新サイトの引用・宣伝・紹介を希望致します(笑)。






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November 29, 2007

長期M&Aプロジェクト終了

  
  途中、1週間の御殿場出張を挟みながら、1ヵ月半の長きに渡って振り回されてきたM&Aプロジェクトがようやく終了しました。

  先月、当月と残業時間は150時間をゆうに超え、気力、体力共に、極限まで追い詰められました。プロ投資家の皆さんとのタフな交渉は、何度やっても骨が折れますし、限られたプレゼン時間でいかに気の利いた知見が出せるか、毎回毎回のミーティングが、神経を研ぎ澄まして臨まないとやり込められるので、終わるたびにどっと疲れました。

  買収ターゲット企業への厳しいアクセス制限、限定開示された資料、厳しい時間の制約、こういった条件の中から、いかにして、プロ投資家の皆さんに満足されるアウトプットを出せるか、まさに「実務家としての総合力」が試されることを実感する毎日でした。

  
  これだけ、厳しい条件下で仕事をしたのは、久しぶりでした。スタッフに惜しみなくノウハウを伝え、彼らを鍛えながらプロジェクトを進めるのは、本当にしんどいですが、この若手スタッフが「勉強になりました。また使ってください」と言ってくれたことと、プロ投資家さんから大きなクレームもなく終わったことで、少しほっとしています。

  それにしても、最近は、プロ投資家さんの買収ターゲット企業の質の悪化と値段の高騰が進んでいることを肌で実感します。M&Aブームもいよいよフィナーレを迎える時期がやってきたのかもしれないと思う今日この頃です。

さあ、この週末は、家族サービスに邁進しなければ・・・でも、睡眠はとらないと。

  ここ2週間程度、ほとんど相場を見ていませんでしたが、Indexはだいぶ下がったようですね。このような時期だからこそ、少し時間ができたら、新規割安銘柄の発掘調査も行っていきたいと思っています。

 ご意見、ご感想は、cpainvestor.comにお願い致します。





19:10:48 | cpainvestor | | TrackBacks

November 16, 2007

御殿場にて



  今週は、ある有名メーカーさんの企業研修のお仕事で、このお客様の御殿場にある研修センターに4日間ほど滞在しました。

  久しぶりに東京を離れ、透き通った空気と紅葉、美しく雄大な富士山を見て、気分的にリフレッシュできました。毎年、1年前から日程を決めて下さって、私にこういう機会を与えて下さる主催者と受講者の皆さんに感謝しなくてはならないと改めて思いました。

  それにしても4日間は長く、真剣勝負でしゃべりにしゃべり通して非常に疲れましたが、最後に受講者の皆さんの感謝の言葉を頂くと、「どんなにしんどくてもやめるにやめれない仕事だなあ」とつくづく思いました。入社数年の若者エンジニアから、受ける刺激も大きく、私もまだまだ修行が足りないと思うことが多々あります。
 
  いつか、私の研修を受講して頂いた皆さんの中から、この会社の社長さんが誕生することになったら、楽しいだろうなあと思う今日この頃です。


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November 07, 2007

「エキナカビジネス」に見る鉄道会社のポテンシャル

  
以下、11月6日付、日経新聞朝刊より抜粋です。

  セブンイレブン、売上高で首位明け渡す・1店舗日販   コンビニエンスストア最大手のセブン―イレブン・ジャパンが1店舗・1日当たり売上高(日販)で首位の座を明け渡した。2007年度中間期決算で比較すると、JR東日本が駅構内に展開するコンビニ「ニューデイズ」の日販は66万2000円で、セブンイレブンを5万6000円上回った。商品力を武器に高収益を上げてきたセブンイレブンだが、立地で勝るJR系に逆転された。


  商品力や店舗のオペレーションノウハウで圧倒的な強みを持ち、コンビニ業界の日販でダントツの首位だったセブンイレブンが、よりにもよってJR系「NEWDAYS」に負けるとは・・・、日経新聞では小さな囲み記事の取り扱いでしたが、私にとってはかなり衝撃的なニュースでした。

  セブンイレブンに行くと、特に、弁当惣菜コーナーなどには、いつも新しい製品が並んでいて、その商品の回転の速さに驚くと同時に、単品管理による徹底した商品の絞込みと、新商品の開発に日々たゆまぬ努力を重ねていることがよくわかります。セブンイレブンは、いつも新しい発見があるので、行ってみて楽しくなることも多いですよね。(昔、わらべや日洋の株式を持っていた頃を思い出します。)

  このセブンイレブンと比較すると、JR東日本管内のエキナカに位置するNEWDAYSは定番商品は置いてあるものの、その品揃えにまったく驚きはありません。まさに「抜群の立地の良さ」と「店に入るのが不快にならない程度の品揃えと接客」という感じです。(関係者の方、いらっしゃったらすみません。)人件費は、セブンイレブンとほぼ同水準であると仮定して、NEWDAYSの家賃や光熱費などのコスト負担割合がどの程度あるかにもよりますが、あの品揃えとオペレーションで「コンビニ日販日本一」とは、やはり、「エキナカ」は恐るべき立地です。

  ここ数年、JR東日本は、エキナカビジネスを徹底して強化しています。エキナカ部隊は、ルミネなどで小売業を手がける部隊と同様、いわゆるポッポヤさんとは別採用となってますし、彼らがJR東日本の組織風土に飲み込まれることなく、本気で外部からノウハウを吸収したら、「もともと立地はこの上なく最高」なわけですから、すごい収益があがるような気がします。なんと言っても、JR東日本管内で、一日5万人以上の乗降客がある駅が88もあるわけですから、潜在的に魅力的な立地はまだまだ沢山ありそうです。先日東京駅に新しくできたGRANSTAをチラッと偵察しましたが、「ほとんどデパチカ」でした。これは、大丸や八重洲地下街の店舗の皆さんはたまったものではないなと思いました。

  同じくエキナカの潜在的価値に着目するとすれば、JR東日本に比べ、まだ、このマーケットがほどんと未開拓な企業が存在します。東京メトロです。こちらも5万人以上の乗降客がいる駅は68もあるようですから、その潜在力はかなりのものがあると思われます。


  東京への一極集中が益々進む中で、折しも、東京メトロは、民営化・上場などが予定されているようです。株式市況が低迷する中での「東京メトロIPO」となれば、これは買いかもしれません。安間さんの言うように、国富を守るためにも、中国やアラブあたりの国営ファンドなどに、上場と同時に大量購入されないことを祈ります。


00:40:58 | cpainvestor | | TrackBacks

October 31, 2007

いかにして、「コスト+マークアップ」の価格設定から抜け出すか

  
  労働集約的なサービス業において、自分も顧客も満足できる「良い仕事」をできる限りしていこうと思うと、やはりどのような顧客に焦点を絞り、どのような価格設定を行うかということが、極めて重要なのだと思います。

  昔、会計監査の仕事がメインだった頃、いつもお客様から、稼動日数見積×単価の見積書の提出を求められて、その日数を増やす、減らすでギリギリ交渉させられ、ほとほと嫌気がさした記憶があります。特にオーナー社長との属人的な信頼関係に基づく交渉ができない大企業ほど、組織対組織の交渉となり、「誰が来るか」ではなく、「何日来るか」でもめることになります。

  差別化がほとんどできない会計監査サービスの交渉の経験を通じて、「コスト+マークアップ」の価格設定から抜け出さない限り、私達のような労働集約型サービス業は、決して走り続けることから解放され、一息つけることはないのだということを痛切に感じました。
  もちろん、徹底したマニュアル化によって低賃金(若年)労働者を活用し、圧倒的なコスト競争力で勝負するという方法もあるにはありますが、それは、高度に「仕組み化」が進んだ大規模組織として取りうる選択肢であるでしょうし、この場合、現場で働く従業員としては、全く面白みのない単純作業系の仕事を強制されることとなり、少なくとも、私は耐えられません。(投資家や経営者として果実を獲得する側にいる場合には、仕事の内容そのものに、それほどの面白みを感じなくても、良いのかもしれませんが・・・)


  自分のやりたい仕事をしながら、「より、チャレンジングな価格設定を顧客に受け入れてもらえるにはどうしたら良いのか?」を突き詰めて考えた場合、「差別化によるブランド価値の向上」「徹底した顧客の選別」の二つのベクトルを推進するしかないように思うようになりました。

  サービス業における「差別化によるブランド価値の向上」を考えた場合、サービスのクオリティと同じくらい重要なのは、やはり「最後は右脳系で攻める」ということなのだと思っています。顧客のかゆいところに手が届く、「感性」を訴求するサービスを提供し続け、顧客が競合他社や原価を意識しないように仕向けない限り、高単価は受け入れられないと思うからです。サービスで言えば、ここらあたりのホテルが、商品でいえば、ここの家電あたりがベンチマークになるのだと思います。(余談ですが、私は、表参道ヒルズのAmadanaのお店を覗くのが好きです。)価値を理解できない人にとっては、「詐欺の一歩手前」と思われるようなサービス・商品こそが、実は究極のブランド価値なのかもしれません。

  また、「徹底した顧客の選別」が必要なのは、「サービスの価値を理解してもらえない」顧客に押し売りでサービスを提供して、サービス提供後に難癖をつけられた上、値下げを飲まされるサイクルで仕事をするのは、本当に消耗するからです。大変失礼な言い方かもしれませんが、「価格によって顧客を選別する」という発想も、形のないプロフェッショナル・サービスには、特に重要な要素なのだと思います。「価格」が私共とお客様の間に緊張感を与え、その緊張感の中でプロとして最善を尽くすことによって、その価値を理解して頂けたお客様との間で長く良い関係を続けるという戦略です。毎回毎回、厳しいプレッシャーの中で全力を尽くすというのは、本当に骨の折れることですが、やり遂げた時の達成感は大きいものがあります。

  ベンチャー支援の仕事にしても、かつてはお客様に資金的余裕がないところが多いという理由で、「無料」でいろいろとボランティア的に引き受けてきたこともありましたが、数年前から、少なくとも自分の本業に関するものは、たとえ、それがセールス関連業務であっても、基本的に無料で引き受けるのはやめるようにしました。なぜなら、「無料」ということが、私達に甘えを生み、顧客の誤解を招き、結果、サービスを提供する側も受ける側も不幸になることが多いことに気づいたからです。

 「顧客の選別」を進めると、マーケットが小さくなるため、いわゆる企業化のメリットは小さくなります。ただ、「専門ブティック型」で好きなことを仕事にしたいと思っている人間には、それでいいのだとも思います。

  「本業は専門ブティック型ビジネスモデルを追求し、投資は企業型ビジネスモデルを追求する」というのが、案外、良いバランスなのではと思う今日この頃です。


19:08:00 | cpainvestor | | TrackBacks