July 01, 2007

心のセルモーター

  
  私どものビジネスは娯楽産業であります。人間生活に欠くことのできない「衣食住」に関連したビジネスではありません。世の中の状況によっては、真っ先に切り捨てられるビジネスであります。また、私どもはメーカーではありませんから、取り扱う商品は、どこのお店にもあるものです。私どもしかない特別なゲーム機やビデオ製品は無いのです。さらに、店舗施設にしても、専門業者さんならば、そっくり真似して、まったく同じ施設を作ることができます。
  私どもが世の中に企業として存在させていただけるためには、お客様に「ウェアハウスが無ければ、私は困る」と思っていただけるためには、どうしたらよいのでしょう?
  その答えを、私どもは、「思いの強さ」だと思っています。「あなたの笑顔が見たい」と愚直なまでに思いつづけることだと考えています。
  人生にはハレの日や喜びの日も沢山ありますが、これと同じくらい、いやむしろチョッと多いぐらいに、悲しいとき、苦しいとき、ため息をつきたいときがあるのが普通です。そんなとき、「心のセルモーター」をブルンとまわして、元気に、笑顔で、頑張っていけるようにと、私どもの提供するサービスが、そんなきっかけの一つになる、お客様の身近にいて、手軽に、そんなサービスを提供する企業をめざすこと、これが、私どもの経営方針のすべての出発点であります。

 
 

  この文章を読まれて、ピンとこられた方、あなたは、立派なバリュー投資家です(笑)。
  ご存知かもしれませんが、首都圏でレンタルビデオ、アミューズメント施設を展開するシチエ(4724)の決算短信より、毎年記載されている「経営方針」部分を引用しました。


  2006年12月期の決算は、売上高11,748百万円(前年比7.9%増)、経常利益1,866百万円(同8.1%減)、当期純利益1,002百万円(9.8%減)、営業CF3,073百万円(11.6%増)で増収減益決算となっています。減益の大きな原因は、近年の大型店舗の新規出店(川崎店、東雲店)に伴う償却費負担の増加にあり、ある意味、明確ではあります。


  この会社は、もともと、埼玉県地盤のレンタルビデオチェーンとして発展してきました。ただ、レンタルビデオ(DVDを含む)業界は、近年、右肩下がり傾向が鮮明になり、弱小店舗が淘汰され、大規模チェーン(ツタヤ・ゲオ等)に集約化されてきています。こうした中で、シチエは、同一地盤でのゲームセンターなどのアミューズメント施設開発に企業成長の活路を見出してきました。(「郊外型集客施設のローコスト運営ノウハウ」の、同一地域への水平展開です。)

  堅実経営の会社で、毎期数店舗の出店しかしていませんが、着実に売上は成長しており、若干の減益決算になったとはいえ、同業のツタヤ、ゲオなどに比べても、売上高営業利益率などは、まだ、圧倒的に高いです。ただ、近年の新店舗の投資規模の大型化に伴い、投下資本利益率などは、低下傾向にあります。


  この会社、地味ですが、愚直なまでに徹底して店舗の接客能力の向上などを図っています。(現場店長も日中は顧客への接客に専念し、決して業者の売り込みなどに対応しないそうです。)また、オーナー社長から経営を受け継いだ会計士が「ロマンとソロバン」のバランスをうまく取りながら経営を行っているようにも感じられます。冒頭のような「経営方針」を決算短信に記載している会社、私は好きです(笑)。

 
  先日、ある方から、仕事人としてのABCというものを教わりました。

A:当たり前のことを
B:ばかにせずに
C:ちゃんとやる

 
  この会社は、このABCが徹底できている印象を受けます。久しぶりに、また、しばらく保有してみようと思っています。
 
  私も、誰かの「心のセルモーター」をまわしてあげられるような、そんな仕事をしていければ良いなと思います。

  

Posted by cpainvestor at 23:25:59 | from category: h.銘柄分析 | TrackBacks
Comments

tomo:

シチヤを保有してるものですが、有利子負債が少し多い?って思ってしまうのですがどうでしょうか?
投資の金額が営業CFよりここ最近多いのも気になります。
でもそれ意外は良いな〜って気に入ってます。
(July 13, 2007 17:26:30)

cpainvestor:

tomo様

 コメント、ありがとうございます。
確かにシチエはここ数年の投資規模が大きいために、営業CFの水準を上回る投資を行っているため、有利子負債が増えています。ただ、わけのわからないM&Aなどを行っているわけではなく、戦略エリアでの店舗増設投資を地道に行っているだけです。

 シチエは完全な固定費型のビジネスを展開している以上、重要なのは新規施設の収益性と既存店の売上維持水準です。この2つが満足できる水準であれば、今の有利子負債残高については当面は心配ないと個人的には思っています。
(July 14, 2007 09:47:53)
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