September 24, 2007

NECのNASDAQ上場廃止に思う(2)

  
  SOP97-2は、ソフトウェア販売に係る収益認識の基準の詳細を定めたものですが、この中でNECが問題とされたのは、ハードウェア、ソフトウェア、各種の保守・サポートサービス等が一体となった、いわゆる複合取引(この業界では、ITソリューションサービスというのでしょうか)の収益認識についてのようです。

  SOP97-2では、この複合取引については、個別の契約単位ではなく、実質的に一体と判断される複合取引全てについての売上金額を、その会社が提示する各要素(ハードウェア、ソフトウェア、各種の保守・サポートサービス等)の個別の公正価額に基づき、按分することが求められています。その上で、個別の各要素ごとに収益認識のタイミングを検討することになるわけです。例えば、ソフトウェア販売相当額として按分された収益については、SOP97-2に基づき、以下の4つの条件を満たした時点で収益を計上して良いことになっています。

? 契約書などの契約の根拠となるものが存在する。
? ソフトウェアの引渡し行為そのものが完了している。
? ソフトウェアの金額が確定しているか、算定可能である。
? 代金の回収に問題がない。


  NECの言い分は、次のようなものです。
「業務の性質上、顧客企業ごとにITソリューションサービスの各要素の販売価額、値引率などはまちまちであり、社内における統一化された公正価額の客観的証拠など、SOP97-2の適用が始まった1998年まで遡って用意することなどできない。だから、複合取引における保守サポートサービスの収益明細の根拠を見せろだとか、当該収益の認識のタイミング(一括収益計上ではなく、期間にわたる按分収益計上としているか等)について検証しろとと言われても無理である。そんなこと、不正が発覚する前まで、監査法人さん細かく言ってなかったじゃないかあ!

  多くの日本のITソリューション企業のビジネス現場の実情から考えて、頷ける話のようでもあり(日本の会計基準を適用しているだけの会社では、細かいサービス別価格表そのものが厳格に運用されていないのではないでしょうか)、同じく米国ニューヨーク証券取引所に上場している日立製作所が、過年度も含めてこういったデータをきちんと用意して対応しているのだとすると、それはそれですごいことだと思います。

  米国において、ソフトウェア等の収益認識条件について、SOP97-2のような厳格な収益認識基準が定められた背景には、例えば、無償のアップグレード権がついたバージョンアップ直前のパッケージソフトウェアを決算期末直前に顧客に大量に販売し、実質的な収益の早期認識を行うような事例が続出したからだと言われています。この場合、実質的な顧客へのサービス提供の完了は、やはりアップグレード終了後と考えるのが自然なのだから、収益認識は客観性、確実性を重視して、アップグレード終了後のタイミングまで遅らせるべきだというのが、米国会計基準の発想です。

(続く)


Posted by cpainvestor at 06:09:01 | from category: d.会計税務トピック | TrackBacks
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