June 02, 2006

ライブドア監査人の告白

  単なる売名行為の暴露本かと思ったが、「気骨ある会計士」であった著者の人柄が出た良著であった。「投資事業組合を使った自己株売却益還流モデル」、「預金付け替えによる架空売上計上」という不正の発見にあと一歩まで迫りながら、ついに尻尾がつかめなかった無念、監査を降りる決断が下せなかった無念がじわじわと伝わってきた。
「自分自身の能力を高め、たとえ会計士という資格がなくても十分に稼ぐことができる能力を身につけることが、監査人自らの職業的倫理観を死守するための最大のリスクヘッジとなる。」
「上場準備の段階で、会社自身が上場に耐えうる管理体制を構築し、コンプライアンスを遵守する企業風土を築くことを担当会計士が厳しく指導せずに甘やかせると、上場後にこうしたカルチャーを変えていくのは至難の技である。」
「会社からオカネをもらって監査する仕組みがそもそも悪いと批判する会計士は論外である。オカネをもらいつつも、投資家のため、会社のためを思って厳しい指導ができるのが本当のプロフェッショナルである。」

  上記のような趣旨の記述は、むろん当事者である立場を割り引いて解釈するにしても、同じ仕事に携わる者として胸に響いた。同業の後輩として、著者が得た教訓を無駄にしないよう、誠実な仕事ができるよう精進を続けたいと思った。


 株式公開等に関与する全ての関係者にとって、ベンチャー企業の実際の監査現場を知りたい投資家にとって、必読の書であるように思う。


Posted by cpainvestor at 00:38:47 | from category: k.書評 | TrackBacks
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