September 12, 2006

金融機関による団塊世代の退職金運用獲得営業活動について思う

   先日テレビを見ていたら、「団塊世代の退職金運用を狙った金融機関の営業活動が本格化してきている」といったことを特集する番組が放映されていました。この先5年程度、いわゆる団塊世代のサラリーマンが退職金というまとまった資金を手にすることになるため、資産運用ビジネスを展開している各金融機関は、顧客獲得競争にしのぎをけずっているという内容を紹介するものでした。
   その中で、数年内に退職を控えたAさん(男性)が、金融機関に資産運用の相談にいくという場面がありました。Aさんは子供を育て終え、奥さんと2人暮らし、子供が大学を卒業し、ようやくひとり立ちしたのが数年前なので、まとまった貯蓄はほとんどなく、これから定年退職までにできる貯蓄と退職金、それに年金が退職後の生活を支えるという設定でした。番組の中では、おそらく大手の思われる金融機関(銀行?)の専用ブースで30代前半ぐらいと思われるファイナンシャルプランナーの資格を持った金融機関の職員(女性)が、Aさんの資産状況などを聞きながら、所定の画面にデータを入力していき、シミュレーションを行い「このまま何の運用も行わず、資産を食い潰すだけの生活だと80歳になる前に貯蓄が底を付く」という画面を見せ、次に、「すぐに使用しない余裕資金を5%で運用できると、95歳ぐらいまで貯金がもつ」という画面を見せて、資産運用の重要性を説きます。
   そして、最終的には、「数年以内に使用しない資金総額の40%を日本国債、30%程度を外債のファンド、30%程度をこの会社が進める投資信託で運用しましょう」という結論を導きます。Aさんも最後はその気になって「資産運用の大切さがわかりました、今まで投資というものはやったことがありませんでしたが、これからは投資について勉強して、5%以上の運用利回りが達成できるようにしたい。」というコメントを発していました。

   おそらく、これから数年間、今まで持ちつけたことのない大金を一時金としてもらってしまう退職者が大量発生することは事実でしょう。今まで資産運用の経験などまったくない方々が、大手金融機関のマニュアルで薦められるようなポートフォリオを一律に組まされて資産運用を始めたらどうなるか・・・・。おそらく手数料だけはがっぽりと取られた上で、想定した利回りでの運用は実現できないケースがほとんどではないでしょうか。しかも団塊世代にとっては、なけなしの退職金ですから、損失を被ってもその後労働所得でリカバリーすることは不可能です。損失を被ったとして金融機関を訴えようにもそこは「自己責任」です。
   よく言われることですが、投資資産のアロケーションは、年齢や財産構成によって見直さなくてはならないことは常識です。特に、退職後、年金以外の継続的な所得収入が期待できない高齢世帯は、資産運用において最も「安全性」を重視しなくてはならないケースです。ここでもし、金融機関が高利回り達成の切り札として自社系列のアクティブ型投資信託などを真っ先に薦めていたとするならば、私はその金融機関の経営姿勢を疑います。
ポートフォリオとしては、団塊世代の顧客が資産運用未経験であるならば、日本国債6割、外債3割、ノーロードインデックスファンド1割ぐらいからスタートさせ、まず、資産運用についてもっと多くのことを勉強するべきだとして、良書を読むことを薦めるべきだと思います。

   私は基本的にフィナンシャルプランナーという資格を信用していません。あまりに間口が広く、試験内容を見る限り、全ての金融商品について総花的で、レベルも高くないと思うからです。また、このような資格は、実務経験が必要不可欠です。最低でも5年程度、顧客資産の運用経験を積むことを資格取得の要件にすべきでしょう。
   そもそも、特定の金融機関に勤めるフィナンシャルプランナーに、資産運用に関する顧客サイドに立った助言を無料で求めること自体、無理があることは、顧客に前もって伝えるべきでしょう。(そんなことができるはずはありませんが、たばこの広告みたいな感じのものができたら、おしゃれでしょう。)

   早く実際に自らの資産運用に実績を残している方々が、本物の資産運用アドバイザーが独立系の会社を立上げ、会員だけの会費だけでビジネスが成立するようになる社会が来ることを切に祈ります。

   私自身はまず、こつこつとまじめに働いてきた団塊世代である父親の退職金運用について、できる限り知恵を絞ってあげたいと思っています。


Posted by cpainvestor at 08:11:21 | from category: c.投資雑感 | TrackBacks
Comments

平九郎:

今日は平九郎です。(^.^)

団塊世代の退職金は、金融機関が狙うと共に、詐欺師も狙っています。

最も本当に危険なのは、安心感のありすぎる郵貯の投信販売かもしれません。

資金を動かすと、何らかの方法でアラームが鳴る仕組みなども考える必要もあるかもしれませんね!

サントリーの有報情報有難う御座いました。

一つ利口になりました。

感謝します。m(__)m
(September 15, 2006 15:39:19)
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