November 06, 2006

新しいIPOのかたち・・・英会話会社の100億円Dealは成功するか(その2)

   
   以下は全て、株式会社GABAの「上場申請のための有価証券報告書」から得られる情報をもとに筆者が創作したフィクションのIPOインサイドストーリーですのでご注意下さい。


   問題は、どのように創業者利得を確保しながら、事業承継を図るかということになる。青野は、「できることなら、自分に経営をやらせて欲しい」と言っている。吉野も彼に事業を引き継いでもらいたい。ただ、彼にこれだけ大きくなってしまった自分の会社の株式を購入する財力はない。となると、スポンサーが必要となる。
スポンサーにはどこを使おうか?さすがにこれだけの会社の買収資金が出せるのは、ファンドしかないだろう。 ただ、どこかの会社への転売をすぐ考えるようなファンドでは、独立経営が維持できなくなる。とりあえず、独立経営を維持できる株式公開を最優先に考えてくれる国内有名どころのベンチャーキャピタルに話をもっていき、最も条件のいいパートナーを選ぶことにするか・・・。

   吉野と青野は、共につてを辿って、いくつかのベンチャーキャピタルに声をかけてみた。JAFCO、NIF、JAIC、SBI・・・想定される買収金額が金額だけに、思ったよりも皆慎重である。「複数社でシンジケートを組めば・・・」などと言ってくるところもあったが、大株主が増えれば増えるほど、利害調整がややこしくなる。後に残る会社の青野や従業員の皆のためにも、できることなら、1社単独で買い取ってくれるところ、更には、現経営陣、従業員に最大限のインセンティブを与えてくれるところを探したかった。
   最も良い条件を出してきたのは、NIFだった。「1社単独での全株の買い取り」+「経営陣へのインセンティブ付与」に同意してきたのだ。交渉相手はNIFに絞られた。

   問題は買収の価格である。平成15年9月期には売上38億、経常利益は14億をたたき出した会社である。前受金(英会話サービスの役務残)は14億あるが、おかげで借入はなく、キャッシュは26億もある。いったいいくらでこの会社を評価してくれるのか。株主は、吉野夫妻だけでなく、光通信の創業者、重田康光もいた。彼も納得させるだけの価格をつけてくれるかどうか・・・。

   NIF側は、監査法人と法律事務所に財務、法務のデューデリジェンスを提案し、吉野はこれを受け入れた。専門家による徹底した企業査定が行われ、NIF側がはじいてきた価格は、65億。いくら未上場のディスカウントやデューデリジェンスでの細かな指摘事項があったとは言え、キャッシュを20億以上持っている経常利益14億の会社の評価としては、あまりに低い。NOVAや学習塾などの同業他社のEV/EBITDA倍率を参考にしたというが、NOVAと一緒にされるとは、当社のビジネスをわかっていなさすぎる。「あまりに安すぎる。」これが吉野の心境だった。

つづく


Posted by cpainvestor at 00:34:42 | from category: i.IPO分析 | TrackBacks
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