November 21, 2006

残存者利益

   
   ここのところ急に寒くなってきました。皆さん風邪などひいていませんでしょうか。私の周りでも風邪引きが多くて大変です。同じ部屋で仕事をしていると必ず移りますから、少しでも風邪を引いている同僚を見つけると、マスクの強制着用を指示します。(笑)

   寒くなってくると、思い出す銘柄が2つあります。ダイニチ工業(5951) と、デンカ生研(4561) です。いずれも夏場に仕込んで冬場に売却するには、最適の季節銘柄です。(この戦略の有効性は、デンカ生研でより顕著なようですが。)

   ダイニチ工業は石油ファンヒーターで業界No.1の専業メーカーです。国内の石油ファンヒーターのマーケットは、買い替え需要が中心の完全な成熟マーケットですが、多くのライバルメーカーが、このマーケットの将来性に魅力を感じずに、この事業から撤退もしくは縮小しているため、結果として、ダイニチ工業は、大きなシェアと利益を稼いでいます。(昨年は、石油ファンヒーターの生みの親、三菱電機が撤退しました。)上半期と下半期の業績が著しく異なる会社の典型例ですが、さすが雪深い越後の国にある会社です。雪国のニーズを確実にとらえる、痒いところに手の届く製品を製造・販売することで、着実に成長しています。
   バリュー株としても、かなり有名で、私が投資をしていた頃はPBRが0.5倍を切っていたと思います。最近はだいぶ高くなりましたが、思い出深い銘柄です。寒くなるたびに「ダイニチのファンヒーター、今年も売れているだろうなあ」と連想してしまいます。ちなみに、私も昨年、自宅用に石油ファンヒーターを購入しましたが、もちろんダイニチを購入しました。(私の自宅の書斎は北側にあり、恐ろしく寒く、家では「北極」と言われています。電気ストーブ、カーペットでは、電気代が高くなる割に、一向に暖かくなりませんので、やむなく、灯油購入の手間はあっても、石油ファンヒーターを購入しました。)

   
   デンカ生研は、インフルエンザワクチンで業界大手の企業です。こちらも毎年インフルエンザが流行るたびに暴騰します。ヒトの不幸で儲けるのはなんとも皮肉で、製薬会社の宿命ではありますが、冬を代表する銘柄です。昨年は、ワクチン製造の失敗というメーカーとして決して行ってはならない大失態を演じたおかげで、株価は暴落しましたが・・・。
   インフルエンザワクチンも、かつて全国の小中学校でワクチンの予防接種が強制的に行われていた頃は魅力的なマーケットで、多くの競合企業がひしめきあっていたようですが、結局、「その年に流行りそうなインフルエンザを当てる」という不確実性があるワクチンの投与は、小中学校での強制接種にはなじまないとうお役所の決定が出たとたん、マーケットサイズは激減、多くの企業が撤退しました。そのマーケットでなんとか生き残っているうちに、働く社会人や高齢者向けのインフルエンザワクチンの任意接種が予想外に伸びてきて、現在では、デンカ生研はかなりの高収益企業となっており、電気化学工業グループの孝行息子となっています。(昨年のワクチン製造失敗の影響を除く)


   両社に共通するのは、季節銘柄だということだけではなく、共に成熟産業における「残存者利益」を存分に享受している企業であるというところです。ここで、「残存者利益」とは、飽和市場や衰退市場において、他社が相次いで事業撤退した後、耐え抜いた企業が残った市場をほぼ独占的に獲得し、利益を上げていることを意味します。


   「残り物には福がある」ということわざは、投資の世界でも真実のようです。個人的には、こういう成熟産業におけるトップシェア企業は、業界のイメージのせいで、割安に放置されていることも多いので、投資妙味があることも多く、大好きです。当然ながら、ダイニチ工業については、ウォッチ銘柄には加えています。

   それにしても、季節感すらも投資銘柄と結びつけて考えてしまうのは、ちょっと思考回路が偏りすぎかもしれません。こんなことをばかり考えていたら、また、嫁に相手にされなくなるのが落ちなので、今度の祭日は、家族サービスに徹しようと思います。


Posted by cpainvestor at 08:45:00 | from category: c.投資雑感 | TrackBacks
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