November 26, 2006

ビジネスオーナーになることのTAXメリットは更に向上。〜最近の税制改正論議から〜

   以下、NIKKEI NETから一部抜粋の上、転載です。

<留保金課税の撤廃>
自民党税制調査会の津島雄二会長は13日、日本経済新聞のインタビューで、2007年度税制改正で同族会社の内部留保金への追加課税制度の撤廃を検討する考えを明らかにした。中小企業活性化を税制面から支援する狙いだ。

<償却資産の全額損金算入を容認>
政府税制調査会(首相の諮問機関)は21日、2007年度税制改正答申の骨格を固めた。機械設備の減価償却制度をほぼ40年ぶりに見直すことを提言する。企業が投資しやすい環境を整えるのが狙いで、投資額の全額を現行の法定期間内で損金にできるようにする。

   以下、私見です。

   留保金課税とは、株主の親族など特殊な関係のある個人や法人の1グループが50%超の株式を持つ会社(同族会社)において、その留保所得(課税所得−法人税等−配当)が、一定額を超える部分について、通常の法人税とは別に、追加課税する制度です。(詳しくはこちら
   法人に対する課税の公平性だけを考えれば、一度所定の法人税を取った残りの所得に対して、それを「会社内部に残しすぎだ!」といって再度課税するわけですから、まさに儲かっていて、かつ、内部留保を厚くしようと考えている健全な法人にとっては、税金の二重取りとなる不公平なルールということになります。実際に、かつて私の持株であった平安レイサービスなどは、これで追加的な税負担がかなりの金額生じており、えらい迷惑な話です。
   しかしながら、このような税法のルールが生きていた背景としては、いわゆる個人会社(経営者=会社)において、会社内に所得を留保することにより、配当所得に関する企業オーナーの所得税負担を避けようという会社が多くあったことを意味します。実際留保金課税制度ができたころの高額所得者に対する所得税の税率は法人税率よりずっと高く、企業オーナーが「法人税を取られた上で、更に配当所得に関して高い税率の所得税を払うのはたまらない」と考えて留保したくなる気持ちがよくわかります。今回、この制度の廃止が議論される契機となったのは、以下の理由があるとされています。
○ そもそも法人税の二重取りである。
○ 法人税率(30%)と最高所得税率(37%)の乖離が小さくなってきている。
○ 配当を強制するような税制が、中小企業の財務基盤向上を阻害する可能性がある。

   上記のような理由から、これまでの税制改正のたびに少しずつ適用対象会社が絞られてきた経緯はあったにせよ、今年ついに、完全廃止が議論されるようになってきました。昨年も留保金課税制度による税収は約800億円あったそうですから、影響はそれなりに大きいです。


   減価償却資産の5%残存簿価の償却についても、そもそも、なぜ取得原価の5%相当額を、実際にその償却性資産の法定耐用年数終了後も、実際にモノを除売却するまで償却してはならないのか、ほとんど理屈がなかったわけですから、当然といえば、当然の変更であるといえます。ただ、95%償却済固定資産を沢山持っている老舗のメーカーなどには、この制度変更により、損金算入金額が増え、課税所得の圧縮を通じて節税できるわけですから、それなりに朗報でしょう。企業側としては、法定耐用年数そのものが実態と乖離しているものも多いわけですから、「残存簿価などとケチなことを言っていないで、法定耐用年数そのものの短縮化を行ってもらいたい」というのが本音かもしれません。

   いずれにせよ、この2つの法人課税制度の変更は、株主=経営者のオーナー企業経営者には、かなり有利な変更です。個人会社になるべく配当せずに財産を留保し(もちろん年度の課税所得に対する法人税はとられます)、これを翌年以降使用予定の経費枠として残すこともできます。また、償却固定資産の残存簿価の償却がOKとなったことで、個人会社の損金で落とせる金額(課税所得を圧縮できる金額)が増えます。
   個人企業経営者は、税務調査で指摘されない範囲で、できるだけ会社の経費で自分の生活コストを負担させていくことを、これまで以上に考えるようになるかもしれません。
   
   今回の税制改正の流れなどを見ていると、所得を完全に捕捉されるサラリーマンと、所得を捕捉されにくく、節税のアイデアが駆使できるビジネスオーナーの格差は益々広がっていく雰囲気がただよっています。

私も早く個人会社を設立しなければ・・・。(笑)


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   最近このブログの読者がコンスタントに500名/日を越えるようになってきました。ストレス解消の雑文日記として始めたものですが、読者の皆様の存在のおかげで、忙しい中でも時間を作って書き続ける元気がわいてくるようになりました。ありがとうございます。また、皆様の友人へのURLご紹介による読者数増加は、私のやる気に直結いたしますので、今後とも継続訪問とクチコミをよろしくお願いいたします。





Posted by cpainvestor at 00:15:02 | from category: d.会計税務トピック | TrackBacks
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