February 14, 2007

障害者の経済学



   ある、尊敬する先輩からのススメで、中島隆信著「障害者の経済学」(下図)を読みました。正直言って、この分野の私の知識は、ほとんど皆無に近い状態でしたので、障害者福祉の制度がどのようになっているのか、またそれが抱える問題点はどのようなものなのか、一般人にも非常に分かりやすく解説されている本で、好感を持ちました。
   「経済学」とつけるほど、経済学的な視点から書かれているわけではありませんが、非常にセンシティブな内容を、できるかぎり冷めた目線で客観的に捉えようという著者の試みは、これまでこの問題にあまり関心の無かった多くの読者が、この問題に興味を持つきっかけを提供してくれているように思います。この問題にほとんど関心のなかった私のような方にこそ読んで欲しい1冊だと思いました。

   著者自身も、重度の脳性マヒの息子さんがいらっしゃるそうで、この問題を研究対象にとりあげるには、多くの迷いがあったそうです。そうした中、実際に息子さんの進路を決めるために、多くの障害者施設を見学する過程において感じた疑問をきっかけに、ある意味、当事者意識から「吹っ切れて」この問題をできる限り客観的に研究してみようと思うようになったとのことです。

   著者も指摘していることですが、この著書を読み進めているうちに、実際にとりあげられている障害者をめぐる様々な問題点が、実は社会全体の問題点と多くの共通項を持っていることに気づかされます。障害があるために親から自立できない子供とその親の関係を分析してみると、実は、様々な親子関係にまつわる社会問題と根っこの部分が似ていたりするようです。

   取り扱っている内容がセンシティブな内容ですし、一般読者向けにこのような形で表現して良いものか、当然、賛否両論あるのだと思います。ただこの書籍を著した著者と、「会社四季報」だけではない東洋経済新報社の功績は評価できると思いました。

   なかなか自分ではこのような著作を自主的に購入することはなかったと思います。薦めて頂いた先輩に感謝です。

    



Posted by cpainvestor at 23:19:26 | from category: k.書評 | TrackBacks
Comments

rita:

いろんな法律の関係で企業でも障害者雇用について考えるようになりました。育成対応や与えられる仕事の制限から特例子会社を設立し企業集団としての基準を満たすケースが多いと思いますが、当社でも一般の採用に障害のある方を加えるようになりました。新入社員研修も一緒に行いますが昨年は初めての体験で対応も後手後手になり、本人には迷惑を掛けました。しかし感激したのは本人のやる気です。昨年は目の不自由な人でしたのでプレゼンデータを事前に送り、読み上げで全て頭に入れて他の人たちと同じかそれ以上のパフォーマンスを出してくれました。目が見えない分他の感性が磨かれていていろんなことを感じているので思考も豊かです。彼女たちのような人がもっと元気に活躍できるようになると良いと思います。障害があるからこれは出来ないと区切るのではなく、障害の度合いに応じて合う仕事を開拓していくという考えを持つべきなんだなと感じています。
障害の有無というより、育成・配置の基本思想の問題なのかもしれないですね。
(February 17, 2007 10:09:09)

cpainvestor:

rita様

 私も、本当に、そう思います。上記の書籍は本当にオススメです。
(February 22, 2007 00:31:34)
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