March 23, 2007

引き際

  
  4月からの新年度を迎えるにあたり、どの上場企業でも、役員人事にそわそわする季節ではないでしょうか。日経新聞にも、「新社長」が紹介される役員人事関連記事が増えてきました。

  新社長のキャリアは、投資先については、私も必ずチェックするようにしていますが、それと同じくらい注目するのは、旧社長の処遇です。最も多いのは、「代表権のある取締役会長」もしくは「代表権のない取締役会長」というものです。最近は、執行役員制度などを導入することで、「代表取締役会長」がCEO、「代表取締役社長」がCOOということで、むしろ、社長引退後のポストの印象が強かった「代表取締役会長」の方が、権限が強そうな会社もあります。社長の実力を年齢で判断するのはおかしいという批判もありますが、やはり70歳代の「代表取締役会長」が君臨しているのを見たりすると、やはりその会社に対する投資意欲は減退します。昔、三共の株を持っていたときには、長老の内紛が勃発して、ほとほと嫌気がさして売却したことがあります。「そんなことやっているから、メバロチン以降の大型商品が生まれないんだよ!」とYAHOO掲示板に文句を書きたくなりました。(笑)


  社長時代に文句の言われないような実績をあげている人ほど、その引き際は、難しいように思います。オーナー社長はもちろんのこと、サラリーマン社長であっても、まわりに「今すぐ辞めろ」という人はいないわけで、結局自分の判断次第ということになります。いわゆる「名経営者の時代」が長く続くほど、「名参謀」は育っても、「次代の名経営者」が育ちにくいとも言われています。これは、やはり、部下が皆、「上」の顔色を見て仕事をする文化が自然と育まれてしまうからかもしれません。

  「地方豪族企業」と呼ばれるような、社長が地方財界の名士となっているようなオーナー企業などに行くと、典型的な文鎮型組織であったりして、あまりに横の部門間連携がないことに驚かされます。重要案件は全て社長決裁なので、部長以下は思考停止状態になって、常に「社長が次にどう思うか」を気にして行動しているのが、外部の私でも、彼らの話を聞きながら議事録などを見ているだけで感じることができます。能力的には非常に優秀な部長さんだと思うのですが、「石田三成」タイプが多いのです。
  地方企業だと、なかなか次の就職先としての良いポストが見付からないため、入社時には、こういう状況に「違和感」を感じていても、それなりに優秀な人材がなんとか折り合いをつけて留まっていることも多いようにも思います。留まっているうちに、きっとその会社の文化に染まり、目端がきくので「石田三成」タイプになってしまうのかもしれません。

   こういう会社は、本当に「社長次第の会社だなあ」とよく思います。社長やその息子が「名君」であれば、意思決定も早いし、全社のまとまりが強いので実行も早いです。ただ、社長の経営判断力が落ちてくれば、誰の牽制もきかないので、逆回転するのも速いです。こういう会社を見ていると、組織のありようというのは、結局、「戦国時代から変わらないのではないか」と思ってしまったりもします。

  会社の本店所在地、有価証券報告書の役員構成、兼任状況、保有株比率などを見るだけで、このような地方豪族企業に該当すると、いろんな想像をめぐらせてしまうのは、「投資家の性」かもしれません。


  最近、クライアントの社長交代人事がリリースされました。中期事業計画発表のタイミングでの社長交代発表、旧社長は、平取締役となり、株主総会で退任ということでした。抜群の実績がある方だけに見事な引き際だと思いました。新社長以下のがんばりに期待したいと思います。


Posted by cpainvestor at 07:09:54 | from category: c.投資雑感 | TrackBacks
Comments
No comments yet
:

:

Trackbacks