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February 13, 2007

インデックス投資と個別株投資


(2)インデックス投資を勧めておいて、個別株投資をしているのはなぜか


   前回、盛んにインデックス投資を勧めておきながら、自分が個別株投資を中心に行っているのは、以下のような理由からです。

○ 企業分析のスキルを磨き、ミクロのビジネスを見る視点をより高めたい。

   公認会計士の職務と財務をベースにした企業分析のスキルのブラッシュアップは切っても切り離せない関係です。とはいえ、この職業の人間には、制度へのキャッチアップ(様々な会計基準や税法、会社法の改正に専門家としていち早くキャッチアップし、クライアントに説明できるようにすること)が、自分の価値の源泉、差別化ポイントだと思い、日夜様々な法制度のお勉強に熱心な学者タイプの方も多くいらっしゃいます。ご存知の方もいるとは思いますが、正直、私にはこういう生き方は無理です(笑)。自分の専門分野に関するキャッチアップは必要であるにしても、金融商品会計の細かい処理は、詳しい同僚に、税務の細かいところは税理士に、法律面のわからないところは弁護士に、電話して聞きます。その方が自分で調べるより圧倒的に早くて正確なので、「タダでちょっと質問できる各分野の専門家が何人いるか」の方が、「自分の知識をいかに増やすか」よりも重要だと思い、わりきっています。そのための投資と自分が彼らにGiveできるコンテンツのブラッシュアップは欠かさないつもりです。
   そうした中で、「自分の専門分野に関することで陳腐化しない知識はどんなものか」と考えた場合に、やはり残るのは、今のところ、会計監査や財務デューデリジェンスの経験で培った「様々な業種の財務に関する実践的知識・経験」とIPO関連業務の実務経験で培った「ビジネスの儲けの仕組みを分析する視点」なのだと思います。
   個別株投資のための自分なりの企業分析は、こうしたおそらく陳腐化しないであろう知識や考え方を継続的にブラッシュアップするのに最適な機会を提供してくれています。その意味で、趣味と仕事面の実益を兼ねた個別株投資を行っています。

○ リスク(不確実性)をゼロにするのではなく、これと折り合いながらマネージする術を、時間をかけて磨きたい。
   仕事で、いろんな大企業の失敗した投資案件の減損処理資料などを見ていて、「どうしてこのような意思決定がなされたのか?しかも、どうしてここまで先送りにされてきたのだろうか?」と疑問に思うことが多々あります。当然、事後の結果論で評価してしまうのは卑怯だとは思うのですが、そうは言っても必ず思うのは、「この案件の最終判断をした経営陣は、何割か自分の手金をつっこむ必要があったとしても、同じ意思決定をしただろうか?」ということです。終身雇用に安住して、自分の資産運用についてでさえ、リスクをとってまともに運用したことのない大企業エリートに、果たして数十億円以上の投資判断が容易にできるようになるものなのであろうか?という疑問です。
   金額は少なくても、20代で投資を始め、10年以上なんとか相場で生き残って壮年期を迎えた人と、資産運用のことなんてまったく考えず、壮年期を迎えた人では、まちがいなくリスクに対する感度とその対処能力に差が出てくると思います。この「リスクに対する感度」と「リスクへの対処能力」を磨くには、インデックス投資より、個別企業への投資が相対的に見て、より有効であるように思っています。

○ この国の個別企業を自分の意志で応援したい。
   インデックス派の中には、「既に経済全体が成熟していて、今後の生産人口の減少と共に衰退していく国の株にそんなに多くの割合を投資していること自体が疑問」という方もいらっしゃいます。アセットアロケーションの発想からすれば、それはそれでもっともな意見だとも思いますが、国内市場全体のパイが縮小する中でも、知恵を絞って愚直に経営改善や海外進出を進め、勝ち抜いている企業は、各業界に存在します。まだまだ日本は世界第二の経済規模を誇る国ですし、こういうミクロの視点での経営努力は、賞賛に値するはずです。自分なりにきちんとソロバンをはじいた上で、調査対象企業にそれなりの割安感があれば、ぜひ株式を購入して応援したいと思っています。インデックス投資では、分散効果は最大限享受できますが、こういう「個別企業に対する個人の意志」を基本的に反映させることができません。せっかく自己資金で投資をする以上、できる限り、より効率的に、かつ有意義に資金を使ってもらえるような企業に投資をしたいと思っています。その意味で国内の個別企業投資(しかも将来性があって事業構造がわかりやすい小型株)に軸足を置いています。もちろん、国内マーケットの企業の方が海外よりも圧倒的に知識、情報量が多く入手できるということも加味しています。

○ インデックスを上回った時の快感は何物にも代え難い。
   自分で個別株投資を始めてみて、初めて、常にインデックスのパフォーマンスと比較される「投資のプロ」と言われるファンドマネージャーの気持ちが理解できます(笑)。私は、四半期ベースで自分の投資成績を評価することなど考えてもいませんが、それでも年間を通じてインデックス(私はTOPIXを意識しています)を上回った時の快感は、何物にも代えがたいものがあります。「株式投資は最高の知的ゲーム」と言われる所以です。
   インデックスを上回る投資成績をあげようと考えると、やはり市場のバイアスを利用する方が効果的です。その意味で、時価総額300億以下の、機関投資家が参入できず、アナリストもほとんどカバーしていない新興市場の個別株は魅力的です。当面の間、特定少数の新興市場株式を長期保有するスタンスを中心とする投資を続けていきたいと思っています。

   
   以上のようなことから、インサイダー規制に抵触しないよう細心の注意を払わなくてはならないという制約はあるにせよ、個別株投資戦略は私にとって捨てがたいものです。「効率的市場仮説」を信奉する方からするとナンセンスなのかもしれませんが、この方針で今後もやっていこうと思っています。




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February 11, 2007

インデックス投資と個別株投資


(1)求む、欧州株ETF もしくはインデックスファンド

  何人かの投資家が書評を書いている藤沢数希「なぜプロの投資家がサルに負けるのか」を読みました。著者もあえて読書案内に参考書籍として挙げられているように、ベストセラーの「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門 」や、「ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理 」の内容を、より平易に、かつ著者独特のシニカルな語り口で味付けした書籍であるというような印象を受けました。「黄金の羽根」も最初に読んだときは面白かったですが、「なぜプロの投資家がサルに負けるのか」の方が、投資初心者には、より分かりやすいかもしれません。著者独特の容赦のない語り口が癇に障る方も中にはいらっしゃるかもしれませんが。上記に挙げた3つの書籍は、いずれも投資初心者、もしくは、資産運用に時間も手間もかけたくないという方にはオススメの良書だと思います。

   「効率的市場仮説」を信じるかどうか、読者の皆さんの考え方によって異なるでしょうが、私自身は、「ある程度のバイアスの存在は否定できないものの、かなりの程度、効率的ではある」というスタンスです。

   ですから、私が、投資初心者から資産運用のアドバイスを頼まれた時、リスク資産については、まず、最初に取引コストが安く、保有コストも安い国内株のインデックスファンドか、ETFなどを勧めます。

   営利第一主義の金融機関はともかくとして、一応、まだ国営っぽくて、妙な安心感がある郵便局などは、その運用相談マニュアルで、まず株式投信は、最初に手数料の安い上記インデックスファンドを勧めておくのが無難だとは思うのですが、そのようにはなっていないようです。(笑)藤沢氏も書かれていますが、3年以上続けてインデックスに勝ち続けるアクティブファンドなど、極めて少数なのですから、投資信託を買うなら、手数料の安いインデックスファンドに投資をしておいた方が良いと私も思います。

   海外への分散投資を考える場合にも、海外のインデックスファンドやETFへの投資は、最もコストパフォーマンスが良く有効な手法だと思います。外国株の個別株投資にはかなりリスクも高く、特に外国語にハンディキャップがある場合には分析にも時間を要するはずで、インデックスファンドに投資をしておくという考えは、もっとも無難な考えだと思います。(私自身も中国株と米国株のインデックスファンド、ETFは少し持っています。)中国株や、米国株のインデックスファンドや、ETFは、日本のインターネット証券でも買えるのですが、世界市場の重要な一角である欧州株だけはどうしても良いものが見付かりません。早く、どこかのインターネット証券が欧州株のETFやインデックスファンドを販売してくれることを切に望みます。(どなたか、欧州株のインデックスファンドに近い商品が日本のインターネット証券で買えるようなことがあれば、教えてください。)

   なお、インデックスファンドの有用性については、rennyさんがずっとテーマとして掲げられて啓蒙活動をしていますので、そちらとそのリンク先を参照して下さい。

   それでは、私がなぜ、個別株中心の運用なのかについては、次回記載します。



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