November 14, 2006

「中国」と「米国」を知る道標

   
   現在、私は、日本株を中心に、中国株、米国株によりポートフォリオを組んでいます。個別株の運用が中心ですが、前々から、中国と米国については、大切な自己資金を投下している以上、当該国のBackground Informationを体系的に知りたいと考えていました。これまで両国については、出張などで訪問した印象のみで、漠然としたイメージを持っていただけでしたが、2冊の良書に出会えたことで、「ざっくり」とですが、両国のイメージが以前よりクリアになりました。

   (香港・台湾を除く)中国0.45、米国0.41、日本0.25、2004年版の世界開発銀行が調べたジニ係数のデータです。ジニ係数は、所得分配の不平等さを測る指標で1に近づくほど、富の偏在が著しく、所得格差が大きくなります。このデータを見る限り、中国と米国は、日本の比ではない格差社会であると考えられます。
   中国は今まさに大きな発展を遂げようとしている躍進中の国であり、米国は既に世界の覇権国ですが、以下の2冊の書籍を読むことで、日本とは比較にならない格差社会を生み出すような共通点があることに気づきました。
   「特権階級から貧困層への所得の再分配機能が日本と比較すると相対的に機能していない」、「レベルの低い公教育が階層の固定化に拍車をかけている」というポイントです。
 
   杉本信行著「大地の咆哮」(左下)は、チャイナスクールと呼ばれる外務省内の中国専門家であった元外交官が、現代中国の光と闇を、中国の近現代史を紐解きながら、解説しています。戦後の日中関係の再構築の過程に外交官という立場で立ち会ってきた筆者ならではの視点は、非常に鋭く、「また日中関係の安定的な発展が国益にかなう」という信念が存分に伝わってくる内容でした。杉本氏は、末期ガンとの闘病の中、この本を世に出し、そして旅立たれました。ご冥福を祈ります。この著書の中で印象的だったのは、都市住民と農村住民のどうにも埋めることのできない激しい経済環境格差です。この格差がこのまま放置され続けるならば、今の中国の統治体制は到底維持できないだろうという印象を受けました。外交官ならではの視点が光る良書であり、著者がこの世に自分が体得した「知恵」をなんとか残したいという気迫が伝わってきます。この分野に興味がある方はぜひどうぞ。

   小林由美著「超格差社会 アメリカの真実」(右下)は在米26年の経営コンサルタント、小林氏が記した「米国社会の構造解説書」とも言うべき書籍です。タイトルはセールスを考慮したセンセーショナルなものとなっていますが、内容は、日本人コンサルタントならではのロジカルかつ、第三者的な視点で米国社会の構造を淡々と解説しています。著者自身もあくまで自分の著書は「一面の切り口に過ぎない」旨を注意喚起してはいますが、米国在住、在勤経験がない私にとっては、米国に関する新しい知識、視点を得ることができました。「大地の咆哮」の後にこの書籍を読んだことで、中米両国の比較しながら読み進めることができたのも理解を助けました。少し硬い知識本も読んでみたいという方はどうぞ。

      
   いずれにしても、繰り返しになりますが、両書籍に中米両国の事例を見て、公教育のレベル低下は、所得の階層化に拍車をかけることは、改めて強く認識しました。「公立学校の教育だけでも公立大学に進学できる教育レベルの死守」を改めてわが国政府のお願いしたいところです。


   


00:53:11 | cpainvestor | | TrackBacks