April 12, 2006

適時開示の要請と新興企業管理部門の脆弱性

以下日経記事より抜粋。
「東京証券取引所は上場企業に対し、期末から45日以内に決算発表をするよう要請する方針だ。2007年3月期決算からの適用を目指す。」
年間150社のIPOが実現している現状からすると、毎年新たに年間150人の上場企業CFOを務められる人材が必要となり、最低300人のディスクロージャーを熟知した高スキルな経理財務マネージャーが必要となる。毎年のように変更がある企業会計制度にキャッチアップしながら、四半期ごとに決算内容を各種注記事項も含めて開示することは容易ではない。IPOまではコンサルティング会社の支援も得られるが、IPO後は、独力での四半期ごとの決算発表はまったなしである。公認会計士のチェックもあるが、ディスクロージャーの第一義的な責任は会社にある。
東証の言う「45日ルール」に沿った決算開示、業績予想ができるかどうかは、経営者の管理部門の重要性に関する認識の強さにかかっている。
管理部門というと、社内でもとかくコストセンターと見られがちで、高スペック、高報酬の人材を置くことに難色を示す経営者も多い。特にIPOしたばかりのベンチャーでは、売上に直結しないコストは少しでも節約したいと思うのが通常である。しかしながら、管理部門の重要性を認識しないまま公開すると、中長期的には、必ず痛い目に合う。
?業績に勢いがあるうちに、連日連夜の徹夜作業に近い形で公開する。
?公開と同時に、疲弊感から管理部門の要職者が退職する。
?業績の先行管理能力が備わっていないため、経営者の打ち手がいったん外れると、業績予想の修正を何度も出すはめになる。
?投資家は失望し、株価が暴落する。
?新たな資金調達に制約がかかり、業績が停滞する。
?業績低迷が深刻化した結果、粉飾リスクも高まる。
自分が投資家だとすると、多少決算を上ぶれさせる、あるいは業績に対して影響のない事業提携などのプレスリリースを発表する余裕があるならば、管理部門に、しっかりとそれなりのお金をかけて欲しい。特に銀行、証券出身の口だけが達者で手が動かないCFOではなく、現場で実際のコントロールをしている中堅管理職クラスにかけて欲しい。管理部門の脆弱なまま公開する会社が多いと思われる現状は非常に不安である。こういった会社は、経験則上、次の不況が来た場合、ズタズタになることが多い。
日本の個人投資家を守るためにも、特に新興上場企業に対して、管理部門の強化を切に願いたい。経営における将来予測の基本は、「結果オーライ」ではなく、「No Surprise」であるはずである。


01:05:49 | cpainvestor | | TrackBacks