October 01, 2007

組織と個人の狭間で

  
  新しい組織に属することになって、驚くことはいくつもありますが、正直つらいのは、コンプライアンスが非常に厳しいことです。契約書は雛形の文言を少しでもいじれば、長い時間のかかるコンプライアンス部門のチェックが入りますし、仕事の取り方一つとっても、根堀り葉堀り聞かれることも多いです。特に、これまでのお客様との属人的な関係で頂いていた仕事を新しく契約書に細かく落とし込んだりすると、仕事を始めるまでに膨大な時間がかかります。社内のコンプライアンス部門とお客様の間で、右往左往して1日が終わってしまうことも多々あります。

  コンプライアンス部門の権限が強いということは、会社の順法精神の表れで、「組織防衛本能が高い」という意味でも評価すべきことなのだと思います。ただ、こういった調整作業に多くの時間が忙殺されるようになると、「それならこんな仕事は断った方がいい。どうせしばらく給料は変わらないんだろうから。」という気持ちがふつふつと沸いてきます。

  こうやって、ここにいる方々は皆、しばらくすると野生の牙を抜かれ、飼いならされていくのかなとも思います。飼いならされて、与えられた餌(看板だけで来る仕事)だけを食べて(要領よくこなして)生きていく方がどれだけラクなことかと思います。

  ただ、「餌は自ら取ってきてナンボ」の環境で育った人間としては、このカルチャーにものすごい抵抗感があるのと同時に、「梯子を外された時(組織が消滅した時)の恐怖感」を拭い去ることができません。環境は常に変化している以上、「永遠に続く組織」などありえないわけで、「個としての力」を磨くことを犠牲にしてまで、組織に完全に依存して生きるという選択肢は、私にはどうしても取ることができません。

  なるべくベクトル感は合わせようと努力をしても、時に組織と個人はコンフリクトを起こします。その時、どちらを選ぶかは、とても難しい選択なのだと思います。たとえ小さな仕事であっても、「自分に名指しで仕事が頂ける」というお客様の評価を最も大切にしたいと私は思います。でも組織からは、「そんな小さな余計な仕事など引き受けず、目の前にある無個性の大きな仕事をこなせ」という指示を受けます。このジレンマの中で悩むことが最近は以前よりもとても多くなりました。

  ただ、一方で、実際に営業をこなしてきた経験から、「看板の重要性」、「組織の情報優位性」についても、痛いほど理解しているつもりです。大組織にいるからこそ得られる情報・ノウハウ・ブランド・経験・販売チャネルは、やはり非常に魅力的です。「3年経ってもまったく陳腐化しないだけの本物のスキル、販売チャネル等を自分自身が既に構築できているか?」と問われれば、今の段階ではやはり「No」なのだと思います。また、「本当に自分の代わりがいないほどのサービスの差別化ができているのか?」と問われれば、それも「No」なのだと思います。

  心は未だ「野武士」のつもりなのですが、自分でも気がつかないうちに、いつのまにか「江戸時代の旗本」のようになってしまいそうな自分に、恐怖感を感じる今日この頃です。せめて「野武士」の仲間がもう少しいたらと思います。


  まったく難しい問題です。


23:15:51 | cpainvestor | | TrackBacks