February 06, 2007

「動機は善か」

   
   日経ビジネス06年2月5日号の記事にオールアバウトの創業者、江幡哲也氏の記事がありました。この記事の中で印象的だったのが、江幡氏の座右の銘「動機は善か」でした。

   江幡氏が当初リクルートの社内ベンチャーとしてオールアバウトを創業した時の動機は、「専門家、もしくは業界側しか持っていない情報をオープンにすることで、消費者が不利益を被らないようにしたい。」であったそうです。ネットの力を利用して専門家の知識を一般人にタイムリーに橋渡しするアイデアは、既に米国で事業化されていました。米国アバウト・ドットコムとの合弁企業としてスタートしたオールアバウトは、2005年9月、ジャスダック市場に上場しています。


   ベンチャーの上場支援の仕事をしていて一番難しいのが「経営者の誠実性をどう判断するか」というところです。そもそも私ごとき若輩者が「経営者の誠実性」なぞ判断する資格はないとも思うのですが、上場後も会計監査クライアントとして、永いお付き合いをしていくことを想定した場合、「経営者の不誠実」は私達にとって「命取り」になります。

   私もベンチャー支援の仕事をはじめた頃は、社長がマスコミにもよくでる夢想家、業績もそこそこ良く、ビジネスモデルが非常に面白いということであれば、「これはダイヤモンドを見つけたのかもしれない」などと思い、仕事をどんどん引き受けていました。ただ、こういう破竹の勢いで成長している会社に限って、本当に自分たちのやり方に自信を持っていますから、私達のアドバイスにはなかなか耳を傾けて頂けないことも多いです。それでも、なんとかこういう会社を騙し騙し形式だけ整えながら上場させたりすると、上場後にポツンと残された担当会計士が本当に苦労します。

   IPOコンサルタントも、ベンチャーキャピタルも、主幹事証券会社も、下手をすると上場請負人的なCFOまでもが、上場後しばらくすると、去っていきます。「オカネだけの関係」は集まるときも早いですが、去っていくのも早いです。(特定の業界全体をひとくくりで考えるのは、決して良くないとは思いますが、従業員の離職率が高く、しょっちゅう役員が変わるような会社、やはりどんなにビジネスモデルや数字が魅力的でも、自分の信念で投資をしない方がいいように思います。)

   「動機は善か」という言葉、とても重いと思います。「動機が善」であり、苦しくても最初に立てた軸を曲げなければ、必ず支援者が現れるような気がします。私も肝に銘じたいと思います。


23:31:18 | cpainvestor | | TrackBacks