March 17, 2007

ホリエモン実刑判決に思う


  ホリエモン裁判の地裁判決は、懲役2年6ヶ月の実刑判決でした。執行猶予がつくかどうかが一つの焦点だったのだと思いますが、つきませんでした。粉飾決算は通常、赤字を黒字と偽り、配当可能利益がないのに配当したということで「違法配当」などの会社法違反に問われることが多いのですが(会社法963条)、今回は、偽計・風説の流布、有価証券報告書の虚偽記載という証券取引法違反を問われました。証券取引法の刑事罰としては、かなりの厳罰ではないかと思います。

  複数のダミーの投資事業組合を使った自社株取得とその売却による利益の還流、売上計上というスキームは、「個別の取引ごとに見ると、資金移動の裏づけもあり合法だが、全体としてつなげて見ると一つの違法なカラクリの一環である」という取引の典型として、今後も永く語り継がれるような気がします。

  当初のライブドアのプレスリリースを読んだ時は、私も何がどうなっているのかがピンときませんでした。その後、次々に検察がリークする情報をつなぎあわせて、はじめて「要は、ライブドアが自社株券というニセ札を刷って、これを市場で売却することで売上、利益を上げていたのだな」というカラクリがわかりました。「非常に手の込んだ新しい粉飾手法」としてマスコミも大々的に特集しました。私自身は、逆に「売上、利益に計上はしていないものの、風説の流布まがいのことをして高株価での時価発行増資をしている会社も本質的には同じではないか・・・」と思ってしまいましたが。
 
  判決では裁判長が「堀江氏にあこがれ、働いてためた金でライブドア株を買い、今も大切に持っている」という個人株主のエピソードを引き合いに出して、堀江氏に自省を促したそうです。堀江氏は即日控訴したようですが。
 


  新興市場への上場基準がどんどんゆるくなり、毎年数百社の玉石混交のワンアイデア上場企業が誕生している昨今では、ライブドアを罰したとしても、このような不正会計事例がなくなることはないように思います。会計監査を専門に担当している第一線の会計士は、実質的に1万人もいないかもしれません。一方で上場企業は3,700社、現在上場予備軍として監査対象となっている会社も入れると、5,000社程度はあると思います。インフラは脆弱です。

  このような状況では、監督官庁の取締りや、会計監査だけに期待するのは限界があります。結局のところ、投資家自身が勉強を続け、分散投資を基本におきながら、少なくとも「明らかに怪しい会社」「明らかに割高な会社」への投資を避けていくことが、自己防衛につながるのだと思います。
 
  
  やはり、「マスコミにとりあげられている有名な会社だから」ということで、多くの個人投資家が「既に明らかに割高だった」ライブドアに多額の集中投資をしてしまっていたという現状そのものを変えていかないといけないのだと思います。その意味では、「情報開示の徹底」と「それを深読みできる成熟した投資家の大量育成」こそが、まわり道かもしれませんが、資本市場の浄化のための王道であるように思います。

  私自身、非常に微力ではありますが、「成熟した投資家」を一人でも多く増やすために、役に立つと思われる知恵を、今後もこのブログの読者の皆さんに、提供できたらと思っています。

  毎日訪れてくれている700〜800人の読者の皆様から、私も継続する元気をもらっています。「粉飾事例研究」も再開しなくてはいけませんね。


15:45:55 | cpainvestor | | TrackBacks