July 05, 2007

二枚舌


  先日、久しぶりに、外資系の会社をいくつかハシゴしている元同僚と食事をしました。この方は、私の事務所を皮切りに外資系の会社のFinanceのポジションをいくつか渡り歩いています。本人は否定していますが、「どんな状況に追い込まれても自分は食っていく」という発想のもと、キャリア開発には余念のない印象を受けます。当然ながら、語学は私のレベルでは全く及ばず、昔テレコンでかわりに通訳してもらったことがあります(笑)。

  要約すると、以下のような話をしてくれました。


○ 日本人は、島国根性で、ドメスティックなコミュニケーションスキルが海外でも通用すると思っている(特に男性)が、それは幻想である。それが通用しないとなると、「だから外資系は嫌だ」とかいった主張になるが、それでは、いつまでたっても状況は改善しないし、もうそんなことを言ってられる場合ではない。

○ グローバル企業における中国人や、インド人の中間管理職は、ロジカルかつクレバーで、かつ出世に対しても野心的で、常に競合他社のポジションと現在の待遇を比較しながら仕事をしている。並の日本人では、彼らの強烈なハングリーさに、太刀打ちできないことを日々実感する。

○ グローバル企業で生き抜くためには、表向き、会社のメソトロジーに従いながらも、数字で結果を出して、裏では、なんとか自分の主張を認めさせるといった「二枚舌」の発想が必要不可欠である。「誰でも代わりができるといった仕組みで物事をまわしていく」という発想は、外資系の方が進んでいる以上、それを所与のものとして受け入れながら、「自分のポジションをどう確保するか」を常に考えてキャリア開発を考えなくてはならない。

○ 日本国内において、派遣社員を増やすのは害悪である。近年の空前の好景気と日本語という「参入障壁」がもうしばらくあるおかげで、9時−5時の責任感の伴わない仕事が今後も継続するといった安心感を彼女達に与えている。同一の単純作業を長期間担当する派遣社員は、現場のオペレーションに精通するため、転職組や異動が多い正社員が彼女達に遠慮しはじめ、「私達がいるから現場がまわっているのだ」と勘違いし始めるお局様が大量発生する。会社の利益と自分の利益が全く一致しない彼女達が増殖するのは、会社にとっても中長期的にマイナスであるし、彼女たちにとっても、しばらくの間、まったく危機意識を感じさせない分、不幸である。シェアードサービスセンターの設立などを通じて、単純作業は、確実に賃金の安い国のよりハングリーで優秀な人材に流れていく。この流れはもう止まらない。日本とて例外ではない。多くの日本人はこのことに早く気づくべきだ。


  「外資系の金儲けに対する貪欲さにうんざりすることは多々ある」と言いつつも、「それを受け入れて、二枚舌で生き残るタフネスが必要だ」とするこの方の主張には、かつては、似た環境に接することも多かった人間として、同意できる部分がかなりありました。

  「君は、最近、浪花節的なドメスティック発想が多くなりすぎで、切れ味が鈍くなったのでは?」というニュアンスの指摘に、思わず黙る私・・・。久しぶりに異文化的刺激を受けました。「危機意識」はそれなりに持っているつもりですが、「常に主張しなくてはいけない環境」って、自分にはやはり長くは続かないような気もします。バランスが難しいです。

  外資系勤務の方、サバイバル術に関するご意見をお待ちしております。


Posted by cpainvestor at 01:23:56 | from category: g.その他ビジネスの話題 | TrackBacks
Comments

名無し:

日本がいつも外国に合わすだけでなく、外国が日本に合わせるように考えれば??

偉そうな事を言う人に限って、すでに外人の奴隷なんだよね。日本の文化は駄目だ、外国の文化が優れているの一点張り。いろいろ、意識改革の事を言ってるけれど結局自分自身が強迫観念に囚われてるような。

グローバルなんだkらお互いの文化を尊重しあえば良いのに。

日本の中にいるんだから、米国人が米国人であるように(といっても、最近の米国は多人種化が進んで、文化も多種多様らしいけど)日本人は日本人で良いんだよ。

スーパーのレジ打ちやライン作業の人にグローバルな視点を持てと言うほうが無理だし、だれでもブランドスーツにブランドシューズを身に着けて会社を渡り歩く能力が身に付くわけが無い。不可能。人間には身分相応の仕事って物があるんだよ。なんでも平等ってのが間違っていて、そもそも人間は生まれながらに格差があり、不平等なんだよ。もし、優れた能力があり、それを磨く機会や発揮する機会を与えられたなら、その幸運に感謝するべきだ。
(July 17, 2007 20:11:23)

cpainvestor:

名無し様

その意見、よくわかります。
「外人への奴隷感」確かにあるような気も致します。

 ただ、私の場合、最近は日系のおつきあいが多いので、たまにこういう外資バリバリの方の意見を聞くと刺激的だったので、少し書いてみました。

また、ご意見、ご感想、お待ちしております。
(July 18, 2007 01:58:08)

Consultant:

こんにちは。渋谷のコンサルタント@元外資系です。

サバイバルの本質は「ポジショニング」にあると思います。これは、企業でも個人でも、はたまた国家でも変わらないのではないかというのが僕の持論です。

つまり、サバイバルできるポジションを見つけ出し、自分のドメインを定義する力が個人や企業には求められているということです。

外資系でキャリアを磨いている人たちというのは、徹底した自己主張で自分の社内ポジションを作り上げ、上司の覚えめでたく出世していくことに生きがいを感じている人が多いような気がします。
(かく言う私も、20代の頃は、Japan Breakaway Strategyという大げさな名前のついた自社の中期経営計画を創り上げ、外人にプレゼンしまくって目立つみたいな仕事を華々しいと感じていました。今となっては恥ずかしい思い出です。)

起業してから思うのは、ビジネスパーソンや企業にとって、ポジションというのは常に顧客を向いたものでなければならないということです。顧客が企業やそこで働く人たちの生殺与奪の一切を握っているのですから。

そういうことを考えてみると、cpainvestorさんは「CFOのいないベンチャー企業から頼りにされる、ビジネスモデルを知り尽くしたCPA」という最高のポジショニングを獲得できると思います。

マクロに考えてみると、この10年で農業の支援に国家予算として40兆円あまりが投入されていますが、ベンチャー育成や支援に回ってきたのは1兆円に及びません。

リアルに見えます。cpainvestorさんのような人材が全く足りず、大量に立ち上がったベンチャー企業が困っている未来が・・・。

徒然な感じですみません。。。。
(July 26, 2007 23:46:25)

dd:

こういう貪欲でやり手な感じの話は刺激的で魅力的なんですよね。
でも、結局は自分が本当に良いと思うことを本に世を渡っていくしかないですよ。
昔と違って暴君に殺されるわけでもないんですから楽なもんです。

道は近きに在り。而るに諸を遠きに求む。
事は易きに在り。而るに諸を難きに求む。

一番の競争相手は自分自身です。
(July 27, 2007 00:13:59)

cpainvestor:

渋谷のコンサルタント様

 元外資系ならではのご意見と今の立場を踏まえた知見、ありがとうございます。
私のことは「ほめ殺し」でしょうか?

 あなたにお会いして、大きな刺激を受けた自分がいます。私も一つ一つの仕事をおろそかにせず、「当たり前のことをばかにせず、ちゃんとやる」会計士になりたいと思います。

 また、お会いできるのを楽しみにしています。私でお役に立てることがございましたら、いつでもご連絡くださいませ。
(August 02, 2007 22:39:38)

cpainvestor:

dd様

コメントありがとうございます。

 「一番の競争相手は自分自身」重い言葉ですが、多くの一流アスリートも同じようなことをいう方が多いですよね。

肝に銘じたいと思います。

 
(August 02, 2007 22:41:23)
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