February 25, 2007

Don't confuse your brain with a bull market.


   日銀が利上げを決定したにも関わらず、先週末の日本の株価は好調に推移しました。経済学の理論では、金利の上昇は、株価に対してマイナスの影響を与えるはずですが(少なくとも私は大学でそう習いました)、「逆にこれでしばらく金利は上げられないだろう」という「買い安心感」が広がったので株価が上昇したというのが、有識者の後講釈です。

   日本の株価以上に中国香港市場の株価も好調です。米国市場も昨年末以来の好調は持続しているようですから、世界市場全体の株高傾向が続いているようです。

   これだけ株価が堅調になってくると、昨年のライブドアショックのように何をきっかけに崩れるかわかりませんので、逆に投資の意思決定に関しては、「これまで以上に慎重な判断をしなくてはならない。」というのが、過去7年間の私の運用経験から得た教訓です。ただ、一方で「相場は爛熟期が一番おいしい」というのもよく言われることです。

    既に、マスコミも報じていますが、2007年3月期の企業業績は、全般的に好調のようです。米国及びBRICS経済が好調である上、先進国の中で相対的に低い金利、円安などの追い風もあって、特に輸出企業が好調です。堅調な企業業績は、各企業に潤沢なキャッシュフローをもたらしますから、企業の新たな投資意欲が高まります。これまで、そういった投資意欲の行き先は、主に「設備投資」を指しましたが、今回の好景気では、「M&A等の事業投資」もこれまでにないほどに盛況となっているのはないでしょうか。大きいものから小さいものまで、水面下では、多くの案件が動いています。私がこの仕事を始めた頃に一兵卒の足軽として参加した大型のM&A案件は、圧倒的に海外企業・ファンドによる日本の業績不振会社の買収というものが多かったですが、最近は、国内企業同士のものが非常に多いです。おかげで英語のストレスからは、解消されております。(笑)

   景気が良くなり、資金も潤沢となってくると、美味しい案件はどんどん競争が激しくなるので取得価格が上昇し、その結果、どうしても取得者側の投資意思決定の判断が甘くなります。(売却者側にとっては美味しい局面です。)これは、企業も個人も同じだと思います。今日のタイトルは、Wall Streetに伝わる格言です。「強気相場の影響であるにもかかわらず、それを自分の実力であると過信するな」ぐらいに意訳しておくと、より皆さんの頭に残りやすいのではないでしょうか。

   私はマクロ的な相場感はよくわかりませんが、長年投資の世界で生き抜いてこられた平九郎さんの相場観は参考にしています。



   年始に、朝日ネットという会社を新規購入して以来、全くポートフォリオをいじっていません。現状の運用成績は悪くない上、公私共に忙しく、ほとんど銘柄研究をする時間がないという理由ももちろんあります。ただ、さすがにこれだけ強気相場になってくると、ここのところは、個々の保有銘柄について、「現時点における定量的な評価、及び直近の業績予想の伸びと比較しても、明らかに割高となってきたもの」について、いつEXITすべきか、ということを中心に考えるようになっています。目下最優先売却候補は、この企業なのですが…。来週あたり、まずは中国株から、少しアクションを起こそうかと思っています。


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February 22, 2007

GIFT


   以前、企業研修の仕事も時々引き受けていると書きましたが、昨日、あるお客様から、ある企業研修サービスに関するアンケート結果を頂きました。

   概ね良好な評価に胸をなでおろすと共に、「本を読んでもよく分からなかったことがすっと頭に入ってきた。」、「2日間があっという間だった。」「もっとこの分野を勉強したいので専門書を教えて欲しい」「講師のパーソナリティにも好感が持てる」などという受講者からのポジティブなフィードバックを頂き、この仕事を引き受けて本当に良かったと思いました。私にとっては、会社の評価などよりも、お客様からの評価の方が何十倍もうれしいです。良い贈り物を頂戴しました。(ただ、このために週末労働をしてしまいました。妻よ、息子達よ、申しわけない。罪滅ぼしはするので許してください。)

   お金を頂いてサービスを提供するプロフェッショナルとして、自分が最善を尽くすのは当然だと思います。ただ、この仕事も決して私一人でできるものではありません。私を継続して指名してくれているお客様、その継続開催を支持してくれた歴代の受講生、一緒に手伝って頂ける尊敬すべきプロ講師、窓口となってくれているサポートの方など、いろいろな方の支えがあって継続できているものです。本当に感謝です。

   たとえ、どんなに環境が変わろうとも、このような仕事だけは、私を指名してくれるお客様がいる限り、続けていきたいと改めて思いました。こういう機会があるおかげで、私も毎回、必死に勉強しますし、成長できますし、充実感も得られます。

   講義の開始に先立って、主催者から受講者に示された「電通鬼十則」、私も印象に残ったので、書き留めて置きます。

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取組め! 小さな仕事は己を小さくする。
4. 難しい仕事を狙え! そして成し遂げるところに進歩がある。
5. 取組んだら放すな! 殺されても放すな! 目的を完遂するまでは...
6. 周囲を引きずり回せ! 引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる。
7. 計画を持て! 長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て! 自信が無いから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一部の隙もあってはならぬ! サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな! 摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈未練になる。



   ちなみに、上記は電通の中興の祖と言われる吉田秀雄氏が書き記したもので、彼の直筆のレプリカがアドミュージアム東京にて購入できるとのことで、先日、早速買いに行ってしまいました。

    思いの他、紙が大きく、毛筆が読みにくいので、自宅の机の横に張るのを躊躇しております。


00:27:22 | cpainvestor | | TrackBacks

February 15, 2007

「氷山の一角」でないことを祈ります

   

   先にたーちゃんさんに書かれてしまった感もありますが、以下、NIKKEI NETより抜粋です。

   証券取引等監視委員会は14日、金融庁に対し不動産投資信託(REIT)運用のダヴィンチ・セレクト(東京・中央)を行政処分するよう勧告した。グループ内のファンドが保有する不動産を系列REITに割高な価格で取得させ、投資家の利益を損ねた。

   証券取引等監視委員会もようやくひとつ尻尾を掴んだというところでしょうか。ダヴィンチ・アドバイザーズ系列の私募ファンドから、運用を受託しているDAオフィス投資法人(REIT)が物件を購入する際の価格が、明らかに割高であったとして、ダヴィンチ・セレクトに業務停止の行政処分を勧告しています。
   割高に購入させるための手法としては、当該物件が賃借人と契約する際のフリーレントを加味しない、既に受領済みの敷金償却収入を加味するなどの手口で物件の予定収入を増やし、同時に水道光熱費や建物維持管理費の過小計上などにより予定支出を減らすことで、物件の想定純収入を水増しし、結果として物件価格を吊り上げるというもののようです。誤解のないように付け加えておきますが、会社側からのプレスリリースでは、あくまで悪意はないような文面になっています。

   不動産は、相対取引が基本ですので、妥当な値段がいくらなのかは極めて分かりにくい代物です。その上、不動産鑑定士が作成する鑑定価格は、計算前提を少し変えれば全く違う数字が出てきますので、参考価格程度の指標にしかならないはずです。実際、同じ物件に関して同じ資料を渡しても、出てくる鑑定価格が異なるのが不動産鑑定の世界ですし、どれを採用するかは、取引当事者の自由です(笑)。(私は別に不動産鑑定士が悪いとは思っていませんので、関係者の方誤解のないようお願い致します。)

   そもそも、自社グループの中に抱えていた物件を運用受託するREITに売却するなどという行為は、普通に考えても、コンフリクト(自らの息のかかったREITに高値で売却すればするほど自社に利益が出る)が生じます。ただ、最近のREITバブルでこういった系列グループ間、親密取引先間の不動産物件のキャッチボールは頻繁に見られるようになっていますから、そろそろ「危険な兆候」だと思います。

   これまで何度か指摘してきましたが、このようなビジネスモデルそのものに投資家の利益を害するようなコンフリクトが生じている企業は、やはり投資するのは危険だと思います。これが、私が不動産流動化銘柄に最後まで手を出せなかった理由です。

   氷山の一角ではないことを祈ります。



P.S.
   どうでも良いニュースなのかもしれませんが、やはりお二方は公私共に仲睦まじい状態だったのですね。妙に納得がいきました。それにしても、婚姻届と大量保有報告書を同時に提出するカップルとはまたオシャレです。

  インデックス落合会長と小川取締役が入籍・株式みなし共同保有
 インデックス・ホールディングスの落合正美会長は14日、関東財務局に大量保有報告書を提出し、落合(旧姓小川)善美取締役が同社株式のみなし共同保有者になったと公表した。両氏が11日付で入籍したため。


23:33:44 | cpainvestor | | TrackBacks

February 14, 2007

障害者の経済学



   ある、尊敬する先輩からのススメで、中島隆信著「障害者の経済学」(下図)を読みました。正直言って、この分野の私の知識は、ほとんど皆無に近い状態でしたので、障害者福祉の制度がどのようになっているのか、またそれが抱える問題点はどのようなものなのか、一般人にも非常に分かりやすく解説されている本で、好感を持ちました。
   「経済学」とつけるほど、経済学的な視点から書かれているわけではありませんが、非常にセンシティブな内容を、できるかぎり冷めた目線で客観的に捉えようという著者の試みは、これまでこの問題にあまり関心の無かった多くの読者が、この問題に興味を持つきっかけを提供してくれているように思います。この問題にほとんど関心のなかった私のような方にこそ読んで欲しい1冊だと思いました。

   著者自身も、重度の脳性マヒの息子さんがいらっしゃるそうで、この問題を研究対象にとりあげるには、多くの迷いがあったそうです。そうした中、実際に息子さんの進路を決めるために、多くの障害者施設を見学する過程において感じた疑問をきっかけに、ある意味、当事者意識から「吹っ切れて」この問題をできる限り客観的に研究してみようと思うようになったとのことです。

   著者も指摘していることですが、この著書を読み進めているうちに、実際にとりあげられている障害者をめぐる様々な問題点が、実は社会全体の問題点と多くの共通項を持っていることに気づかされます。障害があるために親から自立できない子供とその親の関係を分析してみると、実は、様々な親子関係にまつわる社会問題と根っこの部分が似ていたりするようです。

   取り扱っている内容がセンシティブな内容ですし、一般読者向けにこのような形で表現して良いものか、当然、賛否両論あるのだと思います。ただこの書籍を著した著者と、「会社四季報」だけではない東洋経済新報社の功績は評価できると思いました。

   なかなか自分ではこのような著作を自主的に購入することはなかったと思います。薦めて頂いた先輩に感謝です。

    



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February 13, 2007

インデックス投資と個別株投資


(2)インデックス投資を勧めておいて、個別株投資をしているのはなぜか


   前回、盛んにインデックス投資を勧めておきながら、自分が個別株投資を中心に行っているのは、以下のような理由からです。

○ 企業分析のスキルを磨き、ミクロのビジネスを見る視点をより高めたい。

   公認会計士の職務と財務をベースにした企業分析のスキルのブラッシュアップは切っても切り離せない関係です。とはいえ、この職業の人間には、制度へのキャッチアップ(様々な会計基準や税法、会社法の改正に専門家としていち早くキャッチアップし、クライアントに説明できるようにすること)が、自分の価値の源泉、差別化ポイントだと思い、日夜様々な法制度のお勉強に熱心な学者タイプの方も多くいらっしゃいます。ご存知の方もいるとは思いますが、正直、私にはこういう生き方は無理です(笑)。自分の専門分野に関するキャッチアップは必要であるにしても、金融商品会計の細かい処理は、詳しい同僚に、税務の細かいところは税理士に、法律面のわからないところは弁護士に、電話して聞きます。その方が自分で調べるより圧倒的に早くて正確なので、「タダでちょっと質問できる各分野の専門家が何人いるか」の方が、「自分の知識をいかに増やすか」よりも重要だと思い、わりきっています。そのための投資と自分が彼らにGiveできるコンテンツのブラッシュアップは欠かさないつもりです。
   そうした中で、「自分の専門分野に関することで陳腐化しない知識はどんなものか」と考えた場合に、やはり残るのは、今のところ、会計監査や財務デューデリジェンスの経験で培った「様々な業種の財務に関する実践的知識・経験」とIPO関連業務の実務経験で培った「ビジネスの儲けの仕組みを分析する視点」なのだと思います。
   個別株投資のための自分なりの企業分析は、こうしたおそらく陳腐化しないであろう知識や考え方を継続的にブラッシュアップするのに最適な機会を提供してくれています。その意味で、趣味と仕事面の実益を兼ねた個別株投資を行っています。

○ リスク(不確実性)をゼロにするのではなく、これと折り合いながらマネージする術を、時間をかけて磨きたい。
   仕事で、いろんな大企業の失敗した投資案件の減損処理資料などを見ていて、「どうしてこのような意思決定がなされたのか?しかも、どうしてここまで先送りにされてきたのだろうか?」と疑問に思うことが多々あります。当然、事後の結果論で評価してしまうのは卑怯だとは思うのですが、そうは言っても必ず思うのは、「この案件の最終判断をした経営陣は、何割か自分の手金をつっこむ必要があったとしても、同じ意思決定をしただろうか?」ということです。終身雇用に安住して、自分の資産運用についてでさえ、リスクをとってまともに運用したことのない大企業エリートに、果たして数十億円以上の投資判断が容易にできるようになるものなのであろうか?という疑問です。
   金額は少なくても、20代で投資を始め、10年以上なんとか相場で生き残って壮年期を迎えた人と、資産運用のことなんてまったく考えず、壮年期を迎えた人では、まちがいなくリスクに対する感度とその対処能力に差が出てくると思います。この「リスクに対する感度」と「リスクへの対処能力」を磨くには、インデックス投資より、個別企業への投資が相対的に見て、より有効であるように思っています。

○ この国の個別企業を自分の意志で応援したい。
   インデックス派の中には、「既に経済全体が成熟していて、今後の生産人口の減少と共に衰退していく国の株にそんなに多くの割合を投資していること自体が疑問」という方もいらっしゃいます。アセットアロケーションの発想からすれば、それはそれでもっともな意見だとも思いますが、国内市場全体のパイが縮小する中でも、知恵を絞って愚直に経営改善や海外進出を進め、勝ち抜いている企業は、各業界に存在します。まだまだ日本は世界第二の経済規模を誇る国ですし、こういうミクロの視点での経営努力は、賞賛に値するはずです。自分なりにきちんとソロバンをはじいた上で、調査対象企業にそれなりの割安感があれば、ぜひ株式を購入して応援したいと思っています。インデックス投資では、分散効果は最大限享受できますが、こういう「個別企業に対する個人の意志」を基本的に反映させることができません。せっかく自己資金で投資をする以上、できる限り、より効率的に、かつ有意義に資金を使ってもらえるような企業に投資をしたいと思っています。その意味で国内の個別企業投資(しかも将来性があって事業構造がわかりやすい小型株)に軸足を置いています。もちろん、国内マーケットの企業の方が海外よりも圧倒的に知識、情報量が多く入手できるということも加味しています。

○ インデックスを上回った時の快感は何物にも代え難い。
   自分で個別株投資を始めてみて、初めて、常にインデックスのパフォーマンスと比較される「投資のプロ」と言われるファンドマネージャーの気持ちが理解できます(笑)。私は、四半期ベースで自分の投資成績を評価することなど考えてもいませんが、それでも年間を通じてインデックス(私はTOPIXを意識しています)を上回った時の快感は、何物にも代えがたいものがあります。「株式投資は最高の知的ゲーム」と言われる所以です。
   インデックスを上回る投資成績をあげようと考えると、やはり市場のバイアスを利用する方が効果的です。その意味で、時価総額300億以下の、機関投資家が参入できず、アナリストもほとんどカバーしていない新興市場の個別株は魅力的です。当面の間、特定少数の新興市場株式を長期保有するスタンスを中心とする投資を続けていきたいと思っています。

   
   以上のようなことから、インサイダー規制に抵触しないよう細心の注意を払わなくてはならないという制約はあるにせよ、個別株投資戦略は私にとって捨てがたいものです。「効率的市場仮説」を信奉する方からするとナンセンスなのかもしれませんが、この方針で今後もやっていこうと思っています。




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