January 07, 2007

石原真理子さんとプットオプション

  
  山崎元さんが、プッツン女優こと石原真理子さんの過去の恋愛暴露本の出版を、デリバティブ取引である「プットオプション」の買い権限の行使の一種であると説明されていて、なるほど・・・と思わず唸ってしまいました。山崎さんは、本当にこの手の解説が上手です。山崎さんのブログエントリーを参考に、私なりに内容を整理して書いてみます。(山崎様、すみません、「日経ビジネスアソシエ」の記事は見ておりません。あの雑誌、昔読んでいたことがあるのですが、あまりに内容がそのときのトレンドに肩入れしすぎている上、日経受けする人気経営者に傾倒しすぎるなど、ミーハーすぎて読めなくなりました。)

  プットオプションとは、ある(金融)商品を将来の一定の期日までに、あらかじめ決められた特定の価格(権利行使価格)で売る権利を売買するオプション取引のことを言います。(詳しくはこちら

  例えば、半年後に権限行使日を迎えるA株式(現在1株あたりの株価10,000円)のプットオプション(権利行使価格8,000円で10株売る権利)を500円であなたが金融機関から購入したとします。半年後、A株式(これを原資産といいます)の株価が8,000円を下回り、5,000円に暴落していたとしたら、あなたは、このプットオプションの権利を行使する(原資産10株を市場で5,000円にて購入し、プットオプションを行使して8,000円で売る)ことで、30,000円を儲けることができます。計算式は、(8,000円−5,000円)×10株=30,000円。
  逆に、半年後株価が8,000円より高い、例えば10,000円だったら、あなたは、購入したプットオプションの権利行使を放棄することになります。つまり、あなたは、プットオプションを購入することで、オプション料の範囲に損失を限定しながら、将来の原資産の値下がりに伴う大きな利益を得る機会を得ることができます。
  金融機関は、最初にプットオプションを売ることで、オプション料をもらうわけですが、原資産株価が値下がり(最悪の時は0円)した時の、購入者のオプション行使に伴う最大損失リスクを全て負担しなくてはなりません。その意味で、プットの売りをする方が、私には、より難しい取引だと思います。(実際には、金融機関などは、自らもデリバティブ取引を行い、ある程度損失リスクをヘッジしているものと思われますが・・)

  このオプション料の価値は、理論的にはブラックショールズモデルという小難しい算式によって算定されるわけですが、文系人間的には、オプション価格は、「最初に決まる行使価格、オプション行使までの期間、原資産の現在価格、原資産の利回り、安全資産の利回り、原資産のボラティリティ(想定される変動幅の大きさ)」の6つの要素で決まると覚えておけば、これでもう十分でしょう。もっと簡単に言ってしまうと、要は、行使価格と現在の価格との乖離が小さく(簡単に行使価格に近づいてしまう可能性が高い)、原資産のこれまでの価格変動実績が大きく(不確実性が大きく)、行使までの期間が長ければ長いほど(こちらも不確実性が大きくなる)、オプション料は高くなるわけです。(リスクにみあったリターンを頂戴するという発想です。)


  さて、前置きが長くなりましたが、石原真理子さんのケースでこれをあてはめてみると、プットオプションは、「石原さんの過去の恋愛遍歴を全て明らかにする権利」ということになるでしょう。過去に石原さんと恋愛した男性は、まさか意識されていたとは思いませんが、「将来石原さんが自分との恋愛体験を全て明らかにする権利」を行使権限無期限のプットオプションとして、石原さんに売り渡していたことになります。対価としてのオプション料は、その時に共有できた「いい思い?」でしょうか。
  石原さんは、この無期限プットオプションを大事に保有し続けていたわけですが、このたび、原資産(ご本人のタレント的な市場価値)の価格が、行使価格(当初、この権利を行使することにより、本人が受けると想定された様々なデメリット?)を大きく下回ったことにより、めでたく行使され、利益を享受されたわけです(暴露本出版による印税収入と、知名度再向上)。しかも、同時に複数の取引相手に対して行使したので、かなり強烈です。石原さんにプットオプションを売った複数の売り手は、それなりに損失を負担しているようです。ご愁傷様です。

  実は、この事例、よくよく考えてみると、男女お互いに無期限のプットオプションを売りあって、オプション料の授受をお互いゼロにしている可能性があります。そうなると、行使するかどうかは、権利行使価格と原資産の差がどちらのほうが将来大きく開くかどうかが大きく影響するはずです。つまり、一方は活躍していて、一方は落ちぶれたりすると、このプットオプションは、落ちぶれた側が行使する可能性は高いといえます。倫理で守秘義務が守りきれればいいですが、人間、背に腹は変えられませんので、追い込まれると何をするかわかりません。

  ただ、これが、不倫などとなると、お互いイーブンの関係ではなく、どう考えても、未婚で社会的地位の相対的に低い方のほうが、その相手方から購入しているプットオプションの価値が高いように思われます。某代議士の事例ではありませんが、やはりボラティリティが高いと見込まれる案件には、手を出さない方が無難なようです。

  山崎さんは、ご本人には大変失礼な言い方かもしれませんが、この手のネタを経済学的に説明するのが、非常に上手な方だと思います。山崎さんの著書である「リスクとリターンで考えると人生はシンプルになる」は、この手のネタが豊富に掲載されており、非常に面白く読めて、オススメです。




Posted by cpainvestor at 23:48:00 | from category: c.投資雑感 | TrackBacks
Comments

パチンコを街のコミュニティしたい社長:

あけましておめでとうございます。
知らなかったです、このブログ。すごいですね、相変わらず。早速リンクを貼らせていただきます。
今年もよろしくお願いします。
今が長い事業の中でのもっとも大切な時期と認識して踏ん張ってます。
(January 10, 2007 11:03:34)

cpainvestor:

パチンコを街のコミュニティしたい社長様

このブログへのご訪問ありがとうございます。

 確かに今が事業の踏ん張りどころですね。がんばっている人にがんばってとは言いません。前を向いて今までどおり、ともに歩んでくれる方々にVisionを示し続けて下さい。

私でお役に立てることがあれば、いつでも声をかけてください。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

中国でのカルチャーショック、忘れておりません。とても感謝しています。
(January 11, 2007 01:12:12)
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