March 06, 2007

ハードスキルとソフトスキル



  何をもって「プロフェッショナル」と言うかは、人それぞれだと思いますが、私は、30代ぐらいであれば、「ハードスキル」が6、「ソフトスキル」が4、ぐらいの感覚で身につけているのがバランスが良いのではないかと思っています。

  私の中での「ハードスキル」とは、いわゆる専門分野に関する知識、経験です。専門分野はできれば複数あった方が良いとは思いますが、「ここだけは何を聞かれても、クライアントにベストなソリューションをタイムリーに提供できる」という分野を持つことは重要だと思っています。特に30代では、第一線で自分が現場に立つことが多いですから、この能力は極めて重要です。逆に社会に出て10年近く経っても「ハードスキル」に何も武器になるものがない場合、顧客への自分の売り込みはかなり苦しくなります。

  一方、「ソフトスキル」とは、論理的思考能力、対人コミュニケーション能力、交渉力、プレゼンテーション力、リーダーシップなど、いわゆる「ハードスキル」を支える諸々の能力です。こういった能力の一部は、先天的な特性が影響することも多く、なかなか本業に邁進しているだけでは磨きにくいスキルだとも思いますが、いったん身につければ、陳腐化することは基本的に無いようにも思います。年齢を重ねるに従って、「ソフトスキル」の重要性は高まってくるように思います。

  今日、ある仕事で、二人の若手の女性弁護士とお会いしました。この二人の顧客へのインタビューの仕方を見ていて、「法律の勉強をする前に、話し方教室にでも行った方が良いのではないか・・・」と思うのと同時に、こんな二人だけを差し向けた大法律事務所の顧客に対する姿勢に疑問を感じました。フィーに応じて人をアサインしているのでしょうが、会社の看板が傷つきかねない印象を受けました。

  このお二人の話し方には次のような特徴がありました。

? 頭の回転が速いのはわかるが、とにかく早口で、聞き取りずらい。
? 法律の専門用語を何の前置きもなく使うので、顧客が時々混乱している。
? 声のトーンが高く、早口とあいまって、聞き手は話し手が時々ヒステリックになっているような印象を受ける。
? 質問の内容が全く整理されておらず、気になった順番に五月雨式に聞いているため、回答する側がうんざりしている。
? 顧客がうんざりしている空気を察することもなく、まったく調子を変えずに、1時間以上質問している。

   私も、ヒトのことを批判できるほどこの分野のスキルに自信があるわけではなく、未だ「修行中」の身ではありますが、あれほどインタビューに同席して不快に思った経験は、久しぶりで、「顧客が怒り出すのではないか」と思い、冷や冷やしました。特に論理的思考能力は弁護士さんの専売特許のように思っていたので、?には参りました。

   
   彼女達の話にうんざりしながら、「この人達は、彼氏はいるのだろうか」、「合コンに行って気まずい思いをしたことはないのだろうか」、「叱ってくれる上司や先輩はいるのだろうか」とか、そんなことを考えてしまいました。余計なお世話ですね。きっと。

   まあ、「ヒトのフリ見て我がフリ直せ」だと思います。私自身、熱くなると早口で見境なく話してしまうところがありますので、気をつけたいと思っています。


Posted by cpainvestor at 23:40:24 | from category: g.その他ビジネスの話題 | TrackBacks
Comments

dqndoc1019:

初めまして。
いつも楽しく読んでおります。

某所で雇われ医者をやっております。
今回の内容は僕も常々感じていることで、身につまされる思いがしました。

>とにかく早口で、聞き取りずらい。
>専門用語を何の前置きもなく使うので、顧客が時々混乱している。
>声のトーンが高く、早口
>質問の内容が全く整理されておらず、気になった順番に五月雨式に聞いている
>顧客がうんざりしている空気を察することもなく

↑僕らの業界にも時々見かけるタイプです。
あまりにもピッタリ当てはまる後輩がいるので思わず吹き出してしまいました(笑)

こういう人たちにコミュニケーションの要諦を教えることはとても難しいのですが
 「話したいのを我慢して、相手の顔を見ながら話を聞いて相槌を打ってみろ」
と最初に指導することが多いですね。
他にも

 ・最初にice-breakingを行って相手との距離を縮めなさい
 ・こちらから聞きたいことがあっても、最初はなるべくclosed questionは使わず
  相手に答の選択枝を多く与えるようなopen questionで相手に話させなさい
 ・相手が話している時には相槌をきちんと打って、相手の話を受け入れている事を
  態度で示しなさい
 ・口調や仕草を相手のペースに合わせなさい
 ・相手の知識のレベルに応じて使うタームを変えなさい
 ・相手が理解できているかどうかを、相手の顔を見て時々確認しなさい

などと色々指導してはみるものの、相手の話を聞くことができない輩には
何を指導しても徒労に終わってしまうことが多く、頭を悩ませている次第です。
>私自身、熱くなると早口で見境なく話してしまうところがありますので
>気をつけたいと思っています。

それは僕も自戒したい点です。
興に乗って、話している自分に酔ってしまうと、聞き手の反応を無視して
早口で話している自分にハッと気付いて反省することは多いです。

調子が良い時こそ、自分を客観的に見つめられる眼を持ちたいものです。
(March 07, 2007 16:40:12)

cpainvestor:

dqndoc1019様

 お医者様の立場からのコメント、ありがとうございます。確かに専門職で「先生」と呼ばれる職業の中には、こういう方が多いような気もしますし、もしかしたら、統計的には多くないのかもしれませんが、目立ってしまいます。

 最近、「最後はソフトスキル、人間力」ということを日々痛感します。私自身も自戒をこめて書きました。

 またのコメントを楽しみにしております。
(March 07, 2007 23:31:25)

rupin:

初めまして。
いつも興味深く拝見させていただいております。

今回の内容についてはいろいろと思うことがあり、コメントさせていただきます。

私も以前監査法人に勤務していたのですが、大手法律事務所と同じことが監査法人にもいえるのではないかと思いながら読んでいました。OJTの名目で研修もそこそこに新米会計士補を現場に送り出したり、わからないことは会社へ聞けと言って前任者からの引継ぎをほとんど行わなかったりということが当たり前のように行われていた気がします。

事業会社に転職してから、監査を受ける身になって気づいた事も多いのですが、監査部屋にノックをして入っても誰も顔をあげなかった時は、本当に社会人のマナーとして問題があるなと思いました。

自分は、監査法人から出て行った身なのでとやかくいう権利はないのですが、cpainvestorさんのような方に、監査法人の組織を変えていっていただければ、もっと組織としていい方向に向かうのではと思いました。
(March 14, 2007 12:01:54)

cpainvestor:

rupin様

 OBの視点からの貴重なコメントをありがとうございます。「人のフリ見て我がフリ直せ」は、私達の業界も一緒ですね。おっしゃるとおりです。

 なんだかずば抜けて賢い人より、苦労して合格した人の方が、コミュニケーション能力をはじめとするソフトスキルは長けている人の割合が多いと感じるのは、私の気のせいでしょうか。

 確かにロクに挨拶もしない若手が増えているような気もします。
 
(March 15, 2007 00:51:47)
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