October 06, 2006

子を持つ親として考えさせられた衝撃の告発書



  どこかの雑誌の書評欄を読んで興味を覚え、「食品の裏側-みんな大好きな食品添加物」を読了しました。世の中の食品のほとんどは既に添加物なしでは、提供できない状況となっていることが、添加物博士と言われた食品添加物販売会社の元トップセールスマンの手によって克明に描かれています。
消費者にいかにして低コストでみばえのよい手軽な加工食品を提供するか」、「生産者をいかにして重労働から解放するか」を突き詰めて考えていくと、多量の食品添加物を投下して食品を製造せざるをえない現状が見えてきます。漬物、練り物、ハム・ソーセージなどの製造工程の事例紹介を読む限り、あまりにむごい惨状に目を覆いたくなります。製造工場で働く従業員の多くが、そこから出荷される食品を購入しない現実に衝撃を受けました。

  私もこれまで、コンビニのおにぎりや様々な惣菜を、子供に手軽に与えてきましたが、これだけ書かれると、さずがに「どうしたものか・・・」と考えてしまいます。私は息子達の「味覚の破壊者」「健康の破壊者」であることは間違いなさそうです。

 著者は、「一人一人の消費者が、食品の裏面表示をよく見て理解することの重要性」を、その表示内容のウラも含めたわかりやすい解説と共に淡々と説明しています。「情報の価値は受け手の能力に依存する」は平九郎さんの名言ですが、投資の分野だけではなく、食品の分野に関してもまったくそのとおりであることがわかりました。食品添加物の世界から完全に逃れるのはどうみても不可能ですが、これからは少しでも子供の味覚と健康を破壊しないよう、妻と共々努力しようと思いました。

 「私は多くの職人の魂(伝統の技)をつぶしてしまった」という著者の告白は改めて重いと思いました。素材と季節感を生かした和食は世界に誇れる料理だと常々思っていましたが、その和食でさえ、既に過去のものとは大きく異なっていることがよくわかりました。日本人の味覚もグルタミン酸ナトリウムに相当破壊されているはずです。

この現状を少しでも改善するために、自分には何ができるのだろう」と自問自答しました。まずは調味料の買い替えと週末の手料理のより積極的な関与からはじめようと思います。

  この分野の専門家には既知の内容なのかもしれませんが、今まで「食品添加物」に関する知識はほとんど持ち合わせていないという方には、最適の書籍だと思います。特に子供を持つ親御さんには、必読の書ではないかと思い、今妻に読ませています。

  「無知の怖さ」を改めて実感させられました。


Posted by cpainvestor at 01:40:07 | from category: k.書評 | TrackBacks
Comments

KAPPA:

「食品の裏側−みんな大好きな食品添加物」は読んでいないので、論評は避けますが、一般論として、「○○は危ない」というタイトルの本は危なかしいです。まず、データの大部分は動物実験からの類推です。ふつう動物実験における投与量は人間の常用量に比べて桁が2桁か3桁違います。仮に投与量が同じぐらいとしても、人間とラットなどの動物では代謝系が異なることがあるので、動物実験で有害とされたデータを人間に当てはめることはヒューリスティックです。つまり人間におけるデータが重要であるのに、そのデータがまったく欠如していることが多いのです。
行動ファイナンス的に言うと、非常に低い確率の過大評価(本命―大穴バイアス)や事前確率の無視に気をつける必要があります。

つまり、「○○は危ない」いうことのほとんどは根拠薄弱であり、仮に有害としても実際に害を及ぼす確率はきわめて低く、過剰に反応する必要はない、食品添加物の安全性を心配する前にすべきことが山ほどある(禁煙、肥満の防止、食塩を過剰摂取しないなど、さらに言えばピロリ菌の除菌やHPVのワクチン投与など)ということです。

また、言うまでもないことですが、「食の安全」と「味」はまったく別の問題であり、私もコンビニで売られているおにぎりや惣菜を肯定するわけではありませんが。
(October 07, 2006 23:59:56)

たけ先生:

cpainvestorさん。
ご無沙汰しております。
kappa先生の素晴らしいコメントがあり、つけくわえるべきことはほとんどないのですが、一般向けの○○が危ない!はほとんどが誇張です。

お子様の教育の観点からいいますと、「ゲームやネットが脳に悪影響を及ぼす」という議論もありますが、あれも結論を先に決めて自分たちの都合のいいように引用したものです。

医学博士や精神科医が肩書きを利用して根拠のないことを声高に叫んでいる点は食品以上に悪質と思います。

ゲームやネットの欠点があるとしたら、単純に運動不足になるとかと友達と話す時間が少なくなるといった点だけだと思われます。偽専門的な意見には気をつけたいですね。
(October 08, 2006 17:41:18)

cpainvestor:

KAPPA様、たけ先生

 医学界の専門家であるお二方のご意見、ありがとうございます。おかげで、子供に食べさせるもので悩む時間が少し減りそうです。このような、リアルタイムのフィードバックがブログのありがたいところです。

KAPPAさんのおっしゃるように人間投与データの実証研究を見ないと、確かなことはいえませんね。確かに、肥満、喫煙の方がより病気との相関はありそうですし、解決の重要性は高いのでしょうね。

 この本は、いたずらに危機をあおるような「…は食べてはいけない。」という書き方でなかったので好感を持ち、書評を書きました。
 この本を読んだおかげで、夜中にコンビニ購入食品を食べることに、より罪悪感を持つようになったことが、私自身は、肥満防止のために良かったかなと思っています。

cpainvestor
(October 08, 2006 22:23:06)
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